体調崩して寝込んでいるときにアニメなんか観てんじゃねぇぞコノヤロー!! 〜〜作家は風邪の子、元気な子♡〜〜
〜〜11月某日〜〜
急に冷え込んできた最近の気候の変化による影響なのか、なろう作家の青年:風野山 大地はトウキョウから自宅に帰還して早々体調を崩す日々を過ごしていた。
既に医者には行ったモノの不規則な生活がたたったのか、この日は精神・肉体ともにとうとう限界を迎えることになってしまったようだ。
このままでは仕事に支障をきたすどころか、日課の小説更新すらままならなくなる……。
そう判断した大地は会社に休む事を伝え、家で大人しく撮りためしていたアニメ観賞をすることにした。
今回大地が選んだのは、異世界転移した主人公の青年が一緒に転移した幼なじみの女の子や現地の女性達を相手に、世界を救うための子供達を作る事に励むアニメ作品であった。
「俺は原作ゲームの2作目をプレイしているからそっちの方がキャラもみんなエロ可愛いし、それをアニメ化すればえぇやん?と思っていたけど……このチョロ可愛い獣耳お嬢様は普通にアリだな!」
その後も「話数が進むごとにエロいシーンがおざなり、っつーかギャグチックになっていくけど、これはある意味話の内容自体で勝負している!と、評価出来ない事もない……!!」とか「この純朴少女は無自覚とはいえ、なんでいきなり卑猥な事を言い出すようになったんだ?」などと、一人で呟きながらアニメ観賞していた――そのときである!!
「やい、出てこい!"コンセプ☆三郎"!!……ここにいるのは、分かっているんだぞ!」
突然の怒鳴り声を聞いて、大地の心臓がドキリ!と跳ね上がる。
何故なら"コンセプ☆三郎"とは、大地が『小説家になろう』で使用しているHNだったからである。
耳を研ぎ澄ますまでもなく、大地の家の外からは一つや二つではない怒濤の喧騒が聞こえてきていた。
大地が恐る恐るカーテンを開けて外を覗くと、そこには信じられない光景が広がっていた――!!
「は、はぅあっ!?」
なんと、大地の家の前には憤怒の形相を浮かべた大量の人々が、今にも暴動を起こしかねないような勢いで押し寄せていたのだ――!!
彼らは、"コンセプ☆三郎"への怒りを口々に叫ぶ。
「ウオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!さっさと、新作の短編かエタっている作品を書きやがれゴラァッ!!」
「殊更面白くはねぇけど、テメェの香ばしい作風成分が今のなろう界隈には不足してんだよこのタコッ!」
「チャーハン、おかわりィィィィィィィィィィィィィィッ!!」
暴徒達の正体は、最近ろくに作品を執筆しない大地に憤慨したなろう読者の集団であった。
その様子を見ながら、顔面蒼白になった大地が盛大に慌てふためく。
「な、なんだってんだ!?ど、どうして俺の住所が特定されてやがる!?」
大地は知る由もないが、ネットワークシステムから個人情報が漏洩した……わけではない。
ただ単に、大地は"コンセプ☆三郎"としての自身の作中や宣伝用のSNSアカウントにおいて、自分の近所の情景やイベントを詳細に描写&報告しまくっていたので、容易に特定されただけである。
だが、今さらその真実に到達出来たとしてそれを悔やんだところで、時既に遅し。
突然の事態に戸惑いながらも、大地は瞬時に打開策を思いつく――!!
「……よし!こうなったら、超常的なオカルトの力を借りて速攻で体調良くして小説を書き上げるぞ!!」
そう結論づけた大地は、すぐさま行動に移る事にした……。
方針が決まった大地は、早速こういったオカルト関係に詳しかった大学時代の友人:静寂塞 憐徒に電話をかける。
卒業してから1度も連絡&再会をしていないうえに、平日の真っ昼間からの連絡という形で不安もあったが、即座に電話に出てくれた事に大地は安堵すると同時に、(コイツ、今何しながら生活しているんだ……?)という軽い警戒心を抱く。
だが、今はそのような事を気にしても仕方ないので、話を切り出し始める事にする。
「あ〜、もしもし。俺、大地だけど」
『この世は陰と陽、光と闇、チョコ◯ニッシュとコーヒー◯ニッシュのように全てが二律背反した要素によって構成されている。……俺に何の用だ?』
開口一番で大地の耳に入ってきたのは、古今東西のオカルトに対する造詣が深いだけではなく、自分の食べ物の好物を物怖じする事なく切り出す事が出来るという、知的さと剛胆さの両方を兼ね備えた憐徒の一言だった。
(流石プロのオカルトマニア。……やるじゃねぇの!!)
内心で舌を巻きつつも、精神的にマウントを取られたくなかった大地はそれをおくびにも出さずに説明をし始める。
「実はこういった理由から、今すぐにでも風邪を治さなきゃいけないんだが……何か良い策はないか?」
『策、か……難しいところだが、全くない訳ではないな……!!』
憐徒の発言を受けて、今度ばかりは驚愕や歓喜の声音を隠しきれない様子で尋ねる――!!
