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フロンティア

作者: 大淀かをり

 空港も変わったなあ。


 プライベートラウンジから滑走路を見下ろす男は、珍しく感傷に浸っていた。


 子供の頃は、まだ大量に人間を輸送するための中型、大型の旅客機が多く留まっていたものだ。しかし、今や小型のチャーター機やプライベートジェットがボーディングブリッジを占拠している。


 シャンパンを揺らすこの男は、これから四時間もかけてグリーンランドまで超音速飛行をするのだ。


「しかし、なんだか寂しいな。最後の晩餐が、ラウンジのカレーとは。」


 男は呟いた。


「おいしいではありませんか。ここのカレーは、昔から有名ですよ。」


 隣に座る女が、にこにこしながら男の感想に持論を展開する。


「それに、最後の晩餐とはいっても、悪いものではありませんよ。なにせ、あの世への往復切符ですから。」


 確かにな、と男も同意する。


 地球上でもっとも辺境ともいえる僻地のひとつ、グリーンランドなぞにわざわざ足を運ぶのには、それなりの目的があった。


 あの世に行くのだ。


 正確に言えば臨死体験をしに行くのだ。


 女は、男が長年懇意にしている「エニィウェア・ツーリズム」社の社員で、男が旅行に行く際はいつも案内を頼んでいる。今回も、この女に勧められてあの世見物を決めたのだ。




 陶芸職人の父のもとに生まれた男は、朝晩に一本ずつバスが来る以外は誰も訪れないような、山奥にポツンと建つ一軒家で育った。空の青と山の緑に挟まれて育った彼にとって、外の世界は未知の世界だった。「自分は、父の後を継いでこの窯を守っていくのだろうなあ」と幼い心にぼんやりと思っていた彼には、テレビに映る都会や外国の風景は憧れというより一生縁のない別世界のように感じていた。


 しかし、男は成長するにしたがって自然と山を離れるようになっていた。村まで行かなければ小学校はなかったし、街まで行かなければ中学校もなかった。隣の市まで行かなければ、高校もなかった。


 大学に進学するか、父親を継ぐか。進路は簡単に決まった。父親はいつも商品を買いたたきに来る商社の人間といつもケンカしていた。時代の波には逆らえないのだ。


 テレビは毎月同じセリフを繰り返していた。


「今月も失業率が過去最高を更新しました。」


 そんなヘッドラインの後、新橋のサラリーマンがニヒルな笑顔を浮かべながらインタビューに答える姿が映っていた。


「お昼休みから戻ってきたら、来月から給与は半分だと言われました。ヤバいっすね。」


「実は一昨日クビになったのですが、妻や子供には言い出せず、一日中SLを眺めています。」


 仕事を奪われているのは、新橋のサラリーマンだけではなかった。下町の町工場に行ってみようものなら、


「もう職人が作らなくても、3Dプリンタで十分になった。」


「ついに地銀も信金もお金を貸してくれなくなった。」


「不渡りを出してしまった。」


 という、もっと悲痛な叫びが聞こえてくる。しまいには、


「十年間この番組でアナウンサーを務めてきた私は、本日をもって卒業します。明日からはAIアナウンサーのアンナちゃんがニュースをお届けします。」


 と放送されるのだ。いい大学を出て深い専門知識と経験を生かす経理や会計などの職についても、またはいくら修業を積んで凄腕の職人になっても、作業員や技術職である以上、いずれはAIや機械に取って代わられるのは明白だった。


 だから、単に「作業」を行う労働者ではなく「決断」をするエリートにならなければ、と男は強く思った。そうすれば、AIや機械にとって代わられることはない。決断を行うのは、いつだって人間だ。「AIや機械を使うより生身の人間を使ったほうが安く手軽に雇えるから」という理由で一生こき使われる人生なんて、ごめんだった。


 そのために、男は幼いころから努力を怠らなかった。同じ学校の連中が早くから人生を諦め、モラトリアムを謳歌する中、ひとり勉学に励んだ。その甲斐あって都会の国立大学に入り、海外に留学し、世界でも有数の企業に入社し、エリートの仲間入りを果たした。結果、一生縁がないと思っていた世界各地に旅行に行けるようになった。


 働き始めてから数年が経つ頃には、世間でもエリートと非エリートの階層の分断がはっきりとした。エリートの労働は決断のみになり、余暇時間が増えた。増えた余暇時間を使って、五十年前には一生かかっても行きつくせないくらいの旅行をするようになった。一方非エリートは寝ている時間以外はずっと働いてようやく衣食住を満たせる程度の賃金を得るようになっていた。


