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素人があえて伝えるすっごくユルい小説の書き方  作者: 千場 葉
§2.ものがたりをえがこう
7/21

2.もうそうしよう


 妄想(もうそう)です。いつも多くの人が毎日していることです。

 「そんなものは妄想だ」とか「妄想はやめろ」とか、まるで全くよくないことのように言われますし、ちょっと調べただけでも出てくるワードは「精神医学」「病的」など、かなり後ろ向きです。言葉の響きもなんだかエロいです。

 ですが人間のシステムを舐めちゃいけません、必要だから行っていることです。妄想、空想癖のある人は、問題解決に向くとの調査結果もあります。それに何より、これなくしては「物語」を生み出すことなど出来ません。


 妄想と呼ぶのがお嫌なら空想でもかまいません、やることは同じです。

 では、前回の「1.かきたいもののみつけかた」で頭に浮かべた“書きたいもの”のふよふよしたものをもとに、さっそく「物語」の形を作っていくことにしましょう。


 ここからの各行程はかなりの時間がかかります。

 あせらずじっくりと、一つの行程に無制限に時間をかけて進んでいってください。



 (1)かっこかりのせかいをうみだそう


 まず、書きたいものの舞台にふさわしいと思う、人物(仮)、世界観(仮)を頭に浮かべてください。ひょっとすると多くの方は、前回からすでにいくつかを頭に浮かべていたかもしれません。そういう方はそれをベースにしてかまいません。ふよふよした“書きたいもの”に、世界を与えましょう。


 前回あなたが“書きたいもの”に抱いたのが人物なのか、世界なのか、何かしらのテーマなのか、それはどんなものであっても、どんなカケラであってもかまいません。思い描いたもの、その中の一番大きなものを軸に世界を構築しましょう。


 高校生の主人公を思い描きましたか? ならば学校や、そこにいる友人や教員達を思い浮かべましょう。

 どこか遠くの異世界を思い描きましたか? ならばそこの文化や、起こりうる問題などを思い浮かべましょう。

 現実的な問題や、哲学的なテーマを思い描きましたか? ならば主人公にふさわしい年代の人や、そのテーマが一番見合う世界を思い浮かべましょう。


 大事なことは、その「一番大きな軸」となるものに合わせ、それにふさわしいと思う舞台や人を創造することです。何もメモを取ったり、リストを作ったりするような必要はありません。明確なストーリーもまだ必要ありません。全て頭の中で、もやもやとした映像を作るようにして行ってください。


 おぼろげながらに主人公(仮)が生まれ、その人を包む世界(仮)が生まれたら、あなたの物語は形を成しつつあります。次へと進みましょう。


 

 (2)しゅじんこうをかつやくさせよう


 あなたの主人公(仮)が、一番輝く瞬間を頭に浮かべてください。

 アクションものなら戦っている時の決め技や、戦闘途中や戦闘前の口上などでもいいですし、一般的な現代ものなら「常識を逸脱した瞬間」など、主人公(仮)が大きく感情を揺さぶられるシーンでもいいですね。

 “活躍”と書きましたが、極端に言えば死亡するシーンでも、死亡したあとで仲間に何かを言われているシーンでもかまいません。その人物が人物として、一番輝いているシーンならなんでもいいのです。

 あなたがいつも言っている口癖や、いつか言ってみたいと思っているセリフなどからも、ひょっとするとシーンは生まれるかもしれません。


 「終わりから作るんだ」というような作家や映像監督のお話を耳にしたことがあると思いますが、言わばこの(2)は、頭の中でそれをやっている行程です。

 あなたがこの物語を通して、「一番描きたいシーン」を作っている、頭にセットしているということです。


 シナリオとしてシーンだけを思い浮かべてもいいですが、ここは出来うる限り「人物」を頭の映像の中に置くようにしてください。それが後に「シナリオに耐えうる魅力的な人物達」を生み出すことに繋がります。

