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故郷で過ごす幸せな日々  作者: ネコ2世
12/14

柚葉の気持ち 1

 **柚葉**

 私には兄がいる。

 血の繋がりのない戸籍上だけの兄だ。

 でも私はそんな兄、ユウにぃのことを誰よりも頼りにしているし誰よりも好きだ。

 好きになった切っ掛けはいろいろあったんだろうけど一番の理由は一緒にいるときの安心感だ。

 一緒にいると心が落ち着くし、実際困ったことがあったら助けてくれる。

 私は人と話すのが好きじゃないし、小学生のころまであまり人と話さないような人間だった。

 それは家族でも例外ではなくて、実の母とも、もう一人の兄で血は繋がっている連兄さんとも、母さんの再婚の相手である父さんとも、そして何よりユウにぃとさえ昔は話せなかった。

 この頃は血の繋がりがないとかは物心つく前から一緒にいたから理解できなかったけど…

 そんなある小学2年生の時、私は家の外で迷子になっていた。

 原因は猫を追いかけていて周りを見ていなかったことだ。

 その後何もなければ今思い出しても恥ずかしい私の黒歴史になっていたんだろうけど、そうはならなかった。

 それはユウにぃが助けに来てくれたからだ。

 あの時は『何でこの人来たんだろう』と疑問を持ち、面倒くさいと思ったことを覚えている。

 その時の私は迷子になったといってもパニックになって泣き叫んでいたわけではなかったし、もう日が落ちていて、夜空がきれいだったからそれを邪魔されたことで少し不機嫌だった。

 連れて帰られるんだろうなと思うと、またあの窮屈な所に戻らなければいけないと感じて嫌になった。

 この星空みたいに自由に生きたいと思った。

 でも私にかけられた言葉はそんなことではなかった。

「あと1時間くらいならそうしてていいからその後は帰りたくなくても帰るぞ」

 それは意外な言葉だった。

 もう小学生が出歩いていい時間なんてとっくに過ぎていたから、すぐ連れ帰られると思っていた。

 この人は何を考えているんだろう?そもそもどうしてあと1時間は大丈夫なんだろうと疑問に思った。

 それは私が初めて他人に興味を持った瞬間だった。

 そのあと私を一人にした方がいいと考えたのかどこかに行こうとするユウにぃを止めて、一緒に夜空を見ながら話をした。

 そのときいろんな質問をしたし、いろんな質問に答えた。

 ここまで話したのも初めてで私ってこんなに喋れたんだと驚いたものだ。

 いろいろ聞いていてわかったのは、この人はすごく大人びていて、私以外の家族みんなから頼りにされているということだった。

 だからこんな時間に私を一人で探しに行くといっても誰も不安にならないし、その先のことも見越してみんなには帰る予定時間を長めにして伝えていたそうだ。

 そんな同い年とは思えないこの人のことが私はさらに気になっていた。

 たぶんそれが私がユウにぃを意識しだした瞬間であり、一番だと思うようになった最初の理由だろう。

 その後、ユウにぃと一緒に過ごしていく内にユウにぃは私の目標になった。

 まずそこに追いつくために人と話すようにした。

 もともと話すこと自体はできるが、どうしても話題に詰まってしまう時があった。

 でも、そんなときにユウにぃがアドバイスをくれたおかげで今では普通に話すことが出来るようになっている。

 他にもいろいろ教えてもらったからこそ、今の私がいる。

 だからユウにぃは恩人だ。

 そしてそんな恩人であるユウにぃのことを私はどんどん好きになっていった。

 その好きは、異性としてのという意味だと好きになった時には理解していた。

 その時にはユウにぃと血縁関係がなかった事に喜んだのを覚えてる。

 小学生の私は何を考えているんだとも今は思うけど…

 そしてその気持ちは離れて暮らしていても衰えることはなくて、夏休みなどは、ほぼ毎日ユウにぃのところに行っていた。

 1年で小学校を卒業してユウにぃとまた一緒に暮らせると思っていたのに、居候(いそうろう)している家の家主である叔母が体調を崩す機会が増えて、一人にしておくのは不安だからと中学生になっても一緒に暮らせないことが分かったとき、行き場のない怒りを物にぶつけて私物をいくつか買い直したこともあった。

 好きと直接伝えたことはないけれど、家族からも、たぶん本人すらも私の気持ちに気付くくらい、私はユウにぃにべったりだった。

 そのくらいユウにぃのことが私は好きだ。

 兄としてではなく一人の男性として…

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