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生贄様と厄災と  作者: 鈴川流
1. 生贄様、遭遇 (ギルド編)
3/14

1章 それは始まりに過ぎず 2

 はっとして目を開けた時、待ち時間があまりにも長すぎて、座ったまま寝てしまったのだと気付いた。

 洞窟の入り口を振り返れば、橙色の夕日色に染まっていた。

 涼しい洞窟の中がより一層冷え込み、自分の体温で温まった岩の上でも、吹き抜ける風と滞留する空気にぶるっと体が震えた。

 寝ている間にがぶりと喰われていたら、痛みも恐怖も感じずに済んだのに、魔物は洞窟の奥で生贄が来るのを悠長に待っているらしい。

 なんという魔物様野郎か。実に腹立たしい。

 左頬はなんだかゴワゴワとした感じがするので、血が固まってしまったのだろう。

 これで失血死という線は無くなってしまった。残念極まりない。

 ため息と共に、両膝を立て、後ろ手に縛られた指で踏ん張って地面を押し、どうにかこうにかふらりと立ち上がる。

 洞窟の奥地へ向かう、訳がない。

 洞窟の外へ向かおうと、背後を振り返った時だった。

 生暖かい空気が背後からヌルリと体を撫でたのは。

 ゾッと背筋に走る悪寒に、背後の何かを探るように全神経がそちらを向く。

 振り返ってはダメだと、本能が囁く。

 振り返りたくもなかった。

「やっと来たか、乙女よ。なるほど、縛られているとは。これでは動きようもなかったろう。迎えにきて正解だったようだな」

 その低い声に、洞窟の外にいた男達が壮大に悲鳴をあげて逃げ出した。

 何かがズルリと動く気配がする。

 男達と同じように悲鳴をあげて逃げ出せれば良かったが、あまりにもその気配が近すぎて、足は硬直して、呼吸すらもままならない。

「顔を我に見せよ。その声を聞かせよ」

 偉ぶった命令口調に怒りすらも浮かばない。

 あるのはどうしようもない恐怖心だけだった。

 逆らっても喰われるだろうし、従っても喰われるだろう。

 一秒でも長く生きていたい訳でもないが、自分の爪先はジリジリと横に動き、そしてゆっくりと体を糸で引っ張られたように背後を振り返った。

 瞼をぎゅっと閉じることもできずに見えた光景は、暗闇だけだった。

 そこに何かが蠢いているような、埋め尽くしているような、何かがいるような気配はしても、その姿は何か、と言われても何一つ見えなかった。

 恐怖に唇が青ざめた私に向かって、

「ババァではないか!」

 と、その何かは、私の顔面に暴言を浴びせてきた。

「ばっ?!」

 思わぬ暴言に呼吸と共に声まで一瞬ばかり戻ってきた。

「なんということだ! こんなババァなぞ! 我を謀ったかっ! 人間風情が! 我を騙せるとでも思うたか! こんなとうのたったババァなぞ寄越しおって! ババァなぞ誰が欲しがったか! 我が要求したのは乙女ぞ。ババァなぞではないわ!」

 ババァババァと。

「・・・・腐れ魔物が」

 頭の中で呟くだけで留めておくなど、できはしなかった。

 女に向かってババァと暴言を吐きづつけるような腐れ魔物野郎に、文句の一つも言わずに喰われて差し上げるなど馬鹿らしい。

 こんな腐れクソ魔物に怖気付いて、言いたいことも言えないなど、冗談じゃない。恐怖なんぞ、クソ食らえというものだ。

「なっ、今なんと言ったか! このババァが!」

「うっっっっさいのよこの腐れバァァアアアアアカ!」

 体を曲げて腹の底から吐き出した絶叫に、姿一つ見えない魔物が明らかにひるんだ気配を見せた。

「あ・ん・た・が! 処女求めたんでしょ! 私は! あんたが! お求めの! 処女よ! バァアアアアアアアカ!」

「なっ?! 何を言うか! ババァがそんなオボコであるなど・・・まさか、貴様、凄まじい老け顔なのか?」

 心底残念そうな声音でいうのがまた腹立たしい。

「誰が老け顔よ! こちとら今年で31になる女だ!」

「31?! まさかその歳で処女だと?! バカな! そんなふざけたことあろうはずが・・・!」

 魔物の見事な狼狽ぶりに、少しばかり溜飲が下がり、そして少し取り戻した冷静さからニヤリと口元が勝ち誇る。

「あんた、私が顔を見せる前に、乙女、って言ったわよね。それって、あんた、ニオイかなんかで処女だってわかるんじゃないの? だってわざわざ処女を指定するぐらいだものね。まさか股開かせて確認するわけ?」

