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暁の巫女 -月の女神2-  作者: 実月アヤ
第五章 真昼の月
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エピローグ

半年後、セインティア王国。




「──第一騎士団第三部隊、第一魔法兵団、魔物を迎撃せよ!」


 赤く光る退魔の剣をかざし、聖国の太陽と呼ばれる美貌の王子が馬上で高らかに命じる。彼の後ろに続くのは彼直属の近衛騎士達と魔導師達だ。一番前線をゆく王子に並ぶのは、彼の腹心である騎士。

 そして──


「ラセイン様、後ろからも来ます!」


 アランの声に、王子は振り返った。正面から向かってくる魔物の群れとは別に、背後にも回り込まれていたらしい。けれど彼は少しの焦りも見せること無く、背後の部下へと指示を下した。


「レナート、ガレス、クイン、お前達は後方だ。指揮は──」


 彼の視線が移ろう前に、王子の隣──アランの反対側から声が上がる。


「私が行くわ」


 黒い馬を颯爽と操り、波打つ栗色の髪を靡かせて、月の女神──ディアナが向きを変えた。

 彼女が白銀の剣を抜き放てば、その肩から「先に行くよ」と白い鳥が空へと飛び立ってゆく。それを見つめながら、セイが彼女の名を口にした。


「ディアナ」

「私の腕は知っているでしょう?」

「いや、そうではなく──」


 王子は一瞬だけ躊躇う色を見せたが、それは彼女の身を案じてのことではない。群れなす魔物が相手でも、ディアナの腕ならば敵ではない。


「我が君は愛しい奥さんと一瞬でも離れるのが嫌なんですよ、ディアナ様。一体いつまで新婚気分なんですかねー」


 アランがにやにやと笑いながら茶化し、後ろの騎士達は甘すぎる菓子を口にしたときのような顔をした。彼の指摘に、ディアナは頬を染めて軽く睨んでみせる。


「アランさん、からかわないで。魔物退治しようってときにそんな──」


 しかし夫に視線を移した彼女は絶句した。

 彼はにっこりと微笑みながら、けれど微妙に目を逸らしている。それはまさに、アランの指摘が図星だということで──


「っ、レナート、ガレス、クイン、アレイル、リルディカ、エディス!行くわよ!」


 更に赤くなった顔を慌てて背けて、ディアナが号令をかけた。追加された魔導師はディアナの部下だ。セイの許可は要らない。


「「御意!」」


 彼らは王太子妃と共に後方の魔物達へと向かっていく。残されたセイは口元を覆ってぼそりと呟いた。


「あれくらいで照れて……どうしてこう、僕の妻はいつまでも可愛いんだろう」

「はいはいは~い!行きますよ、ラセイン様!緊張感プリーズ!さっきまでの凛々しさはどこに落っことしてきちゃったんですかね!?」


 主の言葉に、アランは呆れ顔で剣を抜く。公爵家の妻はよほどの有事でなければ家で留守番なのだ。戦いの場には出したくはないが、ところ構わずノロケる主君に当てられると無性に会いたくなる。


「あー早く片付けて、今日は絶対定時で帰るからな!」


 隊長であるアランの言葉に、近衛騎士達は「ハッ」と短く了承の意を返し、それぞれが剣を抜く。魔導師達は杖を構え、発動呪文を唱え始めた。


「行くぞ」


 王子は正面へと向き直る。もう後ろを振り返ることはない。妻の背中を見守り続けることなどしない。彼女は戦いの女神──彼の最愛の、月の女神なのだから。



「ここはあなた達が居るべきところではないのよ!帰りなさい」


 ディアナは鋭く告げるが、目の前の我を失った魔物には届かない。他国から放たれた悪意ある魔法に煽られた魔物達なのだ。それでもセインティアの国境付近で止めることができたのは、ひとえに精霊の護る魔法大国セインティア王国であることと、世継ぎの王子ラセインの対策が素早かったおかげだった。

