表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
万能使いの巻き込まれ異世界冒険記  作者: シャミュナ
第1章 テラーク脱出編
2/91

状況確認とステータス

 おかしい……俺は学校から帰宅する途中だったはずだ。

 さっきまで赤信号を近くにいた同級生とともに待っていたはず。だが、目の前に広がっている光景は車が通る道路などではなかった。

 石造りの円形の部屋、自分の足下には青い文字の書かれた変な図形、目の前には金髪で白いドレスを着たお姫様と思われる人物とその横には、見慣れない服を着た40代ぐらいの知恵の回りそうなおっさん達が立っている。そのそれぞれが興味深そうにこちらを観察していた。

 周りを見渡すと、見知った顔の男子と女子2人ずつ、4人は皆状況が分からず困惑した顔をしている。

 そいつらは俺のクラスメイトで俺の隣にいるのが人当たりの良さそうなイケメンで委員長の瀬戸せと 大輝だいき、その更に隣にいるのが肩まで金髪で染めた髪を伸ばした瀬戸の親友の吉本よしもと 弓弦ゆづる

その後ろにいるのが瀬戸の幼馴染みで長年想いを寄せている髪をサイドテールにしている低身長巨乳の貝塚かいづか 愛美まなみ、その親友で綺麗な黒髪をポニーテールにした凛々しい印象の東雲しののめ 志乃しの

 みんな俺のクラスメイトである。残念ながら、いや本当に残念がってる訳ではないが接点はない。ただクラスの上位のグループにいるのを一方的に俺が知ってるだけの関係だ。一匹狼がクラス内カーストグループと接点など持つはずがないのだ。

 そして現状に頭が追いつかずフリーズしている俺達に遂にお姫様が話しかけてきた。さて、どう出てくる?この不思議な状況下で、落ち着いて姫様の言葉に耳を傾ける。


 「あの、言葉は通じますでしょうか?」


 「あ、あぁ」


 すぐ近くにいた瀬戸が返事をした。それに続いて俺以外のメンバーも頷く。

 俺は無言でお姫様を視線を向けて話を続けるよう促す。お姫様も察してくれたのか話を続ける。


 「どうやら問題ないようですね、良かったです。それではあなた達へ今起きている状況を説明したいと思うので、申し訳ないのですが御足労願えますか?」


 その言葉に先程返事をした瀬戸が俺達を見る、それに全員頷いて了承の意を伝えた。

 御足労ってことは、こことは別な場所に移動するようだ。正直窓の一つもない密閉したこの空間に長居したくは無かったため、移動については助かると言える。


 「分かりました、俺達も混乱しているので状況を説明してくれるならありがたいです」


 「では、私のあとについてきてください。謁見の場に行きます」


 瀬戸を筆頭に俺達は並んでお姫様の後を付いていく。石畳だった部屋から脱出し、長い廊下を渡るとやがて赤いカーペットの敷かれた廊下に出る。今までの道のりからするとかなり遠い位置にあの部屋は合ったらしい。

 ちなみに俺は5人の中で一番後ろだが、更に俺の後ろにはおじさん達がいる。逃げられないようにでもしてるのか、監視をしているような思惑が感じられる。下手な行動はしないほうが良いだろう。それにしても向かう先の謁見の場が気になるな。予想すると王様でもいるのだろうか?そうなると、このあと説明されることについてもだいたい予想はつくのだが。本当に予想通りだとしたら今後の身の振り方を考えていた方がいいな。

 そんなことを考えているうちに謁見の場に着いたようだ。全員の足が止まる。ここに来る道中、瀬戸達同様辺りを観察する挙動不審な行動をしてしまっていた。それほどまでに今いるこの場所が、俺達には見知らぬものが多々見受けられたのだ。お姫様が居ること、そして謁見の場などという大層な名前の付いた部屋、これまで通ってきた道を観察して、俺達は城のような建物に居るのだと推測できる。

 部屋の前で、お姫様は扉に向けて入室の許可を取り、扉を開け俺達に入るように視線で促す。

 そのままお姫様に続いて謁見の場に入る。周りを見ると体育館程の広さがある空間に、少し床が高くなり目線を見上げる位置にある玉座に目がいった。そこに髭を生やし、豪華な衣装に身を包む爺さんが居た。おそらくここで一番偉い人物は鋭い視線でこちらを見ている。


 「お父様、勇者様達をお連れいたしました」


 「うむ、ご苦労だった」


 短いやり取りをした後、お姫様は玉座の隣に向かい並ぶように立った。その反対側の横には先程の部屋にいたおじさん達が並ぶ。

 お父様と呼ばれたおじさんは入室した扉に1度視線を向けこちらを再度見る。

それに気づいた俺はチラリと視線の先を見る。鉄の鎧を纏った兵士が2人扉の前に立っている、たぶん誰も入室させないためと俺達が逃げられないようにしたんだろう、ご苦労なことで。