 社会の変動を受けて、航空会社は庶民向けの中・大型旅客機を退役させた。代わりに高価な超音速旅客機を復活させ、少数のエリート向けチャーター便として運航するようになった。男のようなエリートにとっては、高い運賃を払ってでも移動時間を短縮し、浮いた時間で仕事をしたほうがコスパがよいのだ。長い間利益率が低いとみなされてきた航空業界も、高単価な顧客にターゲットを絞ることによって利益率の上昇に成功した。WIN-WINの関係だった。




「どこへ旅行に行っても同じだな……。」


 たいていの観光地を訪れたころ、高級ホテルのスイートルームで男は一人で呟いた。


ロンドンでも、パリでも、上海でも東京でも、やることはだいたい同じだった。昼間は美術館に行き、ランチはその土地の名物を軽く食べる。夜は高級ワインと共においしいステーキかロブスターを食べてふかふかなベッドで眠る。違いと言えば、せいぜいターナーがロダンになったり、ステーキがカニになったり、ロブスターがイセエビになったりする程度だ。


 以前フランス・ストラスブールの街並みを気に入ったとき、中世の街並みをもっと見ようとヨーロッパ中を回ったことがあった。ドイツ・ハイデルベルク、イングランド・ヨーク、スコットランド・エジンバラ、チェコ・プラハなど……。確かに街ごとに建材が違ったりデザインや雰囲気が違ったりはした。けれど、結局のところ、昼は散歩して街並みを見て、夜はおいしいステーキかオイスターを食べるという体験には変わりなかった。実際、ヨークに行く頃には、すでにもう飽きていた。


 それでも男はもっと新しい世界を見たかった。幼いころテレビで見たような高層ビルや古代遺跡を見たり、高級な食べ物を食べたりすることが、自分の成長・ステップアップを確認することと同義となっていた。そうしなければ、生きている意味がなかった。


 ドバイやチベットやアマゾンやスイスのような、「なんとなく聞いたことがあるな」程度の場所も訪れてみた。やはりはじめは楽しかったけれど、徐々につまらなくなった。スイスもアラスカも南極もカナダも似たようなものだ。近くに小さな集落があって、眼下には氷の浮かんだ海か湖があり、遠くには雪の積もった青い山がある。ああきれいだなあ、と言って終わりだ。


 きっと、ほんの十数年前までは、それなりに裕福な人間でも旅行に行くのは簡単ではなかったのだろう。当時の亜音速機では一度の旅行にかかる時間も長かったし、休暇と仕事の境目がはっきりしていたから、一生かかっても飽きるほど旅行に行くなんてことはよほどの暇人でもない限り難しかったのだろう。


 しかし、今は違った。男は、行きつくしてしまった。


 もう人生に進歩が感じられず退屈していることを、取引先との会食でポロリとこぼしてしまったことがあった。会食で愚痴るなんて、とんだ失態だと男は反省したものだが、そのとき取引先の方に紹介されたのが「エニィウェア・ツーリズム」社だった。




「はじめまして。エニィウェア・ツーリズムです。どこか行きたいところはありますか?」


 画面上に、にこやかな営業スマイルが映し出される。


「いえ、特に行きたいところはないんです。ただ人に紹介されたので、使ってみようかなと思っただけで、私自身はあまり旅行に行きたいとは思っていないのです。」


「そうなんですね。旅行はお嫌いなのですか?」


「いえ、そういうわけではないのですが、もう世界中あらかた行きつくしてしまって、特に行きたいところがないんです。」


「なるほど。では、なにか好きなものはありますか?」


「ないですね。昔は旅行が好きでしたが、今はもう……。」


「そうですか……。旅行以外にも何かないですか? 絵が好きとか、建築が好きとか、風景が好きとか、食べ物が好きとか。」


「ないですね。絵なんて見ても特に何も思わないし、建物や風景も大体どこに行っても同じようにキレイなだけだし、食べ物もおいしいのが当たり前になってしまって、特に感動もないですね。」


 男はそこまで言って顔を上げると、女の口角が下がっていることに気が付いた。さすがに自分から問い合わせておいて、社会人としてひどい態度だったな、と思った男は、慌てて話を続けた。


「いやあ、すみません、つい愚痴をこぼしてしまいましたね。でも、それが本当の気持ちなのですよ。実は、御社を取引先の方に紹介されたので、むげに断るのも悪いと思ったのです。しかし、私のような人に勧める旅行などないですよね……。あまりお時間いただくのも申し訳ないですから、これで……。」