 群れであることはやっかいだが、魔物自体は大した力はない。女神を引き裂こうとするその鉤爪を躱して、代わりに剣を振った。難なく魔物の急所を切り裂き、倒していく。


「ディアナ、上!」


 イールの鋭い声に上空を見上げれば、翼を持った蜥蜴のような魔物がこちらを目がけて滑空してきていた。しかしディアナは動じること無く、鋭い声で魔導師を呼ぶ。


「リルディカ!」

「はい!“護りの壁よ、我が主を包み込め”」


 呼ばれた彼女は、ディアナへと防御魔法を掛けた。杖を向けて腰まである薄紫の髪が風を受けて踊る。魔物の爪は防御壁に阻まれ、月の女神に触れること無く弾き返された。


「ディアナ、下がれ」


 アレイルがその手に炎球を生み出し魔物へとぶつければ、それはギャン、と鳴き声を上げて消滅する。そうして見渡せば、もうあらかた決着はついているようだった。


「こちらは終わりね。怪我をしている者はいない?」

「はい、ディアナ様」


 若い男性魔導師──エディスが頷き、ディアナに答える。そのまま彼はアレイルへと口を開いた。


「お前、いい加減にディアナ様を呼び捨てにするのは止めろ。妃殿下に向かって失礼だぞ」


 エディスは先程の呼びかけを聞いていたのだろう。アレイルはムッとしたように反論する。


「俺はハーフエルフだ。人間の決めごとなど知らん。それに人前ではちゃんとしている」


 公式行事では確かに彼はディアナを王太子妃として扱い、敬語も使ってみせる。しかしディアナがただの庶民だった頃から共に居るアレイルには、なかなかその時からの癖は抜けないようだ。特に戦いの場では。セイに対しても同じで、ごく内輪で話をする時には敬語を使わずとも許されている。

 対して、その辺りをちゃんとわきまえてこなしているのはリルディカだ。彼女は元王族というだけあって、身分についてはきっちりしている。ディアナが王太子妃になり、その護衛として任命されたときから、リルディカは彼女をディアナ様と呼び、主として接していた。


「エディス。アレイルのことは王子もディアナ様もそれで良しとしていらっしゃるのよ」


 リルディカの援護に、ディアナも微笑みながら頷いて。


「私としては、リルディカにも前のように接して欲しいけれど」

「私はもうあなたの臣下ですから、これはけじめです。でもあなたへの友愛はあの頃と変わってはおりませんよ」


 ディアナよりはいくつか年上のリルディカは、そう言って微笑んだ。美しい女性そのものの彼女はもう滅多に子供の姿になることはないが、たまに妹のような顔をすることがある。クスクスと笑い合う美女二人に、他の騎士達も集まって来て、和やかでキラキラとした雰囲気に、魔物退治後だということをすっかり忘れてしまいそうになった。


「あら、あっちも終わったわね」


 ディアナが視線を向けた先、王子の向かった前方部隊も魔物退治を終えたという、魔導師の狼煙が上がったところだった。それを待ちきれなかったのか、白馬に跨がったセイが、単騎こちらへ向かってくる。


「全く、王太子のくせに一人で。本当に……困ったひとね」


 そう言いながら、けれどディアナの口元には微笑みが浮かんでいて。わずかに赤く染まる頬に、騎士と魔導師達は気付かないフリをした。その間にセイはこちらへと近づき、馬から下りてディアナへと駆け寄る。