 そこでようやく本題である俺達の状況が説明される。

 長ったらしい説明を数分聞いてみた。1通り説明された内容を整理してみるとこうだ。

・まず俺達はこの世界(名称:アンノクス)に勇者として召喚され、ここに居る。

・この国(名称:テラーク)は今魔族と戦争をしており劣勢、危機的状況に陥っている。

・それを打破するべく俺達勇者を召喚した。


 だいたいこんな感じだ。そう、いかにもなテンプレ展開。しかし、その話に俺はどうも胡散臭いものを感じていた。なんだろうか、どうも話の至るところに靄が掛かってるような、掴みどころのない違和感がある。だがどうせ聞き出せなさそうだから今は考えないでおこう。

 ちなみにお父様と呼ばれた人物はやはりテラークの王様であった。

そして知恵の回りそうなのは大臣。

 うん、思ってた通りだったな……。


 「とりあえず俺達の状況は分かった、だが俺達は勇者と言われてもただの一般人だ。戦えと言われても戦えない、それにこっちの事情もお構い無しに召喚して国のために魔族と戦えなんて、いくらなんでも自分勝手すぎないか?」


 「そうよ!急に勇者と言われて戦えとか、はいそうですかって言える訳ないじゃない!」


 怒気を孕んだ声で瀬戸と東雲さんが抗議する。

 まぁその怒りは最もだ。俺達は不本意で召喚された身だ。それなのに魔族と戦い、関係のないこの国を救ってくれなど自己中にも程がある。そして、俺達は今すぐに戦えるほどの力も知識もない。

 しかも戦うということは命をかけるということ。つまり俺達はこの国のために命をかける。戦って生き残る保証などない、それは遠まわしにこの国のために命をかけるのではなく捨てろと言われてるようにも捉えられる。いきなり誘拐されて、国のために命を投げ捨てろ、なんてふざけている。

 そんなの考えたら俺だってごめんだ、だから瀬戸たちの言い分は正論なのだ。

 それに対して王様は素直に謝罪をした。


 「それについてはすまなかったと思っている。こちらの身勝手で君達をこちらに召喚したこと本当にすまなかった。」


 そう言って頭を下げる王様を見て、俺含め全員が唖然としていた。仮にも一国の王、人の上に立つ者がこんな簡単に民間人の俺らに頭を下げるのかと驚嘆した。

 王様は更に言葉を続ける。


 「だがわしらも追い詰めらていたのだ、いつ滅ぶか分からない国のために勇者召喚をした。許してくれとは言わない、だがどうかわしらに力を貸して欲しい頼む。」


 本気の謝罪をされ、2人はバツの悪そうな顔をしている。

 こんな状況で許さないなんて言えるわけない、言ったらこっちが悪者だ。更にお人好しな性格もあって中々手痛い一手だ。

 それを分かっているのか瀬戸は謝罪を受け入れた、何か状況が素直に流れすぎてるように感じるな……

 そこで何かを思い出したように語る貝塚の言葉、そしてその返答に俺以外の奴は驚愕した。


 「召喚されたということは送還もできるんですよね?」


 「それについては、分からないのじゃ。なにぶん勇者召喚とは古の儀式のため資料が少ない。おそらく魔王なら知っているだろう」


 魔王……か

 やっぱさっきから思ってたがどうも胡散臭い。

 さっきの謝罪もそうだ、謝っているように見えて本質のところは悪いと思ってないんだろう。そういった思いがチラチラと見え隠れしている。なんというのだろうか、言葉に重みが感じられない。そして、魔王という存在を使っての責任の行先を誘導している。こうなると魔族と戦うための戦力として、俺達を召喚していたのは確かだが、別な目的がありそうだ。この人たちが俺達を求める真の理由はなんだ?

 さすがにこれは早々にこの国から見切りをつけたほうが良さそうだ。勝手な理由で呼び出され、陰謀に巻き込まれるのなんてまっぴらごめんだ。さて、見切るをつけるにあたって何かきっかけはないだろうか。いきなり姿を眩ますのは怪しまれ、瀬戸達にも迷惑を掛けそうだ。曲がりなりにも同郷のよしみ、可能な限り瀬戸達も含むリスクは犯したくはない。

 何か無いかと考えている中、そのきっかけは意外にもすぐ訪れた。


 「それでは勇者様、ご自身のステータスを見ていただけませんか?ステータスと心の中で念じれば見れるはずです」


 お姫様の言葉に全員がステータスと念じる。

 すると自分の目の前にステータスが表示された。なるほど、これがこの世界における自分の情報か。この世界で生きるためには、ちゃんと把握する必要があるな。

 さて、俺のステータスはどんなもんかな。


 加賀美 圭太

Lv.1

HP 150/150

MP 80/80

攻撃力 80

防御力 80

素早さ 80

器用 100

スキル 万能適正Lv.1 言語自動翻訳Lv.1

称号 巻き込まれし者 万能神の加護


 こんな感じだ、この世界だとどれくらいが普通なのか分からないから判断出来ないが、バランスは取れてるのではないだろうか。何かに特化しているタイプではないようだ。しかし称号に難があるようだ。