 と、男は通話を終わらせようとするが、女は遮って質問をしてきた。


「おひとつお聞きしたいのですが、ご旅行っておひとりで行かれるのでしょうか?」


 普通なら少し失礼に思われるような質問だったが、嫌な感じはしなかった。さっきの仏頂面は、考え事をしていたのだろう。その結論として出てきた質問だと男にはわかった。


「そうですね、たいていは一人で行きますね。というのも、まあ、私はもう大体どこに行っても楽しくないので、連れの気分を害しても悪いですし。」


「では、今回は私がご案内しますね。一週間の北海道旅行です。」


 どういうことか、と男が尋ねると、エニィウェア・ツーリズム社では、案内士付きのプライベートツアーも扱っているらしい。近年のエリートの増加に伴い、こういったプライベートツアーの需要が高まっており、それに応えるためらしい。確かに、旅行をするのに事前に調べて、計画を立てて、というのは大変面倒で気骨のいる作業だし、実際に行ってからもトラブルは起こりがちだ。だったら、その大変な作業は外注してしまったほうがいい。実際に利用したお客さんからも、旅行の楽しい部分だけを味わえると好評とのことだった。


 今更北海道なんて、と男は気が乗らなかったが、行ってみると案外楽しかった。単に観光地を巡るのではなく、開拓時代を生きたとある若者の日記をもとに、彼の人生を追体験するツアーになっていた。船で札幌に到着した後、過酷な環境で彼が敷設した鉄道に乗る。たどり着いた農地は、彼が屯田兵として暮らした土地だ。厳しいながらも家族と共に安定した生活を送った場所で、当時の食事を実際に食べたり、復元した宿を見学したりする。アイヌや他の屯田兵ともうまくやったことで彼は出世し男爵に叙勲され、今も残る豪邸に住むようになったのだが、ある夜忽然と姿を消した――というところで旅も終わりだ。


「いやあ、すごかった。まるで、テレビ番組に出たみたいだったよ。」


 と、旅から帰った男は興奮気味に周囲に自慢して回った。こういったストーリー仕立ての旅であれば、以前一度訪れた観光地でも再発見があるだけではなく、ジャングル、サバンナ、スラム……といった、万が一の危険について同意書を提出するような場所にも足を伸ばすようになっていった。場所が変われば、物語も変わる。危険のあるところには、ハラハラドキドキするような物語がある。




 しかし、それでも何度か旅行に行くと、やはり男は飽きてしまった。


「もう、この惑星には私が楽しめる旅行先は存在しないのではないか、と思いますね。」


 次のご旅行はいかがでしょうか? とビデオ通話をかけてきたエニィウェア・ツーリズム社の女に、男はそう愚痴った。


「すみません、私の提案に、よくないところがあったでしょうか?」


「いや、そういうわけではないのです。ただ、なんというか、旅の間ずっと興味を維持するのが難しくなってきましてね。多分態度にも出てしまっていたのではないかな。申し訳なかった。でも、本当はあなたも私の本音に気が付いていませんでした? 最近は親しみやすく興味を持ちやすい人の足跡を追うツアーと提案してくださっていたでしょう。ザビエルとかコロンブスとか坂本龍馬のような有名人が多かったでしょう?」


「……そうですね。それに、最近はご友人やご家族もお誘いいただいていましたし、楽しんでいただけているものと感じてしまっていました。」


「いや、彼らも私も楽しんではいるのさ。ただ、それが旅行である必要性があるのか、と思い始めてね。史跡を訪れ昔に思いを馳せ、夜には談笑しながら飯を食うだけだ。どこに行ってもやることは同じなら、わざわざ旅行などには行かず、誰かの家に集まってバーベキューでもしてればいいのでは、とまた思えてきたのさ。」


 女は真剣な顔をして耳を傾ける。この男はかなりの上客だ。このお客を失えば、女の収入にも関わってくる。


「それなら……宇宙旅行はいかがですか?」


「……宇宙旅行?」


 意外な言葉に男は少し遅れて素っ頓狂な声を上げてしまった。


「はい、弊社ではまだ正式な商品として発売されていませんが、すでに宇宙船も導入済みで、限られたお客様に試験的にご案内しています。月への往復旅行くらいなら、すぐにご提案できます。」


 男の胸の奥で何かが久々に熱くなった。


 男が生まれるずっと昔の話だが、アポロという宇宙船が人類として初めて月に到達した。その様子は、月面着陸から何十年もたった後のテレビでも放送されていて、男も幼い頃わくわくしてみていたのを覚えている。ただ、アポロは月に行っていないのではないか、という言説も聞いたことがあるので、いつか自分で確かめに行ってみたい、と思っていたのだった。


「なるほど、確かに、この惑星上には私の楽しめる旅行先はないかもしれないが、宇宙にならあるかもしれないな。」


「ありがとうございます。とはいえ、やはり宇宙旅行はあまり前例がないので、今までよりも危険が伴います。どうしても宇宙に存在する放射線は防ぎきれませんし……」


「いつもの、危険に関する同意書の話だな、問題ない。」


 そう言って男はその場で電子署名した。


 宇宙旅行というのは、実際行ってみると、退屈だった。片道一週間ほどかかるのに、現地に滞在するのはほんの一日程度。到着してもゆっくりできる宿があるわけでもないし、おいしい食べ物があるわけでもない。あるのはただ広いだけの岩肌と、真っ暗な空。正直それだけなら、地上のVRマシンを使えば体感できる。重力がほぼない、という点だけが地上では体験できないが、それも月面に着陸する頃には一週間も宇宙空間にいるので、特に新鮮味もない。アメリカ国旗も見つけられなかった。時間とお金と人生を無駄にしたような鬱々とした気分で地上に戻った。