 書き手の信条として「シナリオの流れ重視」の方だとしても、多くの読み手のみなさんは「人物を通し、人物と共にシナリオを見る」ということを忘れないようにしましょう。



 (3)はじまりのぶたいをととのえよう


 (2)の強烈なシーンが頭に描けたら、今度は物語の最初の最初、スタート地点に主人公を置きます。

 (1)と(2)を通して、じっくりと映像を作っていれば、すでに頭の中に材料は(そろ)っているはずです。(2)に相応しい主人公(仮)の容姿や性格も、その世界観も、(1)の時よりはっきりとしてきているはずです。

 その舞台を(2)でやったように頭の中に構築してください。


 じっくり、じっくりと、今度は主人公よりも、やや強めに「その周りの風景」を想像します。

 物語のスタート地点、「風景」が構築できたら(4)へと進みます。



 (4)いっぽんにつなげよう


 ――いきなりですが、「あなたの物語」は完成します。

 言わばプロトタイプ、ベータ版。そういったものですが、あなたの物語は一応の完成を見ます。


 (3)で思い浮かべた「風景」に主人公を置き、そこから(2)の場面まで、お話を“一本につなげる”それだけです。


 「そんな無責任な」と思われる方が大半だと思いますが、本当にそれだけです。そしてあなたは、現実にそれを行うことが可能です。


 上記に“無制限に時間をかけて”と書きましたが、その理由はここに有り、これから数時間、更に言えば数日間数ヶ月間、実際に執筆に入ってからもを通して、(3)から(2)に至るまでの場面を延々と頭に思い浮かべ続けることになるからです。

 それは意識的であり、自動的にでもあります。


 (2)で思い浮かべた場面の印象が強く、あなたの“書きたい”と思う気持ちやわくわくした気持ちが強ければ強いほど、それは()()として四六時中、あなたの頭の中に展開していきます。


 『(3)のスタート地点 → ? → ? → ………… → (2)の見せ場 → ? → エンディング』


 じっくりと妄想が進むほどに、一つ一つと「?」の部分が(2)でやったような形で頭に浮かび、そこで新たに生まれた人物や展開が、(2)に至るまでの道を切り開いていきます。

 天才の発想や小説の才能などは特に必要はありません。これは人の脳がストーリーや映像に対し、凄まじいまでの「補完」の機能を持っているというだけのお話です。


 「?」がめくれ、シーンが姿を現していくのは意識的に妄想に入れば入るほどに加速しますが、時には閃きのように最初から最後までが一瞬にして繋がる場合もあります。そしてその場合は、かなりの確率で良い作品が仕上がります。


 じっくりじっくり、丁寧に時間をかけて焦らずにいきましょう。

 『妄想』のコツは、最初のシーンからを映画やアニメーションのように映像を通して再生していくことです。それは深く入るほどに周りの風景や音を消し、数十分数時間にも及ぶ長時間の集中を可能にします。


 うまくいかなくても安心してください。(2)を行ったあなたは既に脳に「物語」を発注しました。例えあなたが妄想を離れ、まるで別のことをやっている時でさえも、あなたの脳はじわじわと単独でこの(4)を行っています。(そのやっている別のことがきっかけとなり、「?」が剥がれることもよくあることです)

 完成は約束されているようなものですので、あなたのペースで、ゆったりと脳内劇場に浸ってください。



 ※この『妄想』の行程は、小説創作の中でも最も楽しい行程ですが、出来る限り時と場合を選んで行いましょう。乗り物の運転中は危険です。また電車の中などでも、深入りすれば電車を「降り過ごす」ことになります。(千場はドアの前に立っていたのに開いたことに気づかず、そのまま降り過ごしたことがあります)





 『妄想』が(4)にまで至れば、際限がありませんので並行して次に進みます。

 スタート地点、見せ場、エンディングぐらいまでが頭の中でいつでも再生出来るようになっていれば、もう問題はありません。


 さぁ、次回からはいよいよ、パソコンの前に座りましょう!


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