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侵された樹海と琥珀色の希望  作者: 鹿方剛助
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第9章~ブラゼルの過去、英雄との共同任務~

 前日の戦いにてタカオがダメージを負ってしまったがために、ノブナリ達3匹の魔操虫達は広場で集まって会話を交わしていた。

 とはいっても会話の内容はたわいもない世間話。たいていの情報は魔操虫の護衛付きでやってきたトンボによってもたらされた情報で。他の支部の重要な情報が書かれている木の板によってはじめてその支部の虫たち全員に知れ渡るような物だ。

 その最中、コクワガタのトモユキがある外界生物の名を口にする。


「キトスチューム・ブーラって名前の外界生物が精鋭部隊の偵察中に発見されたんだって。」


 キトスチューム・ブーラ。その外界生物の名を聞いて、ブラゼルがピクリと頭角を動かし。コクワガタに言葉を放った。


「・・・キトスチューム・ブーラが発見された?・・・どこで発見されたんですか?教えてください。」


 食い気味に迫るブラゼル。その甲虫の様子に、コクワガタが引き気味になる。


「ちょ、ちょっと!近すぎだってば!」

「す、すみません。・・・キトスチューム・ブーラという外界生物と僕、深い因縁がありまして…。す、すみません。・・・一度落ち着いた方がいいかもしれませんね。」


 コクワガタの様子を見て謝罪をするブラゼル。ノブナリはこの時、よほどの因縁があるのだろう。程度にしか気にしていなかった。・・・そんな折。アシナガバチのミハルがやって来て。こう言ってきた。


「カブトムシのノブナリ、コブタテヅノカブトのブラゼル。・・・今呼ばれた二匹は一時的に今いるグループから外れてちょうだい。」


 突然の事に驚くブラゼルとノブナリ。少しして、ノブナリが抗議の声を上げる。


「それってどういうことだよ!早くもお役御免ってことか!?」


 クビという最悪なシナリオを頭に思い浮かべるノブナリ。・・・同じことを思っていたのだろう、ブラゼルもやや暗い雰囲気を醸し出していた。しかしノブナリたちのその予測を、アシナガバチのミハルはあっさりと否定する。


「そんなわけないでしょう?・・・一時的な異動よ。」

「異動だと?」

「そう。ノブナリ、貴方はオオクワガタのタエキチと一緒に任務に向かうのよ。・・・タエキチの属性は土属性。上手く力を合わせて任務をこなしていきなさい。・・・ブラゼルはサタンオオカブトのベルウスが隊長を務めているグループの方でともに任務に向かうの。ベルウスの属性は闇属性よ。」


 移動先のグループにいる甲虫の名をあげるミハル。それにブラゼルの様子がやや明るくなる。


「よかった、やめさせられるわけではないんですね。・・・ところでそのグループのメンバーと属性は…?」

「虫達の希望になっている魔操虫を切って捨てるわけないじゃない。・・・グループのメンバーと属性なのだけど、他は氷属性を持つティティウスシロカブトのルティス、雷属性を持つアヌビスゾウカブトのビアリスがいるわ。力を合わせて、任務をこなして行って頂戴ね。」

「分かりました。必ず生きて帰ってきます。」

「そういわれると頼もしいわね。期待しているわよ。」


 ミハルがそう言って去ったのち。ノブナリとブラゼルはそれぞれの任務に向けて準備を始め・・・任務へと向かった。

 樹海のはずれ、草の生い茂る野原に到着するノブナリ…とガタイのいい体格をした黒い体色のクワガタムシ…オオクワガタのタエキチ。

 タエキチは勾配のなだらかなこの野原を見据えたのち・・・ノブナリに言葉をかける。


「合同の討伐任務に向かって早々手柄立てたそうじゃないか。こりゃこの先の行く末に期待が持てるな!」


 頭部を揺らしてはっはっは、と豪快に笑うタエキチ。そのオオクワガタの言葉に、ノブナリはこう返した。


「ありがとう、タエキチ。今回の任務も・・・足を引っ張らないように頑張るぜ。」

「足を引っ張るだとぉ?そんなことは気にするんじゃないぞ。私の言う通りに戦えばいい。・・・とはいってももうすでに分かっているとは思うけどな。」

「タエキチのやり方ってどんな感じなんだ?」

「うん?私のやり方か?そうだな・・・とにかく生き残れ。生き残った先に楽しみはある。逃げてでもいい、どんな手を使ってでもいい。・・・生きて生きて、生きていけ。・・・これさえ守っていれば万事どうにかなる。」


 あまりにも大雑把なタエキチの言葉。それに一抹の不安を覚えたものの。すぐにノブナリは気持ちを切り替えた。


「と、とにかく、そろそろ任務始めないか?」

「おっと、そうだな。それでは、始めるぞ。自分が生き抜くことだけを考えろ。仲間の事は二の次だ。良いな!」


 タエキチの言葉に頭部を揺らし肯定の意思を示すノブナリ。・・・野原には餌もないはずなのにまるで誰かが呼び寄せたかの如く本来脚のあるべきところに人間の手足が生えているカブトムシのような生き物たちが九に現れ始めた。


「よし、まずは簡単な奴からだな。あの外界生物…ヒュミートルっていうんだが、あいつらをお前の持っている魔法で片づけてみろ。」


 オオクワガタの命令を聞き、頭部を揺らすノブナリ。・・・一方、ブラゼルは。


「っ、なんでこいつが…こんなところに…!」


 額のところに昔の硬貨をくっつけた猫のような生き物が方に乗っかっている、デフォルメされた青い猫の着ぐるみを着たような姿の外界生物・・・キトスチューム・ブーラ・・・任務中に乱入してきたその外界生物と遭遇していた。

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