「な、何ッ!?それは一体、どんな方法なんだ!?」
『ひとまず、落ち着け。……そうだな、お前は『小説家になろう』というサイトで小説を書いているらしいから"四神相応"という言葉くらいは知っているな?』
「"四神相応"っていうとアレだろ?確か、東西南北にそれぞれドラゴン・グリフォン・マンティコア・アイアンタートルの四体の聖獣を配置して、その強大な力で土地を上手く治めたりするっていう……」
『そうだ。今回はその四聖獣の力を内部に取り込む事によって、病の気を鎮める方法を選ぶ事にする』
憐徒の言うように、土地を鎮めるほどの強大な力を秘めた四聖獣の力を内部に取り込めば、確かに風邪の一つや二つなどすぐに雲散霧消するに違いない。
だが、それをするに当たって大地には、現実的に大きな壁が立ちはだかっていた。
「……いや、現実問題として単なる一般人に過ぎない俺が、どうやって四聖獣の力なんて入手すれば良いんだ?ドラゴンやらマンティコアを相手に出来るほどの戦闘力なんて俺にはないし、ハロワでそういうハンターを募集する金なんて、俺は使いたくないぞ?」
確かに三年前に多くの異世界や平行世界と繋がり、怪異や魔物・異邦人が犇めくようになった現在の日本でなら、かつては幻獣とされていたドラゴンやマンティコアといった存在を見つける事は出来るかもしれない。
けれど、そのような異界の生物は現在高値で取引・もしくは政府のもと厳重に管理されているため、大地のような平民には手の届かない代物なのである。
このまま小説の更新を断念し、外部の暴徒に土下座した後に大人しく家でアニメを見ながら養生するしかないのか……と、大地が諦めかけていた――そのときである!!
『何を諦めかけている?……お前は一般人である前に、"なろう作家"であるはずだろう?』
「一般人である前に、"なろう作家"……?俺は確かにそうだが、それがどうした……!?」
そこまで口にしてから、何かに気づいたように驚愕の表情を浮かべたまま目を見開く大地。
それこそが答えだと言わんばかりに、憐徒はこの電話のやり取りの中で初めて喜色を浮かべた声音をしながら、大地が導きだした"正解"を口にする――!!
『そうだ。御察しの通り、何も現実でお前が強大な四聖獣を相手にする必要はない。……お前が執筆する小説の中で、自己投影した主人公と四聖獣なヒロイン達がイチャコラしながら、彼女達の力を取り込んでいくラブコメ作品を書けば、万事解決だ……!!』
憐徒の発言を聞いた大地に、凄まじい衝撃が走る――!!
「は、はぅあ!?……た、確かに、本物の"四聖獣"ほどの効能は得られないかもしれないが、風邪を治すだけならそれだけで十分ではある……!!だ、だが、ドラゴン娘やグリフォン娘はまだ角や翼が生えた女の子で通じるし、マンティコア娘というのも何かのライトノベル作品で上杉謙信として出てたからまだ分かる、というか普通に好き。何ならいつかマンティコア娘を作品に出してみたいなり……。という気持ちがあるからOK!なんだが、アイアンタートル娘はどうする!?甲羅を背負った女の子を可愛く描写するには、滅茶苦茶グラマラスな体型に設定する、とか安易な手段で乗り切るしかないんじゃないのか!?」
もしくは、その聖獣の特性にちなんだ習性などを上手く性格に絡めて可愛さアピールに繋げるしかないのだが……現在の体調不良で頭が朦朧としている大地にはそのような知的な作業は難しいと言わざるを得なかった。
それに対しても動じる事なく、冷静に憐徒は答える。
『ぬ〜べ〜に出てきた爆乳で勝負好きな河童お姉さんは、良かっただろ?』
「確かに」
事態は一気に解決の道を辿り始める――!!
『まぁ、もしもそれで行き詰まりそうなら、モン娘路線は諦めて"聖獣"の力を宿した四人の巫女さんとイチャコラする……っていう話でも良いと思うがな?』
「発想がまさに天才のそれだわ!……ありがとう、憐徒!これで死中に活路を見出だせそうだぜ!!」
『ふっ……何、大した事ではない。ゆえに、礼などいらんさ』
「おぅ!そんじゃ、今から速攻で執筆に取り掛かるからまたな!」
『……』
そう言って大地は憐徒とのやり取りを終えると、すぐさま執筆する事を決意する――!!
「執筆するにあたって、まずやらなきゃいけない事は〜……これだな!!」
――数時間後。
そこには、『これも登場人物の性格とかを決めるための貴重な資料!』などと口走りながら、何故か『不思議な力で17歳くらいの美少女に性転換させられた実の父親と、そういう卑猥な事をする事になった青年』の過激な成年漫画を手に取った挙げ句、ベッドの上で精魂尽きた様子の大地の姿があった。
この有り様では既に風邪を更に拗らせているのは明白であり、最早助かる見込みや小説を更新する手立て、暴徒達を押さえる奇跡など万に一つもないだろう。
だが、大地は絶望的な現実を前にしているにも関わらず、幸福そうな笑みを顔に浮かべていた――。
「しゅ、しゅごかったなり〜♡」
その更に30分後。
我慢しきれなかった暴徒達が玄関を破壊し尽くし、大地の家へと押し寄せてくる事になるのだが……。
それはまた、別のお話である。
〜〜おしまい♡〜〜




