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これで完結となります。
「すっごい辛そうな顔してたけど大丈夫かな?」
「さあな、帰りの心配があるから戻って来てほしいけどな」
「もう、そういうこと言わないの」
「いいだろ別に事実なんだから」
「そういうのが問題じゃないの」
「そういうもんか」
「そういうもんなんだよ」
俺はそのまま佐久間絢音とかいうやつについて思いを巡らす。大人なくせに遅刻してくるし、ちかがいいといったとはいえ馴れ馴れしいし、ご飯を食べ終わったら世界の終わりのような顔をしてトイレに行くしなんなんだあいつは。何よりも遅刻してくるのが最悪だ。あの世界の掃き溜めをまとめたようなくそ男と同じに思えてしまう。
せっかくいい気分で飯を食い終わっていたのに。こんないい店を知っていたのは評価してもいいがそれだけ。なんでわざわざちかがあんなやつのために力を使わなきゃいけないんだ。
かといって俺が駄目と言ってもちかは一人で彼女の力になろうと頑張ってしまうのだろう。俺の時の様に。俺はあの時からちかを守ると決めたのだ。ならばちかがやりたいといったことを全力で手伝うだけだ。ちかの方をちらりと見ると心配そうな目で佐久間が向かったトイレの方をみていた。
「そんなに気になるか」
「うん、なんだかすごい追い込まれている様な気がして、心配なんだ」
「そうか、ヘアピンの持ち主と仲直りするか解決できるといいな」
「そうだね!」
ちかは優しい笑顔で答えてくれる。それを見た俺は自分の感情から目を背ける様に瞼を閉じる。ちかには解決出来るといいなんて言っておきながら、微塵もそんなことを思っていない俺に苦々しく思う。正直ちかが健康で元気なら他のことなんてどうだっていい。さっきの言葉もちかを落胆させないため。そこへ佐久間が帰ってくる。
「ごめんね、待たせちゃった?」
「いえいえ、食後の休憩がしたかったのでちょうどよかったです」
「そう、それじゃあいきましょうか」
「はい」
そういって立ち上がり外へ出るちかに俺も続く。俺はいつから他の人間がどうでもいいなんて思えるほど薄情になってしまったのだろうか。昔はもっと普通に思っていたはずなのに。
「さて、どっちの方角にいけばいいんだっけ?」
会計を終えて店をでるなり佐久間がちかに声をかけてくる。
「えっと、あっちの方ですね」
「あっちね・・・ていうか道案内は任せた方がいいのかしら?」
「そうですね、その方が早いです」
「そう、じゃあお任せするわね」
「はい」
そういってちかは一人先を進み、俺と佐久間は少しずれてちかの後を追いかける。
「ちか、疲れたら言えよ」
「うん、大丈夫よ、ありがと」
ちかは本当にいいやつだ気が利くし、誰に対しても誠実で優しい。それに物を探すなんて力まで持っている。誰か悪いやつに利用されないように俺が守らなければならない。それなのにこいつと来たら、ちらりと少し前を歩く佐久間に目をやる。そうすると佐久間と目が合う。
「何?」
「何でも」
「あっそ」
それきり沈黙が周囲を支配する。こいつの物を探すようにしたのは間違いだったかもしれない。探し物を見つけてくれ、とメールを送ってくるやつというのは以外と多い。その上で、俺が何通か連絡をやりとりして、ちかの体調が大丈夫そうならちかにやってもらっている。
本当はこんなことやらない方がちかの安全の為になることはわかっている。それでもこうやって少しでも予防線を張ってやらなければ、他の人間に自分から声をかけてでも助けにいってしまうだろう。ちかはそういうやつだ、だが、それでは危険すぎる。それで助けられた人間すべてがちかに感謝する訳ではないのだから。