 見てわかる通り、巻き込まれし者と表示されている。

 つまりこれはあれか、俺だけ勇者じゃないパターンだな。ありきたりな展開だと思う。だが加護についてはよくわからないな。万能神ってなんだ?適性も万能とあるが、何に対しての適性だろうか、疑問が増えるばかりだ。


 「皆さん見れましたか?よろしければ可視化してもらえませんか、ビジョンと念じれば可視化出来ますので」


 そう言われ、皆がビジョンと念じる。そして現れる全員のステータス。それを見て俺は絶句した。

 なぜかって?それはこいつらのステータスを見ればわかるだろう。それほどまでに瀬戸達のステータスが規格外だった。


 瀬戸 大輝

Lv.1

HP 1500/1500

MP 800/800

攻撃力 1200

防御力 1100

素早さ 450

器用 50

スキル 聖属性適正Lv.3 光属性適正Lv.1 闇属性耐性Lv.1 魔耐性Lv.3 剣技適正Lv.1 幸運Lv.1 言語自動翻訳Lv.1

称号 異世界の勇者 英雄の卵


 吉本 弓弦

Lv.1

HP 1200/1200

MP 500/500

攻撃力 900

防御力 1300

素早さ 280

器用 80

スキル 聖属性適正Lv.1 火属性適正Lv.1 魔耐性Lv.1 火属性耐性Lv.1 剣技適正Lv.1 盾適正Lv.3 言語自動翻訳Lv.1

称号 異世界の勇者 守護者


 貝塚 愛美

Lv.1

HP 900/900

MP 1000/1000

攻撃力 700

防御力 600

素早さ 250

器用 150

スキル 聖属性適正Lv.3 全属性適正Lv.1 魔耐性Lv.1 簡易詠唱Lv.1 言語自動翻訳Lv.1

称号 異世界の勇者 聖女


 東雲 志乃

Lv.1

HP 1300/1300

MP 700/700

攻撃力 1100

防御力 600

素早さ 400

器用 150

スキル 聖属性適正Lv.1 魔耐性Lv.1 剣技適正Lv.3 言語自動翻訳Lv.1

称号 異世界の勇者 東雲流剣術免許皆伝


 俺が巻き込まれし者ってのは本当のようだ。俺だけが、みんなと比べステータスが圧倒的に低い。しかも取得スキルも少ない。

 瀬戸たちや王様も俺のステータスを見て唖然としている。それはそうだろう、勇者と思ってたら勇者じゃなかったうえに、弱いのだから。これでは、俺を呼んだのは失敗ともいえる。戦力になりそうにも無いのでは、この人たちの思惑からは外れてしまっている。


 「見てわかるとおり俺は巻き込まれたらしいな」


 「こ、これは想定外じゃ……、まさか召喚に失敗があるとは」


 「じゃあ加賀美はどうするんだ?勇者じゃないなら戦闘する事も出来ないだろうし……」


 「そうだよね、私たちと違って戦う理由もないし」


 瀬戸と貝塚が俺のことを心配してるが、その心配は俺にとっては不要なものだ。なんせ、ここに居座る気も無いからだ。

 瀬戸がそれに気づくことはないだろうがな。しかし、ステータスを開示した途端、明らかに大臣達の視線が変わったな。品定めから一気に価値無い物へと向ける視線へ、気分が良くなるものではないな。

 これに対し、王様は眉間に皺を寄せながらも全員に声を掛ける。


 「うむ。ケータ殿に関しては、すまないが少しこちらで考えさせてくれ。無論悪いようにはしない。勇者殿達とケータ殿に部屋を用意させるので今夜はゆっくり休んでくれ」


 「了解しました」


 確かに予定外の人物への対応をすぐに決めることは出来ないだろう、考える時間は必要だ。とりあえず今夜は休むという提案を受け入れ、兵士に部屋を案内してもらう。それにしても、勇者殿とケータ殿ね・・・、ここで瀬戸達と俺を仕分けるか。

 クラスメイトの奴らは、何かこちらを見て暗い顔をしているが見なかったことにする。おそらく俺のことを心配し気遣ってるのだろう。だけど俺がこれからする目的は決まった。

 危険だろうがなんだろうがせっかく異世界に来たんだから、冒険をしてみたい。魔族との戦いなんて関係なく俺の望むようにこの世界を生きてみたい。


 (まずは、ここからの脱出だな)


 さっき王様が悪いようにしないと言っていたが、どうせ嘘だろう。何をされるか分かったものじゃない。どうしたものか・・・。

 まずはこの城から脱出する案を考える必要がありそうだな。


6/30 訂正

各キャラクターのステータスにLvを追加しました

7/16 変更

召喚された国に矛盾点があったためテラークに変更しました

2020/05/11 加筆修正

およそ1500文字ほど加筆修正を加えました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