第12章~偽りの合同任務 陰で蠢く計画~
ここからこの小説は、展開が急に変わっていきます。
タカオの傷が治ったことによりトモユキ・タカオと同じグループに再び合流することになったノブナリとブラゼル。合流を果たした直後、タカオはリハビリと称してねばねばしたゲル状の触手で虫を捕らえ食べてしまうという虫食い倒れ餅という外界生物の群れの討伐任務を受注した。
「タカオ、大丈夫なのか?怪我から復帰してそんなに経ってないんだろ?」
「ああ。心配はするな。・・・それとノブナリ。今回の敵だが・・・お前が大活躍するかもしれないぞ。相手は風属性に極めて弱いと聞いているからな。」
「まじかよ!?ありがとうなタカオ!」
タカオの言葉に喜ぶノブナリ。任務の結果としては、タカオのいう通りノブナリの大活躍であった。
タカオの言葉の通りに虫食い倒れ餅という全身ゲル状でできたその外界生物はネバネバしたその触手を伸ばしノブナリ達をとらえて食べようとしてきたのだが。ノブナリの唱えた風属性の魔法がその触手を悉く切り裂いていき。それを妨げていく。
可愛げのあるような鳴き声を上げどこか怒っているかのような様子を見せる虫食い倒れ餅その外界生物は触手を再生させると。再びノブナリたちに向かってその触手を伸ばしていく。
トモユキが、ブラゼルが、タカオが自身の持つ属性の魔法を使い攻撃を仕掛けるが。相手をひるませるだけで大したダメージに放っていないかのように見える。しかしてノブナリの放つ風属性に対しては虫食い倒れ餅は無力であり。その風の刃に体を、そして触手をただただ切り裂かれていくほかなかった。
ノブナリただ一匹が大活躍をしているかのような状況下。今まで活躍できなかった憂さを晴らすかのように大暴れしたノブナリは任務の帰りに憑き物の落ちたようなものすごいすっきりした表情を浮かべ、広場へと辿り着いた。
「今回はノブナリ、大活躍だったね。」
「おうよ!今の今まで俺の持つ属性を弱点とする奴なんて全然いなかったからな!ただ、トモユキやタカオ、ブラゼルの魔法がアイツをひるませる程度の効果しかなかったってのが意外だったぜ。」
「外界生物ってのは様々な奴がいるものだからな。・・・だが魔操虫が力を合わせれば。どんな敵でも倒せないことはない。」
「おうよ!」
会話を交わすノブナリたち。そんな魔操虫達の元へ。白い鞘羽を持つ一匹の魔操虫がやってきた。・・・そのものの名は、ヘルクレスリッキーブルーのブルーノ。
「タカオ、こんな所に居たか。」
「ブルーノ。俺達に話しかけて…何の用だ?」
「連れないな。いやな?オオクワガタのタエキチがリーダーを務めているグループと協力して、ある一種の外界生物を討伐してほしいんだ。・・・此処からそう離れていない森の中にその外界生物はいる。」
ヘルクレスリッキーブルーのその言葉に、タカオ達の間に緊張が走る。そののち。タカオがブルーノに言葉を放った。
「その外界生物って、ダイナジョーという奴の事じゃないか?」
ダイナジョー。その名を聞くや否や頭部を縦に振るブルーノ。
「ああ。二本足で立ち、恐竜のような出で立ちの群青色の大型外界生物。・・・ダイナジョーだ。近くには額に人間の顔が付いた外界生物、エンプリジョーの姿も報告されている。・・・どうだ?行くか?」
「・・・分かった。そういう事ならば、行かせてもらおう。」
「決まりだな。場所などはオオクワガタのタエキチの奴に教えてあるはずだ。そこに向かってくれ。」
ブルーノと別れたタカオたち。少しして、すっきりとしない空の下。人間たちがキャンプ場として使っている森の一角に。タカオたちの姿があった。
「大まかな場所などはあのブルーノの奴に教えてもらっていたはずなんだが・・・。おっと、あいつらか。」
森の地面の上を歩くタカオたち。その先にいたのは。オオクワガタのタエキチであった。
安堵の表情を浮かべるタカオ。しかしタエキチの様子はどこか驚いているかのような様子であった。
「タカオ!?お前・・・なんでここにいるんだ!?」
「なんでって、ブルーノの奴に合同の任務だって教えてもらったんだよ。・・・聞いていないのか?」
「そんなの、初耳だぞ!?」
互いに驚きあうタカオとタエキチ。そんな二匹をどうにかおさめようと、トモユキが言葉を放つ。
「こうして騒いでいても始まらないよ。・・・とにかく今は任務を。・・・今回の相手の弱点などはわかっているの?」
「お前は確かタカオのところのトモユキか。・・・ああ。炎、そして・・・風、土が弱点だと聞いている。」
「そこまで分かっているなら話は早いね。そっちのメンバーの属性などは?」
「おっと、俺は土属性。ハチジョウヒラタのユメミチが光、ゴトウヒラタのユウタが雷。そして・・・後一匹。タカサゴミヤマクワガタのイルゾンが闇属性だ。」
コクワガタのトモユキがオオクワガタのタエキチの話を聞いて作戦などを経てる。それと時を同じくしてファブラルス本部では。
「ブルーノ、ヘルクレスオオカブトのヴィルタからすべて聞いたで。・・・タエキチとタカオに同じ任務を伝えて、合同任務だって言ったんやってな。・・・何を考えとるんや?」
「アクラスか。俺はただ目の上のたん瘤を潰そうとしているだけよ。それさえ終われば…俺の計画の詳細を知る者はいなくなる。」
「・・・計画やと?」
同じ精鋭部隊に所属するアクラスとブルーノ。二匹の間に、何やら不穏な空気が漂い始めていた。