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JKのアタシが異世界転移したワケなんだけど、チートなのは相方の方でした 作者:梅雨空あんこ
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第30話 『さて、どうしたものか』


 さぁ、大変な事になったぞぉー。
 アイネからとんでもない相談をされてしまった。
 相談内容は『恋のお悩み』について――と来たもんだ。


 あの気位の高くて三度の飯より『いいから、騎士道精神だ!』みたいなスポ根お嬢様が、そんな乙女チックな悩みを抱えているとは思いもしなかった。
 とても断れる空気じゃなくて、アタシは条件をつけた上で『協力します!』と、頭を激しくヘッドバンしてしまったわけだけと。
 元の世界に帰りたいって散々言ってるくせに、どうしてアタシはこんな面倒事に首を突っ込んじゃうんだかなぁ……もう。
 でもその代わりアタシが出した交換条件で、アイネから『スパイ』呼ばわりされる事も、理不尽に武器を突きつけられる事はなくなったわけだ。
 これで一安心、晴れて屋敷内外を大腕を振って歩ける。

「それにしても……」

 今日の仕事を全て終えたアタシは、使用人仲間達と夕食をとった後、自室に向かって歩きながら顎に手を当てて呟く。
 あのアイネがフジサキに一目惚れするとはねぇ……。
 アイネの話から推測するに初対面の時の出来事がハートに火を付けたっぽいよな……。
 槍を素手で受け止められたのがよほどショックだったのか、アイネはその時の衝撃を恋愛感情と錯覚してるんじゃないか?
 たぶん、ストックなんとか症候群ってヤツだ。


 そうじゃないとあんな朴念仁の何処が良いんだかって話になる。
 アタシには理解できない。
 そりゃ、いざと言う時には頼りになるし、何やかんやでいつも心配してくれるし、泣きたい時には黙って胸貸してくれるけどさ……。
 現にフランツさんLOVEのシェナですら、フジサキを『カッコイイよね!』って言ってたし。
 あれ? イケメンの全条件満てる。
 もしかして、フジサキにときめかないアタシの方が異端児なのか!?
 いや、違うな。アタシがアイツの事を意識しないのは、フジサキが『人間』じゃないって知ってるからだ。


 問題はだ――。
 フジサキに人間の『恋愛感情』なんて、複雑なものが理解できるのかって事だ。
 フジサキとアイネの関係がうまく行かなかった場合、アタシのフォローがなってなかったからだとか言われて、逆恨みされるのも嫌だし。
 その時こそ、アイネが『絶対殺すマン』と化すね。本当に槍で串刺しか、下手をすれば細かくミンチにされるかもしれない。
 冗談じゃないですよ、全く……。


 どうやって、アイネとフジサキをくっつけるか。
 アイネはフジサキに話しかけられないみたいだから、アプローチはフジサキから仕掛けさせるしかない。どのタイミングでけし掛けるかが重要だな。
 あれ。待てよ? 何か大切な事忘れてる気が……。

「ほあぁッ!!」

 廊下のど真ん中で立ち止まると、アタシは頭を抱えた。
 2人をラブラブにしちゃ駄目じゃんか! 
 二人の仲がいい感じに進展して、相思相愛の関係になったと仮定するよ。
 この家を出て行く当日になって『私、アイネ様と婚約いたしました。ですので、マスターはお1人で元の世界にお帰りになる方法をお探しください』って事になったらどうるすよ。
 何の取り得もない異世界人のアタシがフジサキ無しでやっていけるか? 答えはノーだ。


 あぁー! ちょっと考えれば分かる事なのに、何でそんな一番大切な事を忘れてたんだアタシ!
 生活に余裕が出てきたからって、人の恋愛事情に首を突っ込んでいる場合じゃなかった。
 でも、断れるような感じじゃなかったし……。アイネには申し訳ないが、何としても二人の関係が上手くかないように立ち回らなければ。
 今度こそ冷静に頭を使って、上手くやらねば。バレたらそこで試合終了です。


 そこまで一気に考えて、一旦落ち着くために深く息を吸った。
 異世界トリップした主人公って、こんな事で悩むもんなのかな?
 なんて言うか、もっと壮大なイメージがあったんだけど。自分にとんでもない特殊能力がある事に気が付いて、勇者と言う職種に就く。
 頼れる仲間を集めて冒険の旅へ出ると、名のある難関ダンジョンを次々と攻略、冒険の中でヒロインといい感じになって、世界を滅ぼそうとする魔王を倒すために修行に明け暮れて……彼らの異世界生活は充実している。
 それと比べて、アタシの異世界生活ときたらどうだ。命の危機と隣り合わせになる事も、世界を救わなくちゃいけないと言うプレッシャーもない、他人の恋路のために悩む程度の低刺激で平凡な日常生活を送っている。
 アタシがこの世界に来た意味って何なんだろう?
 そもそも意味なんてあるのかな……? うーむ。

「チヒロ?」

 頭を抱えたまま、うんうん唸っていると背後から名前を呼ばれた。
 振り返らなくても声だけで誰だか分かる。
 何を隠そう、その人物はアタシをこの家に連れてきた張本人だからだ。
 アタシは頭から手を離すと、声の主の方へ振り返ると苦笑いを浮かべた。