こいつは連絡した段階では普通だったし、あの人の紹介でもあったからヘアピンなんぞを見つけるのを手伝っているが、それが終わったらちかの敵に回ってしまう気がしてならない。もしそうなったら・・・。俺は佐久間の背中を軽く睨み付けながら歩を進める。
「ここら辺だと思うんですけど・・・」
それから十分ほど歩いただろうか。絢音さんがお手洗いに行っている間に探し物を思いだし、浮かんでいた光景と周囲が一致し始める。そこは閑静な住宅街でお昼時だからか人の姿はほとんど見えない。時々犬の散歩をしているおばさまや大学生くらいで普通の顔立ちの人とすれ違ったくらいだ。大学生くらいの人は焦った様子で左の胸ポケットを押さえて走っていったが、なんだったのだろうか?後、胸ポケットがすっごいもぞもぞしていた気がする。
そんなことよりも、ここから数分もしない内に着くだろうから心の準備をしてもらっておかなくては、絢音さんが席を立ったときの表情が頭をよぎる。ほとんどの人は近くに来たと言うと、いぶかしみながらも喜びが溢れてきそうな顔をする。だけど彼女の場合はそうじゃない。昔の記憶と向き合うのが怖がっているように感じてしまったのだ。現に絢音さんの表情は固く強張っており、呼吸も不規則だ。
「もう会えるのね?」
「家に居ればですが」
「それもそうね、そういうのはわからないの?」
「はい、人とか動物とかの生き物は見えないんです」
「そうなのね、わかったわ」
そこから1、2分ほど歩いただろうか。一軒の見覚えがある屋根が見えてきた。その屋根の色は緑色に染められており、建物自体は他のものと大差がないが屋根の色のせいで少し目立って見える。
「あの緑の家ですね」
「あれが舞音の・・・」
「準備はいいですか?」
家の前に着き絢音さんに聞く。
「ええ、お願い」
軽く深呼吸している絢音さんを見た後、意を決してインターホンを押す。すると
『はーい?』
インターホンからは若い女性の声が聞こえてくる。
「すいません、飯田 舞音さんはご在宅ですか?」
『飯田 舞音は私ですが・・・どちら様ですか?』
「佐久間 絢音さんというお名前に記憶はございませんか?」
『・・・少し待っていてください』
インターホンが切れて待つこと数分、玄関を開けて出てきた舞音さんは赤ぶち眼鏡をかけており、髪は絢音さんと同じくらいの長さだが先の方でパーマがかかっているのかかなりふんわりしている。色はかなり濃い茶色で黒といってしまっても間違いないくらいだろう。上は黒のブラウスに下はスキニーのジーンズを履いていてとても似合っている。しかしその顔は感情が抜け落ちたように無表情でこちらを見つめている。
その視線の先は絢音さんで固定されているようにみえた。そのまま無表情で玄関を出て、ふらふらとこちらに歩いてくる。右手はなぜか拳を作っており、良く見ると探していたヘアピンが少し顔を覗かせている。
「なんで来たの?」
「なんでって、探したけど見つからなくて・・・それで偶々この子達が探せるっていうから手伝ってもらって・・・」
「そんなこと聞いてるんじゃない!!!なんで今更!やっと記憶から消えかけて来てたのに!!私の前に現れるの!!!」
無表情が突然崩壊し、激情に駆られた顔で絢音さんに詰めよる。絢音さんは絢音さんで訳がわからないというように困惑した表情で舞音さんをみながら後ずさる。舞音さんは逃すまいと詰め寄っていく。そのまま反対の家の塀に絢音さんの背中がつきこれ以上逃げられなくる。そこへ舞音さんが近づき更に言い募る。
「私にあんなことしておいて、あんな手紙を渡しておいて!ヘアピンだって返してきた癖に!今更どの面下げて会いにきたのよ!」
「わたし・・・そんな・・・」
「なによ!言ってみなさいよ!私が引っ越すってなってから全然遊ばなくなって!休み時間すら一緒にいてくれなくなって!私ともう会うつもりなんてなかったんでしょう!」