 一応、といった感じで月以外の宇宙旅行も紹介されたが、行かなかった。


「なら、別の世界に行ってみませんか?」


「地球は行きつくして、宇宙にも行って、他にどんな世界があるというのです? きっともう、この世には私の楽しめる場所などないのですよ。」


「ですから、行こうと言っているのです。あの世に。」




 それでグリーンランド行きの超音速機に乗った。わざわざグリーンランドに行くようなもの好きはそうそういないから、お客は二人きりのチャーター便だった。


「どうして、グリーンランドなんだい?」


「あの世に行くための機械は、莫大な電力を消費します。ですから原子力発電を使用するのですが、事故のリスクが伴うため、僻地に建設する必要があります。さらに、寒冷地のほうが冷却面で有利ですから、極地にしたわけです。」


「でもどうして、アラスカや、カナダ北部じゃないんだい?」


「まだ開発中のものなのです。ですから、機密を守る意味では陸続きの土地より、島のほうが都合がよかったのです。」


「なるほどね。」


 加速によるGがかかる。


 離陸した。どんどん上昇を続けるが、小型な飛行機は、やはり結構揺れる。


「飛行機は落ちれば死にますが、あの世行きの機械はシャットダウンしても目が覚めるだけですからね。」


 女は珍しく面白くもない冗談を言って、一人で笑っていた。




 何もない雪原の真ん中に、巨大なコンクリートの建物が現れた。中に入ると、無機質でただっ広い広間があった。人が一人入れるだけの大きさのカプセルが整然と並べられ、壁に埋め込まれたコンピュータとケーブルやパイプで接続されている。カプセルの中は誰もいない。


「このカプセルに入って、あの世に行くんだね。」


 人類は、超音速旅客機を実用化し宇宙旅行にも行くようになった。ついにあの世にも行くようになったのか、と考えると感慨深い。


「肉体はあの世に持って行けないので、『行く』という表現が正しいかはわかりませんけどね。」


 女は冗談交じりに説明を続ける。なにせ、これは「あの世行き」なんていう物騒な旅だ。楽しさをいつもより強めに演出しているのだろう。


「このカプセルは断熱性・気密性高い強化プラスチックでできています。接続されたコンピュータがこのカプセルデバイスの温度、湿度、気圧等を制御しています。常に人体に適した新鮮な空気を送り込みます。」


「あの世に行っている間、食事はどうするんだい?臨死状態とはいっても、痩せてしまわないかい?」


「大丈夫ですよ。カプセル内部の空気には栄養分も含めてあるので、息をするだけで生存を保てるだけの栄養は肺から摂取できます。」


「なるほど。人類はそんなこともできるようになっていたのか。」


 自分は今、他のどこでも体験できないような最新の技術を体験しようとしている――その事実に男はかつてないほどに興奮していた。初めて女と北海道に行ったときも、月に行くことになった時も、こんなにも興奮することはなかった。この世にはまだ、こんなに楽しめるものがあったのか。


それとも、このカプセルの中はもうあの世なのだろうか。よくわからない。が、楽しい。


「とはいえ、まだ開発中のもので予期しないことが起こる可能性があります。特に、今回が初のベータテストですので……。」


「例の同意書だな、問題ない。すぐにサインしよう。」


「ありがとうございます。」


「今回はなんだかページが多いな。」


 トントントン、とタブレットと叩く指が小気味よいリズムを刻む。


「今までと違って、今回は肉体の世話も私たち、というか機械にお任せいただかないとといけないので……同意書も厚くなってしまうんですよ……。」


 と女は説明した。


「ふむ、そういうものか。」


 最終ページに署名欄を見つけると、男は迷いなくサインをした。




「これで、あたしもエリートの仲間入りね。」


 カプセルの中で、安らかな、しかし楽しげな表情を浮かべる男を見つめ、女は一人呟いた。


「全く、馬鹿な男ね。本当に超音速機に乗るころには、笑いをごまかすのに精いっぱいだったわ。自分があの世に行っている間、肉体の世話と一緒に資産の管理権もあたしに譲渡するって同意書に書いてあることに、気が付かなかったのかしら。ここの機械は、入っている間あの世を体験できる機械ではなく、本当にあの世に行ってしまう機械なのに。」


 高らかに鳴り響く女の靴音が、男の耳に入ることはなかった。




<終>



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