「こんばんは、フランツさん」

「こんな所でどうしたの? まさか、体の具合でも悪いのかい?」

「あはは……全然、元気ですよ。ちょっと、考え事してまして」

 心配そうに顔を覗き込んでくるフランツさんに、乾いた笑いでアタシは頭を振った。
 貴方の妹のせいで悩んでいるんですって、喉元まで出かかったがゴクンと飲み込んだ。
 この事はアイネとの女同士のお約束で、他言するのは厳禁と釘を刺されている。

「今日、アイネの部屋に呼び出されたらしいね。大丈夫? 何もされなかったかい?」

「え? 何故その事を!?」

「ハル達から聞いたんだよ。まさか、アイネに何かされたんじゃ?」

「い、いえ! 何もされてませんよッ!」

 あのお喋り野郎共めッ! よりによって何でフランツさんに話したんだよ。
 フランツさんにはこれ以上迷惑掛けたくないし、何があったか言うまで、ずっと心配そうにしてくるから、アタシの中の罪悪感が増すんだよ。
 ハロルドめ、後で覚えとけよッ!

「何か悩み事でもあるの?」

「えぇ、まぁ。そんな所ですね」

「僕でよければ、相談に乗るよ?」

 悩めるJKの前に救世主メシア様が現れた。
 フランツさん、ホント良い人や。
 ここはお言葉に甘えて、相談してみるか……いや、でもなぁ。
 アタシの中の天使と悪魔がバトルアクションを繰り広げた。結果、最後のエルボーが決め手になって悪魔が勝利しました。
 誰の事だか悟られない程度に相談するのは良いよね、アイネさん? 約束破ったの内にカウントされないよね?

「大丈夫です……と言いたいところなんですが、今回はお言葉に甘えさせて頂きます」

「じゃぁ、ここで話すのもなんだし……この先のバルコニーででも構わないかな?」

 アタシ達は、広い庭を一望できるコルデア家自慢のバルコニーへと向かった。
 ただなぁ、フランツさんに恋愛相談って何て言うか……。
 いや、乗ってもらえるんだから文句言っちゃいけないな。
 アタシは、先導するフランツさんの後を追った。

「それで、悩み事って何かな?」

 バルコニーに出るとそこは満天の星空。
 この世界には電気がないから当然、元の世界のように夜通し都市を照らす光源なんて存在しない。
 だから、星明りを遮る物が何もないのだ。
 ローナ村でも毎晩見上げていた星空だが、その美しさは見ていて飽きが来ない。
 それにしてもこの『星空・バルコニー・若い男女・2人きり』って、ラブストーリー的には最高のシチュエーションじゃね?
 まさに王道展開だよね。
 いや、実際はただのお悩み相談なんだけどね……。


 何となく、懐かしい物でも見る様な目付きで星を見上げていたフランツさんが、黙りこくるアタシに視線を移すと、優しい声音で尋ねてきた。
 おっとっと、見惚れてる場合じゃなかった。

「実はですね……」

「うん?」

 もったいぶっている訳ではないんだけど、いざ他人……しかも男の人に恋愛相談するのって結構勇気がいる。
 自分の恋愛について相談するわけじゃないんだけどなぁ。

「そのぉ……あ! 最初に言っておきますけど、アタシじゃないですよ? ある人がですね、好きな人が出来たらしいんですよ。でも恋愛とか初めてだし、いざ話しかけようとすると緊張しちゃって、結局話しかけれなくて逃げちゃうらしいんですよ。それはアタシの方で何とか出来そうなんですけど……問題は相手の方でして」

「相手の方?」

「はい。その相手って人が『恋愛』って物がまるで分かってない人でして。その……フランツさん」

「ん? 何だい?」

 アタシは星明りに照らされ、夜風に髪を遊ばれているフランツさんの瞳を真っ直ぐに見つめて次の言葉を紡いだ。
 アタシが本当に聞きたかったのは本題はここからだ。

「『恋愛』を知らない人に、『愛』を知ってもらうにはどうしたら良いんでしょうか?」

 夜風が一際強く吹いてアタシとフランツさんの髪と服を乱して行った。
 フランツさんがジッとアタシを見つめている。
 何も言い返してくれないフランツさんにアタシは首を傾げた。
 フランツさんもどう答えて良いのか、悩んでいるのだろうか?
 どこか熱がこもった様に見えるその視線のせいで居心地が悪い。
 アタシがモジモジし始めると、フランツさんもハッと我に帰った。
 何かを誤魔化す様に咳払いを一つした。

「そ、そうだね。それは難しい問題だなぁ……」

「ですよねぇ。アタシも彼氏とかいなかったし……恋愛って良く分かんないんです」

 はぁっとアタシは溜め息を付いた。そんな様子を見てフランツさんもウーンと眉を寄せて考え込んでしまった。
 アタシが『彼氏いない』って言った瞬間、表情が輝いた気がしたけど。
 たぶん見間違いだ。そう言う事にしておこう。
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