「ディアナ、さすがだな。僕の月の女神、もちろん怪我などしていないね?」

「ええ……って、ちょっとどこ触ってるの」

「うん、怪我はないみたいだ。いつも通り、美しくて可愛い魅力的なあなただね」

「あの、セイ、落ち着いて。ね、またアランさんに怒られちゃうから」

「他の男の名など呼ばないで。今は僕にあなたを堪能させて欲しいな。早くこの腕に閉じ込めたくて仕方なかったんだから」

「れ、冷静に!離れてたのなんてほんの十数分よ!?っていうか、わざとでしょう!」


 ふたりのじゃれているとしか思えない会話に、そっと周りは離れて背を向ける。この先の展開はいつも通りだからだ。

 慌てふためく妻を多いに愉しみながら、王子は女神に素早くキスをする。ズルい!という叫びに笑顔を返して、それから二人で視線を合わせて、もう一度キスを交わした。


「さあ、帰りましょう。私たちの城へ」



 魔物討伐を終えた一行が城に着くと、苦々しい顔をしたレイトが一行を出迎えた。


「俺もいい加減に実戦部隊へ異動したいんですが」


 サングラス越しに向けた視線はリルディカをかすめて王子へと向けられ、アランはそれを見つけて苦笑する。


「君は戦う広報官が天職だよ。そのエロ甘い顔を存分に有効利用して欲しいね」


 レイトはリルディカが魔法兵団に所属し、かつ王太子妃の護衛魔導士になったときに、広報部から騎士団への異動願いを出していた。自分が内勤で、リルディカが戦闘職についたことがよほど心配だったのだろう。

 しかし広報官と言えど、全くのデスクワークというわけではない。外交官と共に他国へと赴くこともあり、その時は自分の身は自分で護らなければならないときも多い。レイトのように見目が良く、戦闘能力も高い者は重宝されるのだ。

 にやりと笑う彼にレイトは眉根を寄せるが、抗議の言葉が出る前にリルディカがそっと彼の傍へと寄って来た。まっすぐに視線を合わせて口を開く。


「あなたはいざという時、私を護ってしまうでしょう。私たちはもうラセイン様とディアナ様の臣下なの。一番に優先すべきは主。私のことを心配しているなら大丈夫よ」


 彼女の言葉に、レイトはブルーグリーンの瞳を彷徨わせた。自分でもその通りだと分かっているが、それでも納得はできない。往生際が悪いとは知りながら、彼は亜麻色の髪をくしゃりと掻き上げる。


「……リルディカを護るのも、王子を護るのも同じことだ」


 恋人の言葉に、リルディカは困ったように笑った。声を潜めて彼の耳に囁く。


「言い方を変えるわね。──私があなたを優先してしまうから、私と戦場に出ないで欲しいの」

「──っ」


 彼女は見事にレイトを絶句させることに成功し、彼は赤く染まった頬を隠すように口元を押さえた。それをしっかりと見届けて、アランはあーあと呟く。


「全く、リルディカさんも随分たくましくなりましたね。面白いように手玉に取られてるよ、レイト」

「うるさい!アンタだってそうだろう!」

「え~そんなの当然じゃん。むしろ俺は自ら手玉になりに行ってる!」

「勝ち誇ったように言うな!」

「あーあーレイトさんてばアラン隊長にまで手玉に取られちゃってるよ、チョロい人だなあ」


 いつも通りワイワイと始まったレイトとアラン、近衛騎士たちのじゃれ合いに、クスクスと笑うリルディカ。すっかり日常となったその様子を眺め、セイとディアナは顔を見合わせて微笑んだ。



 一通りの報告と後処理を済ませたセイは、アランを伴い自分の執務室へと向かう。

 そのソファに悠然と腰掛けていたのは、王子の姉である公爵夫人、そして銀髪の美貌の魔導士と、その弟子の少女だ。


「おかえりなさいませ、ラセイン王子。先にお邪魔致しております」


 立ち上がって優雅に美しく礼をするセアライリアに、セイは苦笑して着席を促す。


「姉上、そんな他人行儀な挨拶は必要ありませんよ」

「あら、わたくしはもう臣下ですもの」


 セアラはにっこりと微笑むが、口調は姉としての多少砕けたものになった。

 降嫁した元王女の人気は衰えるどころか、月の女神と併せて国民の間で一層高まっている。正式にはもう姫ではないのに、どこへ行っても民は聖国の金の薔薇を未だに『セアラ姫』と呼ぶほどだ。

