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侵された樹海と琥珀色の希望  作者: 鹿方剛助
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第二章 甲虫達の語らい、新たなる希望

 甲虫達にとって天を衝くほどに大きな木。そこは青木ヶ原樹海周辺にて甲虫達があの時に現れた生き物・・・"外界生物"を討伐しに行くための拠点となる場所であった。・・・その名は"ファブラルス本部"。・・・そう、2013年に青木ヶ原樹海に外界生物達が現れて以降、日本を中心としてその外界生物の脅威は世界へと広まっていったのだ。・・・特に東京都のS区とT区は外界生物が頻繁に現れ。"外界生物達の科学博物館"などと虫達からは呼ばれている。

 そんな青木ヶ原樹海に存在するファブラルス本部の中の大きな広場。そこにヒルナード達5匹の甲虫達がいた。


「お帰り、ヒルナード達。・・・今回の任務はどうだったんだ?」

「みんな生きて戻ることができましたよ。任務自体もそんなには難しくありませんでした。小型の外界生物であるシケドゥスのほかに、タイランティスやムシ食い花と交戦しましたけど、苦戦するほどでは。」

「ムシ食い花か。まあその程度ならば何とかなるよな。・・・明治神宮支部の奴らなんかエレファンフットが現れたってのに動じることなく魔攻撃で戦って行っているんだ。・・・俺達の付近で現れでもしたら大変な騒ぎになるっていうのにさ。」


 いつもの事なのだろうか。木片に大盛りに盛り付けられた深緑色のぶよぶよした物体を舐めているフェモラリスツヤクワガタのフェマスがヒルナードと会話を交わす。・・・なお、フェマスが舐めているこの物体の正体は外界生物の中でもとりわけ弱く魔法の扱えない虫達でも傷がつくことなく倒せてしまうことで有名なスラグナー・・・その死体の一部である。外界生物が現れてからそう間もないころに現れたソレはクワガタムシやカブトムシ、さらにはカマキリにハチにと様々な虫達に倒され、その体に豊富な栄養を含んでいることが分かって以降樹液に次ぐ第二の食料としてもてはやされ始めたのだ。一番の人気は黄金色に光る個体。その味は花の蜜に近く、蝶やハチに人気を博しているのだという。

 そして交わされた会話の中で現れたシケドゥスというのはセミの幼虫に似た姿の外界生物。・・・こう書いてしまえばカマキリやハチなどでも倒せそうなイメージを持たれるが実際はそんな甘いものではない。その性格たるや実に凶暴で。四本の鋭い爪の餌食になり頭からボリボリと貪り食われた虫の数はもう三桁にも上るであろう。さらにはカマキリや蜂の攻撃は硬い体で効かず。魔攻撃を扱う甲虫達・・・魔操虫の攻撃でようやく倒すことができた、という外界生物だ。次にタイランティスはオオカマキリの三倍ほどの大きさを持つ茶色の体を持つカマキリのような姿の外界生物。この生物もまたその鋭い鎌を使っては虫達に危害を加え。攻撃する虫達に対してはその鎌で弾き返してきた、という生き物で・・・最後にムシ食い花は読んで字のごとく。昆虫たちを好んで食べる20センチほどの花の事。この生物にも虫達は果敢に立ち向かったがその素早い蔓に捕まってしまい。その大きな口で一飲みにされていった。次にエレファンフット。魔操虫の間でも噂になるほどにその強さは圧巻の一言。今までに何匹もの魔操虫が挑んでいったが、その大きな足の前につぶされていくのが関の山、という40センチほどの大きさを持つ生き物である。

 会話を交わすヒルナード達。そこへアゲハチョウが通りがかる。


「あ、魔操虫の方ですか?」

「そうですけど…何か頼み事で?」

「はい。近くの木の上に数匹私と同じ仲間と思われる幼虫がいたんです。・・・まださなぎになるには早い段階で、おそらく育ちざかりなのだと思います。どなたか外界生物と戦った時に出たモノで餌になりそうなものを持っている方は…。」


 幼虫の餌になるであろうはっぱを分けてほしいとでも言いたげなチョウ。だがしかしフェマスはその日はまだ任務を受けておらず。ヒルナード達の倒した外界生物たちの中にはそんな外界生物はいなかった。・・・虫食い花の葉はアゲハチョウの幼虫というよりかはモンシロチョウの幼虫やニジュウヤホシテントウの餌向きであり。今回の頼み事には残念ながら該当していない。


「すまないな、ヒルナードの行ってきた任務の対象物には該当する外界生物がいない。・・・俺でよかったらグループ長のオブルスに伝えておくぞ?」

「本当ですか!?ありがとうございます!」


 フェマスのその言葉に喜ぶアゲハチョウ。あとに残されたフェマスとヒルナードは。戦い終えた後の食事としてスラグナーの死体の一部をいただくこととした。ヒルナード達が頼んだのは赤茶色の個体。花の蜜と同じような味がするもののコクがあると甲虫達に人気の一品なのである。

 と、ここでスラグナーの死体の一部をなめとったスオペスからフェマスへと質問が飛んだ。


「そういえばフェマスさん、今度新しい甲虫が此処に入ってくるって聞いたんだけどどんな甲虫なのか見ていないの?」

「さあなあ・・・。複数入ってきてそのうち何匹かは新鋭らしいぞ。」

「何ぃ!?新入りだと!?俺そんなこと聞いてねえぞ!」


 スオペスの質問に答えるフェマス。直後チャンキーがどこか起こっているかのような様子でそう言葉を放つ。・・・それに返ってきたのはヒルナードの冷静な言葉であった。


「ヤンバルテナガコガネのミヤグニさんが話をしているとき、貴方自身の魔攻撃で燃えている外界生物のスケッチみてニヤついていましたよね?」

「ハイ、ソノトオリデシタ・・・・」

「はぁ・・・まったく。どのような甲虫達が入ってくるかはまだわからないのですけどね。エイキチ、新入りが入ってきますよ。」

「おっ!やったぜ!俺に後輩ができるんだ!」


 喜ぶかのような様子を見せるエイキチ。その広場から離れた場所、草の影になっているような場所で・・・ヤンバルテナガコガネが木のうろにたたずみ。一匹の甲虫に何やら不可思議な文字の刻まれた円形の紋章が刻まれゆくのを静かに見ていた。・・・そう、その甲虫こそが・・・新しく魔操虫になる甲虫なのである。

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