3-7 エルフ国の王女アリー
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ごめんなさい。
「さて、お茶にするのじゃ。メルシー伯爵も同席せよ」
「はい、姫様」
不良クラン『闇の帝王』と子爵から言いがかりをつけられたが、姫様アリーのおかげで撃退できた。
彼らと面会した部屋を出て、冒険者ギルドのロビーに備えられたテーブルでお茶にする。
姫様アリー、メルシー伯爵、アリーに隠れてついて来ている執事とメイドたちは、ごく普通にしている。
だが、俺、長身のレイア、ネコ獣人カレン、ちびっ子魔法使いエマは、姫様アリーが外国の王族と聞いて、かなり戸惑っていた。
お姫様と伯爵様がお茶をしている所に同席して良いのか?
俺たちは席に座らずにいた。
「何をしておるのじゃ? ナオトたちも座ってお茶にいたせ」
「いや……。えーと、アリー様と伯爵様と同席するなど、恐れ多いです」
俺が言葉遣いを改めるとアリーは悲しそうにした。
「ナオトよ。頼むからそのような改まった口調は止めにしてくれ。我らは同じパーティーメンバーであろう?」
「しかし……。アリー様はエルフ国のお姫様でしょう? 知ってしまった以上は……」
「わらわは悲しいぞ」
アリーは心底悲しそうな顔をした。
うむむむ……。
俺的には今まで通りの言葉遣い、今まで通りの人間関係で良いのだけれど……周りがね……。
自国のお姫様に対して、平民が普通に話している。
エルフ国の人が見たらどう思うかだよね。
そう考えるとアリーと話し辛い。
俺が考え込んでいると、アリーの隣に座るメルシー伯爵が助け舟を出してくれた。
「ナオト殿の事は報告を受けています。色々と気を遣っているようだが、気にせず今まで通りアレクサンドラ姫に接して下さい」
「しかし……」
「姫様も年の近い友人が出来て嬉しいのです。今回、身分を明かしたのは、自分の友人を守りたいと姫様が思われたからです。それが原因で友人と心の壁が出来てしまっては、姫様が可哀そうではありませんか」
エルフ国外交官のメルシー伯爵が、そう言うのなら……。
まあ、俺もアリーとは普通に会話する関係でいたい。
「なるほど……。わかりました。そうおっしゃっていただけるのでしたら、アリーとは今まで通り付き合います」
「そうして下さい。姫様の事をよろしくお願いします」
俺とメルシー伯爵の間で話が付いたので、全員席について普通に話しだした。
「アリーはどこかのお嬢様だと思っていたけれど、本物のお姫様とは思わなかったよ」
「うむ。リーダーのナオトには、打ち明けても良かったかもしれぬのじゃが。まあ、身分を隠して行動するのも楽しくてのう」
アリーはいたずらっ子のように笑った。
まあ、王族なんて色々窮屈だろうからな。
一般人になりすますのも楽しいのだろう。
「しかしよう。アリーがお姫様とはな。まあ、どこかのお嬢さんだとは思っていたけど、驚いたぜ!」
「ニャニャ! お隣のお姫様だニャ!」
長身レイアとネコ獣人カレンが、今までと変わらない口調でアリーに話しかけている。
アリーは嬉しそうだ。
「うむ。ティターン族と猫人族には、世話になっておるの」
どうも話しぶりからするとアリーの母国エルフ国とレイアとカレンの種族は交流があるらしい。
俺はメルシー伯爵にその辺りの事を聞いてみた。
「ここ帝都ピョートルブルグの北に海がある事はご存知ですね?」
「ええ、船で通りました」
「海を渡った所は人族以外が住む地域なのですよ。エルフ族、ティターン族、ドワーフ族、獣人各種族が住んでいます。」
「へえ、各種族で国があるのですか?」
「いえ。国と言えるのはエルフ国だけですね。他は種族に分かれて、バラバラに居住しています。対外的には、エルフ国が北の大地一帯を治めていて、その中に各種族が住まっている事になっていますが、それぞれ勝手気ままです」
メルシー伯爵は、苦笑しながらレイアとカレンをチラリと見た。
まあ、二人と初めて会った時の格好を思い出すと、何となくわかる。
二人は毛皮を巻き付けた蛮族ルックだった。
恐らく国と言う単位で物を考えられる程、文明的な種族ではないのだろう。
「すると……エルフ国があって、各種族の自治区があると?」
「その理解であっています。まあ、基本的には各種族が勝手気ままに暮らしていますが、人族の国と戦争する時は一つにまとまります」
「人族の国と戦争があるのですか?」
「ええ。ここ帝都ピョートルブルグは、聖エーメリッヒ帝国の首都です。エルフ国には近いですからね。何度も戦争になっていますよ」
「へえ……」
そう言う歴史があるのか。
言われてみれば、新メンバーを採用する時に、『人族以外でもOK』ってわざわざ条件を付けたな。
過去に戦争した相手だから、エルフや獣人とはパーティーを組みたくない人が多いのかな。
エルフや獣人側はどうなのだろう?
