1.かきたいもののみつけかた
(1)じぶんのすきなものをみなおそう
あなたが全くと言っていいほどに物語を作ったことがなければ、おそらく最も簡単な見つけ方はここにあります。あなたが好きなことはなんでしょう? 人は好きなこと、夢中になれるものに関しては詳しくなり、得意になります。
その物事の実力が、人と比べてどうのは気にしなくても大丈夫です。あなたが好きであることが重要なのです。
「なろう」では、ゲームのような世界観の『異世界』ものが溢れていますが、その理由の大きな一つとして、それだけ“ゲーム”を好きな人が多いということもあるのでしょう。
また、“異世界モノ”そのものが好きという人も、それだけ多いということでもあるのでしょう。
人の脳は自分の好きなものを語ることに、とても高い幸福感や快楽を覚える構造をしています。今これを書いている千場も、「小説」について語っているので、もちろんとても高い幸福感です。
幸福感は書くことの楽しみにつながり、後の執筆の時期において無理の無い持続力を生みます。
今の自分の中に、好きなものはないかを探してみましょう。
それは“かつて”好きであったものでもかまいません。あなたのメモリは、まだその頃の気持ちを覚えてくれているはずです。
(2)きになるものをきにしよう
毎日の生活の中で、「ん?」と気になるものはありませんか?
どんなにつまらない、ほんの些細なものでもいいのです。むしろ他の人がつまらないと思うような、気にすることこそ意味の無いものの方が拡がりを生みます。
それは日常の不満であったり、生物の不思議であったり、今朝見た謎過ぎる夢であったり、どんなものでもかまいません。
あなたが気になって、「なんでこうなんだろう?」と思えればそれでOKなのです。
こちらは(1)とは違い、ほぼ永続的に使っていける見つけ方です。
“はじめに言葉があった”とは有名な言い回しですが、小説においては“はじめに問いがあった”が福音を呼び込むと言って過言では無いと思います。
SFの根本はいつも“もしも”から生まれると言われますが、それはSFのみに限定されることではありません。
ぱっと思いつく気になること、長年思っている気になること(こちらの方が望ましい)が周囲にないか、頭を巡らせてみましょう。
(3)ぐうぜんをきたいしよう
こうすることでこれが出来て、いついつまでにここまで出来て、こうなって問題無く完成する――
それはすでに在るものに対しての生産の図式であって、創作に当てはめるにはいささか以上に無理のある工程です。
創作において最高とも言える面白いところは、まさに偶然が何もかもを吹き飛ばすように時に訪れ、全ての図式を飛び超えてしまうところにあります。それは遭遇した本人には、必然だったようにも錯覚するほどです。
でも、そんな“偶然”なんていつ来るかわからないものに頼っていいのか?
創作に関わるものとしては、面白いのではっきりと「イエスッ!」と答えたいところですが、ここは一つ、擬似的な“偶然”を引き起こす手段を記しておきましょう。
それはいわゆる『合体事故』にあります。
わかる人にはわかる言い回しだと思いますが、二つのものを掛け合わせた際、なぜか予想外のものが出来てしまうアレです。
小説で言えば、『A』という“なんとなく書きたいもの”が手元にあった時、そこにまったく違うところで生まれた『B』という“書けたらいいなと思うもの”が入ってしまい、なぜか“強烈に書きたいもの”『ぬ』が生まれていたという感じでしょうか。
実は実際の歴史上でも、多くの分野での革新的な発見や発明はいつもこのパターン。畑違いのところからもたらされた謎技術によってというパターンがお決まりでした。(もしくはなんらかのセレンディピティー)
つまるところ、上記の(2)を繰り返してたくさんの(2)を中途半端にでも持ち、(2-A)、(2-B)、そこに(1ーA)などが合体していくと―― 『ぬ』が生まれるかもしれません。
今、あなたの好きな名作を思い返してみて下さい。そこには必ずと言っていいほどに「なんでこんなの入ってるんだろ?」というような他分野同士の合体あとが見つけられるはずですよ。それもごく、気づかないほどに自然な形で。
上記(1)~(3)の中に、ヒントになりそうなものはありましたでしょうか?
この段階では、なにかふよふよとしたような「これかな?」という感じでかまいません。
“書きたいもの”自体は形を持たず、まだ持たせてもいないのですから、ふよふよとしたとりとめもないもので当然です。
あなたがなぜか心惹かれる―― そんな強さが有るか無いか、判断材料はそこだけでもいいのです。
次回は、その「これかな?」という“書きたいもの”を、「あなたの描きたい物語」に変えていく方法をお話ししましょう。