表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ひまわり

作者: つぼみ



髪を切った。


失恋したから。




































「思いっきりばっさりお願いします。」

昨日、8か月付き合った伸介に振られた。実質ちゃんと付き合ってたのは4か月くらい。後半4か月は冷戦状態だった。






肩より長くて、緩い天然パーマがかかった栗色の髪。大学入ってからずっと伸ばしていた無傷の髪。

この髪が好きだって、一緒に寝てたシングルベッドの中で愛おしそうにたくさん撫でてくれた。

「俺、浮気しないから。」

そういえばそんなことも言ってたなあ。

ほんと、それを信じた私がばかだった。






シャンプー中は目を閉じているから、顔とかしぐさとかが浮かんできて、耳の中にかすかに残っている優しい声が聞こえてくるような気がしてくる。洗ってくれる美容師さんの手が伸介の手に思えてきて、4か月の冷戦期間を経た末に別れたから、昨日は虚しくて泣けもしなかったのに、不意に涙が出そうになった。






真っ白なケープをかけられ、鏡の中の自分と真正面から向き合う。

今まで長い髪で隠していた丸い自分の輪郭が露呈する。自分の精神状態が見え透いてしまう気がするから、この瞬間は結構嫌いだ。



私、こんな顔してたんだ。ぶっさ。



伸介に「私のどこが好き?」なんてありきたりなことを聞いた時、「顔」って即答されたのを思い出した。顔ねえ、顔かあ~ 具体的にひまわりのこういう性格が好きとか、中身のことについて言ってほしかったよ~って呆れて笑ったのを思い出した。

でも好きな人の好きな顔に生まれてよかったって、ちょっと思ったのも思い出した。






4か月の冷戦にとどめを刺したのは私だった。

昼休みに泣きながらロッカーで伸介に別れたくないって電話した後、なんだか突然、執着してる自分がばかばかしくなった。

仕事終わって「別れましょう」ってメッセージ送ったら、向こうから「ごめん」だって。


なんの意味のごめんだよ。ほんとに呆れる。






意味わかんなかったけど、意味わかんないくらい好きだった。

もやもやする。まだ好きなのかも。家に帰ったらお風呂に入って泣こう。





ドライヤーの音が止まる。6年ぶりの首筋がでるくらいのショート。





鏡の中の自分と向き合う。

意外と私、かわいい顔してるかも。








外に出ると冬の冷たい風が吹きつけてくる。

思わずいつもの癖で髪を抑えようとして、手の平が首に触れる。


ちょっと可笑しくて一人で笑ってしまう。





このまま映画でも見に行こうかな。





















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