人族に忌避感や嫌悪感はあるのかな?
「エルフ族のみなさんは、人族の事はどうなのでしょう? 人族を嫌う人もいますか?」
メルシー伯爵は難しい顔をした。
「そうですね……全体としては人族であっても、特に悪感情はないですね。エルフ国に人族の商人も大勢訪れますから、大事な商売相手と言う感じでしょうかね。ただ、エルフ族全体の二割くらいは、人族嫌いがいますね」
やはりいるのか。
まあ、戦争をした相手なら仕方がない。
二割なら少ない方なのかもしれない。
レイアとカレンにも同じ事を聞いてみる。
「なあ、ティターン族や猫人族は、人族が嫌じゃないのか?」
「いや。ティターン族は、種族で好き嫌いはねえぞ。人族は服装が華やかで、俺は好きだけどな」
レイアから意外な女子力発言が出た。
華やかな服装ね……。確かにレイアが着ていた蛮族ルックに比べれば華やかだよな。
今度レイアに服を買ってやろう。
「ニャ! 猫人族の集落には人族の商人が来ていたニャ。いつも美味しいお菓子をくれたから、人族は大好きニャ!」
それって餌付けじゃん!
まあ、でもわかるわ。
猫人族って、猫耳や尻尾があるから、ちょっと動物っぽい。
きっとその商人は猫好きだったのだろ。
子供の猫人族がニャアニャア言いながら集まって来たら、お菓子の一つもあげたくなるよな。
二人が人族に悪感情を持っていない事がわかって、ホッとした。
「それでアリーは、何でエルフ国から出て冒険者になったの?」
俺は気になった事をアリーに聞いてみた。
アリーはエルフ国のお姫様だ。
エルフ国がどんな国かは知らないが、冒険者なんて荒くれ仕事をやらなくても良いだろう。
「うむ。修行の為じゃ。エルフは成人するまでに諸国を旅して、修行をするのじゃ」
「修行? 知見を広げるって事? それなら外国へ遊学すれば済む事だろ?」
「ナオトよ。そうではないぞ。王族たるもの民を守る力が必要じゃ。知見はもちろん必要じゃが、わらわは、戦う力を身につけたいのじゃ」
ああ、ノブレス・オブリュージュ、高貴なる義務ってヤツか。
「戦う力……。それで実戦経験を積むために冒険者に?」
「そうじゃ。身分を隠したのも修行の為じゃ。父上が執事やメイドをつけてよこしたが、あやつらと一緒に戦っては、わらわの修行にならぬゆえ」
執事とメイドね。
普段は姿をまったく見せないのに、アリーの世話をする時だけ、どこからともなく現れる。
「執事さんとメイドさんたちって強いの?」
「エルフの選りすぐりじゃぞ。強いに決まっておる。エルフ族は長寿だからのう。あやつらは二百歳をとうに超えておる。二百年を超える戦いと修行を積んだ者たちじゃ」
「それは恐ろしいね……」
チラリと執事の方を見ると、彼はアリーにティーポットから紅茶を注ぎながらニコリと笑った。





