殺し屋忍者さん
郊外の小さな建物、その一室で今時珍しい黒電話がジリリと鈴を鳴らす。
「はいどうも!! 何でも屋『ひまわり』です、部屋の掃除からストーカー退治まで、頼まれればなんでも致します!
本日はどのようなご用件で?」
受話器を持ち上げたのは身の丈6尺5寸はある立派な体格の大男だ。
「はあ、『殺し』? 合言葉は? ......おう、なるほど、でいくらだ?
いいぜ、真っ当な額だ。で、何で殺す?
素手か? 毒か? なんなら鉄砲まで用意できるぜ」
受話器を持ち上げた時とは異なる荒い口調。
そう、これが殺し屋としての裏の顔だ。
「え、またソレか? いやまあ別に殺せなくはないが、殺し方は色々あるんだぞ?
どうしても? ......そういうなら......標的の写真は合言葉を教えたババアに渡しておけ」
受話器をおいた男はため息をつくと、机から鍵を取り出し外へ向かう。
夕方、部屋に戻ってきた男は疲れた様子で椅子に座った。
「殺しの仕事でしたか、兄貴!!」
「声がうるせえよこのボケナス、疲れてんだからほっとけよ」
兄貴と呼ばれた男は卓上の黒電話を投げつける。
「危ないっすよ兄貴、っていうかその様子だとまたアレを使ったんですね」
「ああ、そうだよ。わかってるならいちいち聞くんじゃねえよ」
「しかし兄貴も大変すっよね。
忍者の末裔として引き継いだ技を生かすために殺し屋始めたのに、ほとんど『トラック』での殺しの依頼ですもんね?」
「ここんところずっとな。
磨いた暗殺術より、アクセル踏み込む回数のが多いってどういうことだよ」
「大体誰なんです? こんな頻繁にトラック殺人頼む奴は?」
「みんな自分のことを『神様』や『女神』なんて名乗る頭のやべえ奴だよ。
電話番号もわかんねえから折り返し電話もできねえしな」
「そりゃ兄貴が黒電話なんか使ってるからですよ。変えましょうよデジタルに、電話番号表示されますよ?」
「うるせえ、機械は苦手なんだ!」
男は投げた黒電話を拾って机に戻すと、また深くため息をつく。
今日はもう帰ろうかと考えた時、また電話が鳴り響く。
「はいどうも、何でも屋『ひまわり』です。 ......ええ、なんでもしますよ。 .....あぁ、お届け物ですか? 一体何を? ......え? ......わかりました、今からお伺いしますね」
今度は表の顔、便利屋として対応した男が再び鍵を手に立ち上がる。
「今度は運びの仕事ですか、兄貴? どうやって運ぶんです?」
「......トラックだよ」