 アランは妻を抱き寄せてその頬に軽くただいまのキスを落とし、横に座るシーファを軽く蹴って退かし、隣に収まった。呆れたように口を開く。


「姉君ですら礼儀をわきまえているというのに、相も変わらず我が君の執務室でくつろぎまくってんのは、どこの陰険魔導士でしょうねえ」


 彼の皮肉にもまるで動じることなく、銀の魔導士は手元の資料を示してみせる。


「新しい魔導具を開発したのでな、ラセインの承認を貰いたいのだが」

「またですか。本当にあなたは優秀ですね。宮廷魔導師に勧誘する誘惑に負けそうになります」


 セイは渡されたそれに目を通しながら、困ったように微笑んだ。友人を縛り付けたくないのは本音だが、魔導も、喧嘩の仕方も優秀すぎるシーファは、こうして魔導開発という名目でセインティア王国に新しい利益をもたらしてくれる。それは彼の弟子であるリティアも同じで、彼女の魔導の制御能力も目覚ましい進化を遂げていた。


「あの、先日お話した短縮呪文ですけど、こちらだったら10節を3節に出来るんです。そうしたら消費魔力は激減しますよ」

「ああ、これは凄い発見ですね。姉上、早速検証しましょう。リティアさんもご同席頂けますか?」

「はい、もちろん」


 二人が微笑み合う横で、シーファへアランが絡む。


「ところでさあ、陰険魔導士。この開発ってまさか」

「もちろん、セアラに手伝ってもらった」

「当然ですわ。わたくしもこの魔法には興味がありましたの。先日うちの研究室でやっと完成させたのですわ」


 さらりと答える美貌の魔法使い達に、アランは目を剥いた。


「なに旦那の居ない間にウチに上がり込んじゃってんの!?俺の奥さんと勝手に仲良くしちゃってくれてんの!?」


 シーファは常にリティアと一緒だし、屋敷には大勢の使用人がいるのだが、彼にはそんなことは関係ないらしい。アランの言葉にうるさそうに、シーファは呆れ顔で頬杖をついた。


「魔法がらみの実験をお前が居る時にできるわけないだろうが。それに私がリティア以外に心傾くことなどあるわけがない」


 ブルーサファイヤの瞳を愉しげに煌めかせるシーファは、弟子が思わず絶句して、真っ赤に頬を染めるのを分かっていてそんな台詞を吐く。思わぬところから飛び火を受けたリティアは、「ななな何を言ってるんですか、お師匠様!」と叫んで顔を背けた。その何とも言えない愛らしさと微笑ましさに、密かに銀の魔導士が目元を緩めているのを、セイは目ざとく見つけたが、それを指摘するのも野暮だとわかっている。


 魔法感知能力のある夫の為に、彼の職場である王城でやたらに強い魔法研究を避けているのは、妻の密かな思いやりだ。城内の魔法兵団棟には万全の保護魔法を掛けているが、シーファとリティアの魔力は軽くそれを凌駕してしまう。かといって、銀の魔導士の家に公爵夫人が出向くわけにもいかない。となれば、研究できる場所は限られてくるのだが。


「そんなの知ってるけど、ムカつくもんはムカつく」

「……お前、結婚してから随分独占欲が強くなったんじゃないか」


 未だに口を尖らせるアランに、今度はセイが呆れ顔を向けて言えば、間髪入れずに彼が言葉を返した。


「もちろん、俺の一番の仲良しは我が君ですとも!!」

「要らん。気色悪い」

「あらあ、聞き捨てなりませんわー」

「もちろん、俺が一番愛しているのは我が妻ですとも!!」


 宣言を見事に翻して、妻への愛を叫ぶ腹心に、王子は呆れ混じりの溜息をつき──けれど漏れる笑いを抑えきれずに。これもまた日常となった風景をただ穏やかに楽しんだ。



 ハーフエルフの護衛魔導士を連れ、肩に真っ白な鳥を止まらせて城の廊下を歩く王太子妃に、その場に居た者は目を輝かせ、けれど慎ましく微笑んで礼をする。使用人は高貴な方の視界に入るべきではない、目を合わせてはいけないというしきたりの国もあるが、ディアナは違う。すれ違う一人一人に微笑みを向け、名を呼び、働きを労る言葉を掛ける。庶民出身だからというだけでなく、彼女はただ、同じ人間として扱っているだけなのだと。

