家族 3
その手をたどってみると俺の手を取ったのは柚葉だった。
柚葉は悲しそうな顔をしていたが、それでも俺を見る目は優しい光を帯びている。
それを見た俺は正直かなり驚いていた。
この話をしたら一番ショックを受けるのは柚葉だと思っていたからだ。
家族の死を一番悲しみ、心のより所に俺を選んだのにもかかわらず、その相手が親の死を何とも思っていなかったと聞かされたら誰だってショックだろうし、相手のことが嫌いになるだろう。
でも、柚葉の目は俺を軽蔑するような目ではないし、表情に怒りの感情などは含まれていなかった。
「ユウにぃ…ユウにぃは本当にそれしか感じなかったの?」
優しい声で俺に問いかけてくる柚葉に、最後まで話すと自己弁護しているみたいで話したくなかったのだが、すべてを話すことにした。
「俺は………そのことがショックだった。親の死で泣けないのが悔しかったよ。俺はやっぱり心がない人間なんだと思うとお前たちと一緒にいるべきは俺じゃないってここに来てからいつも思うようになったんだ」
こんな俺に優しくしてくれてありがとな、でも俺なんかとは一緒にいるべきじゃない。そう言った俺は、今度は三方向から抱き着かれた。
抱き着いてきたのは正面に柚葉、右に玲奈、左に美咲だった。
「祐斗兄さんは優しいですよ。だってそうじゃないとそんな感情抱かないですもん」
「そうだよ、祐斗君はいつも優しい。私はその優しさに救われたんだよ?だから祐斗君に心がないなんて有り得ない」
「二人の言う通りだよ、ユウにぃは誰よりも優しくてそして誰よりも人を思う心があるんだよ。それにもうユウにぃは悲しいっていう感情を理解してるよ。だから『俺なんか』なんて言わないで、私たちは優しくて誰よりも頼りになるユウにぃと一緒にいたいと思ってるから」
そんな三人の言葉を聞いて胸のモヤモヤが晴れていくのを感じた。
たぶん俺は誰かにこの言葉をかけてほしかったんだと思う。
今までずっとどこか疎外感のようなものを感じていた。何をするにも他人事で自分の事として捉えられない。
だから何が起きても心動かされない、悲しいと感じない。
でも今は違う、自分でもはっきりわかる。俺は柚葉たちに一緒にいてほしいと言われて、自分の気持ちを受け入れてくれて、ホッとしている。
俺は想像以上に柚葉たちのことが大切で一緒にいてほしいと思っていたらしい。
「そうか、それならこれからも一緒にいてくれると嬉しい」
そう言って笑った俺に柚葉たちは笑顔で「うん」と答えてくれた。
「すいません、お恥ずかしいところをお見せしました」
俺の話がひと段落したところで、大輔さんたちがいるのを思い出して三人が離れないのでそのままの状態で謝った。
「いいんだよ、裕斗君が悩んでいるとも知らずにに無理やり場を盛り上げようとした私たちにも悪いんだから」
大輔さんたちは悪くないと思うが、それを言い出したら話が進まないと思い言わない事にした。
「それと裕斗君、二人がいいというなら僕は反対はしないけど、自分の女の子を作るのはほどほどにね」
「そうね、私も反対はしないけど気を付けるのよ」
「いや、そこは反対しないといけないところですし、あなた達娘を何だと思ってるんですか、そもそも俺にハーレム願望はありませんってば!この状況でそれを言っても説得力ないのはわかってますが」
女の子三人から抱き着かれた状態で否定してもな~、っていうのは自分が一番よく分かっている。
それと三人とも『それでもまあ~』みたいな顔をするのやめろ。日本でそんなことできるわけないでしょうが!
その後、三人がなかなか離れてくれなくて苦労したし、泊まっていったら?なんて言われて切り抜けるのにも苦労した。
それでも、家族というのは本当に大切なものなのだと実感した。