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故郷で過ごす幸せな日々  作者: ネコ2世
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引っ越しと転校

「よし、これで荷物は全部だな」

 高校2年を目の前にした春休み俺、藤宮祐斗(ゆうと)は引っ越しと転校をすることになった。理由は両親が高1の冬に死んだからだ。

 行先は俺が小学校6年生まで住んでいた街だ。そこで兄のお金で一軒家を借りた。

 兄の(れん)は一人で会社を立ち上げて大手企業と呼ばれるまでに成長した会社の社長をしている。だからお金の心配はいらなかった。

 ただ、一軒家なのにはわけがあり妹の柚葉(ゆずは)が一緒に暮らしたいと言い出したからである。たぶん両親の死がショックだったのだろう。

 俺には両親の死で悲しむことも寂しがることもできなかった。涙の一滴もたれてこなかった。

 昔から俺は人の悲しみが理解できなかった。理由はわからないがどんなことがあっても悲しみで涙が出ることはなかった。

 そんな俺でも両親との別れなら悲しみを理解し泣けると思っていた。でも現実は違った。両親が死んでも何も感じなかった。『あぁ死んだんだな』という情報だけが俺の記憶に残った。

 俺はそれがショックだった。ここまで育ててくれた親で感謝しているはずなのにそんな人の死さえ俺にはなにも届かないのかと思った。

 結局俺はそういう人間なのだ。人の心が理解できない人間なのだ。

 まあそんなことを考えたりしたが引っ越しは順調に進み荷物はすべて運び終わった。

「ユウにぃ久しぶり」

 引っ越し先の家で妹の柚葉は少し元気のない声でそう言った。

「いや葬式の時に会ってるし、最近は電話もしてるだろ、ユズ。それとこれからは俺が一緒にいるから元気出せよ」

 そう言って柚葉の頭をなでると嬉しそうに頬を緩める。

「そうだね、ありがと」

 そう言って柚葉は自分の部屋に戻っていた。


 荷物の整頓が終わってから柚葉と一緒に俺の作った晩ご飯を食べている。

「おいしいね」

 そう言って笑った顔は昼の時よりも元気そうだった。

「それはよかった、明日から学校始まるんだから元気出せよ。友達心配させたくないだろ」

「うん、だからさ今日一緒に寝てもいい?」

 少し恥ずかしそうに柚葉が言う。

 昔は怖がりでよく俺の布団に潜り込んでいた。その癖が今でも残っているのだろう。

 俺たちは血のつながりがある兄妹じゃない。俺たちが物心つく前に両親が結婚した。だから俺たちは同い年で誕生日が俺のほうが早かったので柚葉は俺のことをコウにぃと呼んでいる。

 そしてそのことは柚葉も知っておりたぶん思春期ということもあって俺を異性として意識しているんだろう。

 俺は恋をしたこともなければ異性を意識したこともないのでその気持ちはよくわからなかった。

「寂しいなら別にいいぞ。その代わり元気出せよ」

 そういうと柚葉は嬉しそうに頷いた。

 その後俺と柚葉は一緒のベットで二人で寝た。柚葉は終始嬉しそうだった。


 朝になって俺たちは学校に二人で行った。

 学校に着くまでにものすごく注目されて正直ウザかった。まあ柚葉は兄弟の贔屓目なしにしてもかなり美人だなと思う。

 だから気になるのもわかるが正直ウザいからやめてほしい。

 学校に着いたら柚葉と別れて職員室に向かった。そこで担任と顔わ合わせて朝のHRが始まってから先生に呼ばれて教室に入った。

「自己紹介をしてねん♪」

 妙にテンションの高い語尾に音符マークがつくような俺の嫌いなタイプの担任に言われた自己紹介しなければならなくなったが正直俺には特徴というほどのことはほとんどないのでやめてほしかった。

 あと柚葉はこっそり手を振るのやめなさい。

「あ~はじめまして、藤原祐斗です。よろしく」

 そうして俺の面倒くさい学校生活が幕をあげた。

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