「ち・・・ちがう・・・そんなつもりじゃなかった」
「そんなつもりじゃない?最初はきっと私の勘違いだろう、電車の時にヘアピンを渡してきたのもきっと再会したときにまた渡し合うんだろっておもってたわよ!あの手紙を見るまでは!」
「てがみは・・・わたしのきもちをかいて・・・」
「あなたの気持ち?そうね最初はよかったんでしょうね、色々嬉しいことも書いてあったわ、そのときはわたしの勘違いだったんだって思い直そうとしてた」
「じゃあ・・・」
「後半を読むまではね」
舞音さんの目が鋭く今にも絢音を殺さんばかりに見つめている。絢音さんは涙を流しながら弁明をしようとしているが舞音さんの気迫に押されて口が上手く回っていない。
「後半何を書いていたか覚えてないの?本当?あなたって最低ねやっぱり私は間違っていなかったのね。いいわ忘れてるなら教えてあげる。わたしの引っ越しが決まってわたしのことが友達かどうかわからなくなった?引っ越しちゃったらどうやって付き合えばいいんだろう?挙げ句の果てにはどうして友達になったんでしょうって!?なんでそんなことを言うのよ!引っ越しちゃうのってそんなに悪いことだったの!?なんでよ!ねえ!答えてよ・・・」
「・・・・・・・」
舞音さんは崩れ落ちるように座り込んでしまい、涙を流し続ける。誰も声をあげることができない。私も当事者の絢音さんも場の空気をあまり気にしない幸也でさえも・・・
「・・・やっぱり何も言えないのね。さよなら」
突然に静寂が打ち破られ、それまで一人泣き続けていた舞音さんが唐突に立ち上がり涙を拭い家ではないどこかへ歩き差ってしまう。
「あっ・・・」
絢音さんが声を掛けようとするが舞音さんは止まらない。絢音さんはそのまま舞音さんがどこかへ行くのを止めるように手を伸ばしたまましばらくの間固まっていた。
私が確認しなかったから、少しでも手紙を見ることをしていれば、あの時寝ずにやっていればこんなことにはならなかったのに。ああ、思い出してきた。眠たくなってかなりぼんやりしてたとき、どうやって友達になったかとかそういう疑問から続きを書こうとしていたんだ。それで、そのまま書いてしまった・・・気がする。
私はまた失ってしまった、大事な親友を自分の愚かな行いのせいで。どうすればいい?何をすればなんとかなる?どうやれば許してくれる?もう、無理なのだろうか。
「絢音さん・・・」
「はは、私が悪かったのよはっきりしたわ。やっぱり私はダメなのね・・・これで私の探し物は終わりね。帰りましょうか」
「本当にいいのですか?」
「ええ、探し物のヘアピンのありかもわかったし会いたいって言ってた舞音にも会えた。これ以上何を求めるって言うの?自制心って大事だと思わない?」
私は俯いていた頭をあげ塀から背中を離し、気持ちを切り替えるようにちかちゃんへと訪ね返す。
「思いません。絢音さんが探したかったものは本当にヘアピンですか?」
一点の迷いも、優しさも厳しさもないじっとした目で私に訴えかけてくる。このままでいいのかと、舞音を追いかけなくていいのかと。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
私は沈黙を貫きちかちゃんを見つめ返す。私に何も間違ってない。堂々と目を合わせていられる。そう思っていたはずなのに、気がつけば目をそらしていた。思考がぐるぐる回り続ける。これでいいじゃないか、もう終わったんだ。このまま帰って履歴書のストックを作って、大学の残りのレポートを書いて寝て、再び同じ日常を迎えるだけじゃないかと。
「もうい・・・」「私には言っていなかった力がもう少しだけあります」
私が言おうとした言葉を遮り、ちかちゃんは決意したような顔で、槙くんはかなり驚いた顔でちかちゃんを見ている。一体なんなのだろう。もういいでしょう?