 聖国の太陽と呼ばれる王子の妻だけあって、彼女はまるで民を優しく包み込む、まさに月の女神だ。

 そうして彼女は、魔法大国セインティアの民に受け入れられ、愛されていた。


「ボク、森の方の様子を見てくるよ」

「ええ、イール。お願いね」


 廊下の大きく空いた窓までくると、イールはそう言って、ディアナの頬に軽く触れてから空へと飛び立つ。青い空に真っ白な翼がはためくのを見て、ディアナは眩しそうに目を細めた。


「……自由に飛んでいくイールが、羨ましい?」


 足音が近づき、穏やかな口調で掛けられた言葉に、彼女は微笑みながら首を横に振る。彼から触れられる前に、その肩に寄りかかった。


「──私は自由よ。私の一番の望みは、あなたの傍に居ることだもの」


 ディアナの言葉に、セイは彼女の肩を抱いて深く微笑む。アディリス王国の森深くに住み、養父と相棒とともに小さな幸せを守って来た少女を、大きな運命に巻き込んでしまったと思っていた。次期王の妻という座も、彼女には鳥籠になるのでは無いかと。

 けれどそれは違う。ディアナとセイはお互いに、共に並び立ち、支え合い、手を繋いで進んでいく相手を見つけたのだ。ただ、それだけのことであり──それこそが未来への希望だ。

 セイの腰にある退魔の剣へと手を触れて、ディアナは囁く。


「フォルレイン、私たちと一緒に居てね」

『もちろんだ、我らの女神』


 優しく返る声。それを聞いた精霊達が楽しそうに二人の傍で舞う。

 気を遣って少し離れた場所で待つアレイルの傍でも精霊が踊り、彼も楽しげに顔を綻ばせた。それを見つけてクスクス笑っていたディアナだったが、窓からの爽やかな風に、彼女の栗色の髪が揺れ、それを掬いとってセイが唇を落とす。穏やかなアクアマリンの瞳が、女神の紫水晶の瞳を見つめて、ディアナの胸にきゅんと音のしそうな甘い痛みを与えた。


 そんな目をされたら、どんどん好きになってしまうわ。


 そう思いながらやっとのことで麗しい夫から視線を引き剥がす。行動の意味を言葉にはしなかったが、彼には充分通じたようで、嬉しそうに笑った。

 窓の外へと目を向ければ、眼下に広がるセインティアの美しい街並、豊かな森、きらきらと輝く湖。雲一つない青い空に、鮮やかな白い鳥。そして隣に居る、金色の髪とアクアマリンの瞳の優しい王子。

 ディアナが求め、護りたいと思うものは、全てここにある。


「──あなたと共に生きていく。あなたが愛するこの国を、私も愛しているわ」


 ディアナの言葉を聞いたセイは、肩を抱く手に優しく力を込めて口を開く。


「そう言ってくれるあなたを、愛して良かった。僕の妃になってくれてありがとう、ディアナ。これからもずっと、傍で笑っていて」


 月の女神の返事は、青の王子の唇に溶けて。絡ませた指に触れた剣は喜びと慈しみの想いを伝えてくる。

 甘く優しいキスを交わし、二人はいつまでも寄り添っていた──。







第五章 「真昼の月」fin.

「暁の巫女 月の女神2」 完

本編完結です

良ければ番外編までお付き合い下さいませ

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