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味噌汁泥棒再び!

3/1に最終巻が発売されることに伴いまして、

3月上旬で本編の掲載を終了させていただきます。

以降は、こちらでは書籍発売の際にお付けしていたSSをはじめ、番外編の掲載をさせていただきます。

どうぞよろしくお願いいたします。

「……ない」


 昼休憩を終えて、緑の塔からアデルの部屋にあるキッチンへ戻ってきたシャーリーは、鍋の蓋をあけてがっくりと肩を落とした。

 鍋には、昼の残りの味噌汁が入っていたはずである。それが、きれいさっぱりなくなっている。思い当たる犯人は一人しかいない。


「またエドワルド様ね……」

 あの第二王子は、どうして姉であるアデルの部屋に勝手に出入りするのだろう。エドワルドに盗み食いをされたのはこれで三度目だ。一度目がポテトサラダ、二度目が味噌汁、そして今回も味噌汁……。あの王子は、ここに来れば食べ物があると思っているのだろうか。いや、確かに何かしらの食べ物は存在するのだが、ここはエドワルドの食糧庫ではない。


 アデル曰く、エドワルドは午後から剣術の稽古が入っていることが多い。そのせいで、昼食後でもすぐにお腹がすいてしまうため、剣術の稽古のあとは何かしら食べているという。おそらくお腹がすいたのでアデルの部屋のキッチンによって、そこに味噌汁があったから飲んだだけなのだろう。エドワルドは、どうやらここに残っているものは残り物だから好きに食べていいと思っている節がある。


(……これは対策を考えないと)


 シャーリーはたまに、昼のうちに夕食のメニューの下準備をしていることがある。煮物などは味をしみこませるために昼に作って夜に温めなおして出すようにしているし、スープの出汁などは一度に取ってしまうことも多い。エドワルドが当たり前のようにここにきて食事を漁るようになると、それらに手を出される危険性があるのだ。由々しき問題である。


(要は、エドワルド様に用意されている軽食がまずいのがいけないのよ。美味しかったらこんなところまで食べ物を探しに来るはずもないものね)


 ということは、軽食問題を何とかすれば、エドワルドがつまみ食いをすることはなくなるはずだ。ならば簡単な問題である。軽食をシャーリーが作ればいい。


(運動後ってことはタンパク質と炭水化物多めがいいかしらね? ……そう言えばハンバーガーってまだ作ったことがなかったわね)


 パンで炭水化物、パティでたんぱく質が取れて、なおかつお腹も満足できるから、運動後の軽食はハンバーガーがいいような気がする。


(我ながら名案よね!)


 シャーリーは一つ頷いて、ハンバーガー用のパンの生地作りに取りかかった。



     ☆



 シャーリーが失敗したと思ったのは、その二日後のことだった。


「シャーリー、ハンバーガーが食べたい」

「…………」


 朝からシャーリーの部屋にやってきたエドワルドににこやかに言われて、シャーリーは額を押さえて天井を仰いだ。当然のように侍女の部屋に来ないでほしい。

 昨日エドワルドに与えてしまったハンバーガー。彼はそのハンバーガーがいたくお気に召したようだ。


(……どうしてこうなることが想像できなかったのかしら)


 味噌汁にしてもそうだった。ポテトサラダも然り。エドワルドは、気に入ったらとことんそれを求める性格をしている。


「エドワルド様、さすがに朝ご飯にハンバーガーはちょっと……。アデル様もイリス様もいらっしゃいますから」

「む。二人だってきっと気に入るはずだ」

「そうであっても、さすがに女性には、朝からハンバーガーは重たすぎます」


 ただでさえ、シャーリー手作りハンバーガーはボリューミーだ。エドワルドのお腹が満足できる仕上がりなのである。アデルやイリスの朝食にすると、二人の胃に負担がかかりすぎる。


「ではいつならいいんだ」

「今日も午後の軽食用に作っておきますから」

「……明日は?」

「明日も」

「明後日は?」

「明後日も」

「その次――」

「わかりました。エドワルド様がいらないというまでは毎日作ります」


 シャーリーの答えに、エドワルドは満足したらしい。それならば午後まで我慢すると言って、機嫌よく部屋から出て行った。

 シャーリーはまだ夜着から着替えてもいなかった自分の姿を見下ろして、はーっとため息をつく。


「というか……、エドワルド様、早すぎ……」


 今度からエドワルドに新しい食べ物を与えるときは充分に注意しようと、シャーリーは深く心に刻んだのだった。






お読みいただきありがとうございます!

3/1、「転生料理研究家は今日もマイペースに料理を作る あなたに興味はございません(アース・スタールナ)」の③巻(最終巻)が発売です!

緑の塔の謎、シャーリーの恋の行方の結末を見届けていただけると嬉しいです!

挿絵(By みてみん)

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