「そうなのね、私には言う価値も必要もなかったってことなのね。いいのよ、それで?」
「私が探し物をするときに触っている人の心を何となくわかることができるのです」
「っ・・・!」
「あなたの心はずっと自分を責め苛んで泣き続けていました。そんなあなたを助けようとしていたのが舞音さんとの繋がりでした。」
「そんな・・・」
「あなたの考えはもういいと言っているかもしれません。でも私にはわかるんです。あなたの心が助けて、と手を伸ばしているのを」
「そんなのわけないじゃない!きっと出任せでしょう!?ここで追いかけた方が面白そうだからとか適当な理由で言ってるんでしょう!?現実は違うのよ!そんな何もかも上手くいくなんてあり得ないんだから!」
「出鱈目ではありませんよ。あなたが一番わかってるんじゃないですか?」
「そんな・・・そんなことない。私が悪かったそれで終わりでいいじゃない。これ以上舞音に嫌な思いをさせることもない。お互いの日常に戻れるのよ!」
「お互いのことを考え続けて何もしない下らない日常がそんなに大事かよ」
「なんですって!?」
かっと頭に血が昇りそれをいったやつの方を見ると槙とか言うガキが吐き捨てるようにこちらを見ていた。
「なにか違ってんのかよ。あんたは舞音が大事なんだろ?これ以上近づきたいのに行けないのは拒絶されるのが怖いからだろ?でもよ、ここできっちりと話し合わずに別れて一生後悔する方が俺は怖いと思うぜ」
「・・・・・・・」
このまま一生、舞音と会えない・・・本当に?それでいいの?このまま一生・・・こんな気持ちのまま終わるなんて嫌だ!こんな舞音と喧嘩別れしたままなんて絶対に嫌!
「・・・探しに行ってくるわ、時間かかるかも知れないから先に帰っていて頂戴、お金は帰ったら必ず払うからお願い」
「ダメだ、帰ってくるまで同行してもらうって話だったろうが、今更勝手に変えようとするんじゃねえ」
「それに、私の力忘れたんですか?それに舞音さんはヘアピンを持っていかれました。後は簡単ですよ?」
「遅くなるかもしれないわよ?」
「たまには外泊すればお父さんもこっちを向いてくれるかもしれませんし、大丈夫です」
「問題ねえ」
少し気になったがそんなことは今はどうでもいい、早く舞音と話さなきゃ!
「じゃあいこうか!」
「それでは案内しますね。ちょっと急ぎます」
そういってちかちゃんはすごい早歩きで進んでいく。軽く走らないとおいていかれそうなほど早い。
周囲の家々が少しずつ元気がなくなっていくかのような、寂れた雰囲気になっていった。そこかしこの塀が壊れていたり、すれ違う人々の表情もどこかしら影が差している。
5分ほどいくとまだ昼間であるはずなのに薄暗い公園が見えてくる。すると、ちかちゃんが歩く速度を緩め、ついには止まってしまう。そして私の方へと振り向くと額には汗が浮かび、瞼はとても重そうだった。
「大丈夫?」
「はい、あの公園の中に彼女はいると思います。ただ、流石に力を使いながらは少し疲れました。なので私は少し休ませてもらっていいですか」
「ええ、ゆっくりしていて」
「俺がちかについてるから大丈夫だ」
「わかったわ、それじゃあまた後で」
「はい」「おう」
私は少し呼吸を整え覚悟を決め公園の鬱蒼とした薄暗い公園へと一人入っていく。公園の周囲は背の高さが2mほどもある垣根で囲われており、垣根の内側には大きな木々が何本も生えていて公園の内部に影を落とす原因になっていた。公園の中には遊具もいくつかあり、砂場やジャングルジム、ブランコ等懐かしいものが多くある。それらは所々錆びていて、一層この公園の薄気味悪さを助長していた。
耳に入ってくる音は木々の上に止まって鳴いているカラスの声のみだ。そんな中木の影に隠れるようにして設置されているブランコに舞音は俯いて座っていた。私はゆっくりと舞音へと近づき、小さな小さな声で舞音に話しかける。
「舞音・・・」
舞音は私の声が聞こえていないのか全く反応していない。
「舞音」
今度はもう少し大きい声で呼び掛ける。しかし、それでも舞音は微動だにしない。
「舞音!」
「何」
