0話 ありえないこともありえる日がある
人は誰でも夢を見る生き物だ。そう僕も夢を見ている。
だが、僕が見ている夢は絶対に叶う訳のない夢だった。何故過去形なのかって?それはその夢がある方法で叶ってしまったからだ。
「僕好みの女の子が空から降ってこないかなぁ」
「いやいや、空から降るなんてありえないだろ」
そう、僕の夢は空から女の子が降ってこないかと言う夢だ。まぁこの時の僕はあんな出会いがあるとは思ってもみなかったんだよなぁ。
「それよりそんな冗談言ってないでテスト勉強するぞ凪」
「勉強は同好会やったあとやろうぜ」
僕こと伊藤凪は親友の中村京平と一緒にテスト勉強もとい非リア同好会の活動をしていた。活動人数は僕と京平の2人しかいない。
結成理由としては、僕も京平も非リアなのと彼女いない=年齢が一致して意気投合したからだ。
「終わったら絶対だぞ?そんで、なんか変なこととかあったか?まぁないんじゃねぇの?」
「いや、ひとつあるんだ京平」
「なんだ?」
「同じクラスの愛命と美弦付き合ってるみたいだぜ?」
ちなみに俺と京平は蝦夷山高校2年3組だ。
今言った2人は遠山愛命と神崎美弦だ。このふたりが付き合ってるという、噂を耳にしたので同好会で報告しようと思ってたのだ。
「嘘だろ?あの正反対の2人がか?」
「そのまさからしい、俺も驚いたよ」
そう、2人の性格はまさに真反対。愛命は休み時間誰とも関わらず本を読んでいるいわゆる陰キャってやつで、美弦はスポーツ万能、成績優秀で誰からも信頼されてるいわゆる陽キャだ。
その2人ががくっつくなんて誰が思うだろうか。ないと思ってたことって起きるもんなんだなぁ。
「なんか妬ましくなってきたんだけど?」
「俺に言うなよ…んで報告以上ならテスト勉強するぞ」
「終わりだよ、急に冷たくなんなよぉ」
「るせぇ、お前が全教科赤点ギリギリだから勉強教えてくれって言ったんだろうが!付き合う俺の身にもなれよ馬鹿野郎!」
凄い図星を突かれてしまった…。そう!俺こと凪はテスト平均点30点丁度なのだ!って、自慢できねぇよ…。
「めんどいけど付き合ってくれてありがとな」
「お前らしくもねぇ台詞吐くなよ…気持ち悪ぃ」
「酷くね!?」
そんなやり取りをして僕は京平に勉強を教わりテストに備える準備を着々と進めている。京平って教えるの上手いんだよなぁ。すごくわかりやすい。
「1回休憩しよう、2時間ぶっ通しだったからな、凪お前も疲れただろ?」
「まぁな、じゃあコンビニで色々買ってくるわ、何か欲しいものあるか?」
「じゃあコンソメポテチと紅茶でよろしく頼む。あ、ポテチは大きめのな」
「うーい、了解」
休憩するついでにコンビニで何か買ってこようと思ってたからほしいもの聞いてみたら凄い普通だなと思った。
てか、今年暑くね?現在は8月15日の昼、当たり前のように暑いのだが、スマホで最高気温を見てみると40度だ。うわぁ暑いとかそういうレベルじゃねぇなぁ…。そんなことを考えながら歩いてたらいつの間にかコンビニに到着していた。
「確かコンソメの大きめのポテチと紅茶だったな、僕は仲魔チョコと甘苦茶を買うか」
買うものを決めたし、さっさと帰りたいのですぐさま僕はレジへと向かう。
「お会計の方が923円となります」
「kamonoで」
kamonoとはこのコンビニこと金森マートでしか使えない電子マネーだ。
「それではこのタッチパネルにかざしてください」
「はーい」
言われるがままかざして僕は会計を済ませた。
「お買い上げありがとうございました」
あいつが待ってるし早く帰ろっと。ここだけの話、本音はチョコを溶かしたくないから早く帰りたいのだ。というより仲魔チョコ久々に見た気がする。その理由としてかれこれ3年は見てない気がするからだ。おっと、溶ける前に帰らねば。
「帰ってきたぞー」
「うーい凪おかえり、ポテチあったか?」
「あったよ、それより仲魔チョコが復活?してたわ」
「え?あの販売停止してた仲魔チョコがか?」
やはり俺の見なかったという判断は正しかった。だってどこのコンビニやらスーパーやらにもみあたらなかったのだから。
「たしかネットのニュースになってなかったよね?」
「そうそう、ニュースになってなかったし急に消えたはずの商品だ。」
「なんか怖くね?」
凄い震えが止まらない。商品が急に売られてるって怖くないか?って僕は誰に言ってるんだ?