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侵された樹海と琥珀色の希望  作者: 鹿方剛助
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第14章~牙を向く罠 支払われた犠牲~

「ミヤグニ!大変なんや!」


 どこぞの大統領がホワイトハウスをぶち壊すかのような勢いでミヤグニのいる部屋に突進してきたのはプラティオドンネブトクワガタのアクラス。そのアクラスの言葉を聞きミヤグニは怪訝そうな様子を一瞬見せたのち・・・言葉を静かにはなった。


「どうした?・・・タエキチとタカオ、二つのグループが恐竜のような姿をした外界生物…ダイナジョーの群れに囲まれているという知らせなら既に届いているぞ。・・・まあ優勢に戦えて入るがな。」

「それだけじゃないんや!ブルーノの奴がとんでもないことを企んどる!・・・この外界生物騒ぎをケニアの動物たちのせいにするつもりや!」


 慌てた様子でアクラスが放った言葉。それにミヤグニは鳩が豆鉄砲を喰らったかのような様子を見せる。


「・・・。精鋭部隊と肩を並べるグループ・・・あのグループのメンバーが…?」

「せや!インターメディアツヤクワガタのインポル・・・氷属性を巧みに操り、氷属性を弱点とする外界生物はおろか氷属性を吸収し自身の生命力と変換してしまう外界生物まで手玉に取るアイツのいるグループのメンバーや!」

「にわかに信じられないな。・・・奴の言うとおりだと・・・私の聞いた人間の起こした災いが理由で外界生物が世界中の森を浸食し始めた、という説がでたらめだったということになるが…。」

「それ、ウチら昆虫たちの間で何度も議題に上がっているモノやろ?何ですでに説が…。」


 会話を交わすアクラスとミヤグニ。ミヤグニが説の出所を話し始めた直後・・・アクラスは頭部を激しく振り。本題を切り出す。


「と、とにかく!本題はいるで!ブルーノの奴が何か罠を仕掛けておるんや!今すぐ出撃命令を出すんや!」


 アクラスの要望。それに対して・・・ミヤグニは否の意志を示す。そして・・・少し時間を置き。その理由を述べた。


「出撃命令を出せ、という要望には応えられない。一つ。・・・出撃命令の要請はリーダーだけが出すことができる権利のはずだ。二つ。・・・今行ったところで・・・間に合うはずがない。すでに罠は発動しているはずだ。」

「っ・・・!」


 悔しがるかのような様子を見せるアクラス。それと同じころ・・・タカオ達はダイナジョー、そしてエンプリジョーの群れを相手取り戦いを続けていたが。その最中にカイザルティランが突如現れたことによりその戦場は混乱に陥っていた。

 突然の乱入者。タカオが大声を上げ、指示を出す。・・・しかしカイザルティラン、ダイナジョー、エンプリジョーの三種の外界生物に囲まれたタエキチは身動きができず。ただただ土属性の魔法を連発している・・・が。そのすべてをカイザルティランが吸収してしまっていた。


「!?」

「カイザルティランに・・・土属性の魔法が吸われて行った!?」


 カイザルティランが口を開け、タエキチと向かいあう。その口の中には、橙色に充血した目のようなもの。

 それを見て・・・少しひるんでいた。


「ここまでやばい、と思ったのは…あの時以来かもしれないな。・・・うまく逃がさなければ。」


 すでに殿を務める準備に入っているタエキチ。そんなタエキチの心中も知らずに、タカオが指示を出す。


「タエキチ!奴ら相手にお前では不利だ!逃げろ!タエキチ!」

「英雄がこんなところで逃げられるかよタカオ。逃げるのはタカオ達の方だ。私のグループのメンバーを引き連れ・・・ファブラルス本部に撤退しろ。」


 ファブラルス本部への撤退を命じるタエキチ。付近では・・・タカサゴミヤマクワガタが自身のやったことを直視して、錯乱状態に陥っている。

 冷静に今の状況を振り返るタカオ。そして出した結論は。


「っ・・・。此処にいる魔操虫達に告ぐ!カイザルティランに気を付け、外界生物を一掃せよ!」


 タエキチの意思に反する物。それに対しタエキチが反論をする。


「何をやっているんだタカオ!このままでは全滅するぞ!」

「お前の放った土属性は奴に吸収された。だが、他の属性ならば…!」


 驚くかのようなタエキチ。それを意に介さず、タカオはトモユキにアイコンタクトを送る。

 その意図をくむトモユキ。少しの間をもって、自身の持つ雷属性の魔法を…カイザルティランに向けて放つ。

 もちろんその雷属性の魔法はカイザルティランに見事命中した…が。思ったより効きが甘い。ひるむ様子は見せたもののすぐさま体勢を立て直されてしまう。


「き、効いていない…!?」

「いや違う!まったく効いていないわけじゃない!通りが悪いだけだ!奴の弱点は他にあるはず…!」


 タカオがいろいろと試そうとし始める。それを遮り。タエキチは・・・こう言い放った。


「・・・もういい、もういいんだタカオ。・・・お前と戦った幾多もの日々。・・・私にとってはとても良い経験になったぜ。」

「タエキチ、何を諦めたかのように言ってるんだよ…!」

「ナーギスピノとの戦い。お前の氷属性の魔法・・・あれはいいタイミングだったぜ。・・・他にも外界生物との戦いはあったが…どれもこれも、一緒にいてよかったと思っているぞ。」


 ショックを受けるタカオ。直後タエキチは。自身がもつ最大級の魔法を放った。


「タカオ、来世であおうぜ。・・・"ランディチュード"!!!」


 タエキチが放った土属性の魔法。それをカイザルティランは大口を開けて吸い込むと間髪入れずして大きな土の球をタエキチに返してきた。

 土の球の直撃を受けるタエキチ。それと同時に・・・タエキチの体のいろんな場所から角が生え始め。タエキチの体を包み込んでいく。ショックを受けたタカオ、そして錯乱するイルゾン。その二匹を連れ。ノブナリたちはその場を後にしていった。

 キャンプ場だったと思われる場所で上がる大きな咆哮。それを尻目に・・・魔操虫達はファブラルス本部へと戻っていくのであった。

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