今度は返事が帰ってきた。ただし、その声音は恐ろしく冷たい。それは長年の宿敵を前にしているようで、今の状況がなんらそれに代わりないことを思い出させる。舞音は少し顔をあげ、前髪の隙間から私を睨んでいるのがわかる。それがとてつもなく恐ろしい。ここから逃げ出したくなる。そんな時、背中を押してくれた二人が大丈夫ときっと理解してくれると笑いかけてくれたような気がした。それを支えに堪え踏み止まり、舞音を正面から見つめ返す。
「舞音あなたと話したいことがあるの」
「何」
「ごめんなさい」
私は立ったまま頭を下げれる限界まで下げ、更に言葉を続ける。
「私のしたことを許して欲しいなんて言わない。ただ、少し話を聞いて、あなたと友達になれたこと、なったこと、友達でいたこと。一度だって後悔したことはない。手紙で書いてしまったのは徹夜で手紙を書いていて何を書いているかわからなくなって、友達になったときの気持ちを書こうとしてしまったから。休み時間はずっと手紙のことを考えていたから。引っ越しが近くなって遊べなかったのものも手紙を少しでも多く、たくさん書いてあなたに渡したかったから、舞音が好きだと親友だと、伝えたかったから」
「なんで、なんで今更そんな嘘つくの!?そんなことなかったんでしょ私のこと嫌いになってたんでしょ?ちゃんと言ってよ!わかってるから!」
「嘘なんかじゃない!舞音が引っ越しして、手紙くれなくて場所がわからなかったけど、探したんだよ!?親にも舞音の近所の人にも学校の先生にもクラスの他の子にも!でも誰も知らなかった教えてくれなかった!先生は知ってるみたいだったけど個人情報がどうとかで教えてくれなくて、卒業まで粘ったけどダメで・・・」
「そんな・・そんなはずない!」
「ほんとよ」
「そんな・・・そんな・・・それじゃあ私が、悪いんじゃない、確認の手紙を送ることだって出来たのに、はっきり言われることが怖くて、いつかだそう、いつかだそうって思ってる内に気がついたらこの歳になってた・・・」
「ううん、舞音は悪くない、私が悪いの。だけど、私が悪いのだけど、私はあなたと親友でいたい。もっと話したいの。駄目?」
「う・・うう、ばだじももっどばなじだいー!!!」
舞音は大粒の涙をこぼしながら踞ってしまう。私は近づき舞音を抱き締め全力で力を込める。舞音はもぞもぞと身動ぎをして頭を私の肩の上に出す。
「もう・・・苦しいよ、絢音」
「ごめんね、舞音」
「ううん、私こそごめん」
「これからもっと一杯話そう?」
「うん、私もずっと一杯話したかったんだ。今日泊まってく?」
「うん、泊まってく今夜は寝かさないよ?」
「もう、何言ってるのよ」
「ふふ」「はは」
そんな二人のいる場所だけ、鬱蒼とした暗い公園の中で周りとは違って光っているようだった。
「絢音さんは大丈夫かな?」
「さあな、でもあんだけ焚き付けたし大丈夫だろ」
「嫌いじゃなかったの?あの人」
「嫌いだったよ。でも・・・」
「でも?」
「なんだか放っとけなくてな。お互い好きなのにスレ違ってるってのがよ」
「幸也も優しくなったね」
「そんなことねえよ」
そう声をあげてしまったのは気まぐれ別に佐久間を助けてやろうとか思っていたわけではない。それでも、すれ違ったままは嫌だと思ってしまったのはちかの影響だろうか。
「それにしてもあの力のことまで言うとはな、他に知ってるのは親父さんくらいだろ?」
「なんでだろうね?ただ、私もなんでか助けてあげたい気持ちになっちゃったんだよね」
「そういうもんか。てかあんなにはっきりと気持ちってわかるものになってたのか?」
「ううん、何となくそうなんだろうなーって思って言ってみただけ。秘密だよ?」
「・・・」
土壇場でそんな嘘がつけるちかを改めて見直す。
「流石だな」
「ふふ、助ける為だったんだからいいじゃない。万事結果オーライってね」
「そういうもんか」
「そういうもんよ」
それから数十分後絢音さんと舞音さんが手を繋いで並んでこちらに向かってくる。しかも絢音さんは笑顔で大きく手まで振っている。
「これは帰りは二人かな?」
「そうかも知れねえな」
そんな二人の髪にはお互いのヘアピンが本来の在りかだと主張するように光って見えた。
Fin
短い間でしたが、ここまで読んでいただいてありがとうございます。
ここがよかった悪かった等の感想があれば1行でもいいのでお願いします。
本当にありがとうございました。




