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侵された樹海と琥珀色の希望  作者: 鹿方剛助
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第10章~復讐のブラゼル~

 見た感じからして六体から七体くらいだろう。そうタカを括っていたノブナリは突如として現れた多数の外界生物の群れに度肝を抜いていた。

(な、なんだよありゃ…!まるで俺達の事を待ち伏せていたかのように…!)

 少しの間驚いたかのような様子を見せたのちノブナリは一度気持ちを落ち着かせ。自身の属性である風属性の魔法を唱え始めた。


「"ポロル"!」


 ノブナリの周りに現れる複数の風の刃。それはしばらくの間周りを漂った後、外界生物の群れへ向かって飛んでいく。

 刃の命中した外界生物たちがひるんでいき。そのうちの数体が刃で体を切られ命を落としていく。

 ただ一匹、奮闘するノブナリ。その後ろではオオクワガタのタエキチがただただノブナリの戦いを黙ってみている。・・・そう、微動だにせず。ただただ黙ってみているのだ。

 10体、20体。次々と外界生物を倒していく中で、ノブナリが抗議するかのように後ろを見る。


「タエキチ、お前は戦わねえのか?」

「この程度富士の樹海に棲む魔操虫なら一匹だけでも行けるはずだ。やってみろノブナリ。俺は一切助けないからな。」


 どこぞの漫画に出てくるお高く止まった医者のような言葉を放つタエキチ。

(なんっつー無責任なやつだ…!たった一匹だけで外界生物を相手しろっていうのかよ…!確かに見た感じ何処か弱そうなやつではあるけど、こんな数俺一匹で何事もなく倒せるわけねーだろ…!)

 200体・・・いや、それ以上はいようかという外界生物の群れ。その群れを見てノブナリはひるんだが。すぐさま気を持ち直し魔法を連発し始めた。

 風の刃によって外界生物たちが吹っ飛ばされ、何割かが刃によってその体を引き裂かれ絶命していく。終わりが見えなくなるかと思われたが。その終わりは少しずつ見えて。やがてすべての外界生物を倒しきることができた。

 しかしその時にはノブナリも疲れの様子をはっきりと見せており。少しの間休ませないといけないことが見て取れる。


「よく頑張ったな、ノブナリ。」


 疲れた様子のノブナリを、タエキチが近づいて労わる。その甲虫に。ノブナリがこういった。


「東京のS区やT区の支部にいる奴らなら外界生物との戦いの達人だからできるかもしれねえけどよ。あそこ以外の奴らにそれを期待するってのは苦なんじゃ無いのか?」

「何回も戦い続けていればいつかはやれる。・・・私は新鋭であるお前に期待をしているんだ。」


 自身の言葉に帰ってきたタエキチの言葉。それに一つ息を吐いたのち。ノブナリはタエキチと共にファブラルス本部へと戻る。

 そのファブラルス本部にたどり着いたその時ヒルトゥスヘラヅノカブトのヒルナードがどこか慌てた様子でノブナリたちの方へとやってきた。


「ノブナリさん大変です!」

「ど、どうしたんだよ、ヒルナード。・・・落ち着いた方がいいと思うぜ。」

「落ち着いてなんかいられないですよ!ベルウスさんがリーダーを務めているグループが、猫に似た着ぐるみの上に猫のような生き物が乗っかった外界生物・・・青いキトスチュームと遭遇したんです。」

「・・・グループのメンバーは皆無事か?」

「はい。大事な紋章周辺含めどこも外傷などはなく、無事に逃げ切ることができたそうです。・・・任務は失敗しましたが…。」


 サタンオオカブトのベルウスがリーダーを務めているグループのメンバー全員が無事だということを聞き安堵の様子を見せるノブナリ。少しして、ヒルナードはこう言葉を放つ。


「無事なことには無事なのですが…ブラゼルさんの様子がどこかおかしいんです。・・・なんか、あの青いキトスチュームと因縁があるような様子でして…。」

「それはさっき俺も感じていたんだ。精鋭部隊との偵察中に遭遇した、との白瀬があったときからな。アイツ、青いキトスチュームに仲間でも殺されたのか・・・?」


 ブラゼルの様子について、思い当たる節を述べるノブナリ。その日の夜。ノブナリはブラゼルの元を訪れる。


「ブラゼル、俺だ。ノブナリだ。」

「いいですよ、入って来てください。」


 部屋の中へと入っていくノブナリ。二匹で入るには窮屈な部屋の中で、ノブナリは話を切り出す。


「ブラゼル、今回こうしてやってきたのは・・・お前に話があるからなんだ。・・・青いキトスチュームという外界生物に・・・何か因縁でもあるのか?」


 ノブナリのその言葉。それに少し驚いたかのような様子を見せたのち。ブラゼルは少し黙った後・・・静かに答えを返す。


「実をいうと、僕の居た本栖湖支部、新入りの魔操虫の訓練中に・・・外界生物の襲撃に遭ったことがあったんです。それが、あの青いキトスチューム・・・キトスチューム・ブーラなんです。」

「・・・!」


 大方予想は付いていたものの、ブラゼルの過去にノブナリはどこか驚くような様子を見せる。


「その様子から察するに…反撃しても無駄、だったんだろ?」

「はい。その通りです。気さくに話しかけてくれた新入りの魔操虫達も全員、キトスチューム・ブーラの攻撃によって殺されて…それ以来、僕はキトスチューム・ブーラを倒すことを目標にしてきました。」


 ブラゼルがそういい終えたのち。ノブナリはこう静かに言い放つ。


「だからあの時、キトスチューム・ブーラという言葉に反応していたのか。・・・すまないな、つらい過去を話させてしまったようで。」

「いえ、いいんです。」


 会話を終え、ノブナリがブラゼルのいた部屋を後にする。その翌日。ブラゼルとノブナリの二匹は再び別々のグループで任務へと向かって行ったのであった。

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