「ば、バカな・・・我の認識を誤認させ・・・んんんっ?! 貴様! 誠に処女だというのか!」

「だから処女だって言ったでしょうが! 何回言わせる気よ! この変態野郎が!」

「31で処女だと・・・・・ありえん・・あろうはずがない・・・」

 放心しかけた魔物のブツブツとした独り言のような言葉に、口をつぐむ、などということができるだろうか。否、できるはずがない。

「ええそうよ、31で処女ですが何か? えぇ! そうよ! 処女よ処女! 正真正銘の処女よ! 20代の時はよかったわよ? えぇ、処女だってだけでモテてモテてね! 身持ちがかたくて嫁にしたいってね! えぇえぇそうよ! 30になった途端何?! どいつもこいつッも気持ちの悪いモノを見るようになって! 私だって30まで処女でいるつもりなんてなかったわよ!!!! 縁がなかったのよ!!! バアァアアアアアアカ!!! おかげであんたの生贄になる始末で最悪なのは私よ!!!」

 煮えたぎるあらゆる全ての怒りを魔物にぶつけて絶叫すれば、

「ばっバカバカと貴様っ、この我をなんだと―」

 と、明らかに狼狽えながらも言い返して来る魔物の言葉を遮った私は、さらに言葉を続けてやった。

「うっさいうるさいうるさいうるさい! あんたが20代限定にしないからこうなんのよバァアアアアアアカ! てめぇの落ち度だバァアアアアアカ!」

「くっ・・・! 今からでも・・・!」

 その言葉に、腕を組んで踏ん反り返れないのが実に残念だった。

「いないわよ」

「・・・・・は?」

 水を打った私の短い言葉に、しばしの沈黙の後に、魔物がやっとこさとばかりに発した言葉は、それだった。

「いないって言ったのよ。村にいる女、若い女、20代の女、10代の女、全員、非、処女よ」

「な・・・なななななにっぃっ?!」

 今までで一番の狼狽っぷりに、

「バァアアアアアアカ! 処女なんて限定するからこうなんのよバァアアアアアカ!」

 と、さらに罵声を浴びせてやる。

 ババァと散々言った仕返しだ、クソ魔物め。

「まてまてまてまて、いくらなんでもそのようなことはあるまい? 10代なら処女の一人や二人・・・」

「いないわよ。そりゃ大きな都会だったらいるでしょうね。でも田舎よ。娯楽なんてあるわけないでしょ。冬の暇な時に、やることなんて一つでしょ」

 仰々しく肩を竦めて見せれば、魔物は見事に狼狽えるばかりだった。

「ば、ばかなっ! なんという貞操観念か! 腐り切るにもほどというものがあろう!」

「知らないわよ! 気づいたら昼間っからそこらじゅうでパコパコヤってんのよ!」

「女がパコパコなどど下品な物言いをするでないわ!」

「さっきから処女処女言わせる変態に指図なんかされたくないわ!」

 ああいうえばこういう返しに、魔物の方が、ぐぅっと押し黙ってしまった。

 言い負かしてしまったらしい。

 そして落ちた沈黙の長さが、自分の置かれている状況をハタと思い出させてきた。

 私はこいつに喰われるのだ、ということを喧々囂々とする間に抜け落ちかけていた。

 外はすでにとっぷりと日が暮れ、周囲に視線を走らせるまでもなく、洞窟の中も外も真っ暗闇だった。

 入ってくる冷気が足元をすり抜けて、汗ばみかけていた体をぞくりとさせる。

 ぶるっと思わず震えても、魔物は押し黙ったままだった。

 だから、余計に、魔物がどこにいるかわからない。

 もしかしたら目の前にいないのかもしれない。

 真っ暗闇の中で、ぽつりと自分だけが取り残されたような気がしてきた。

 なんとなく、洞窟の中が狭くなったような気もする。

 そんな考えを裏切るように、

「冗談ではない・・・・」

 と、疲れ切った声が上から落ちてきた。

 そして、

「村に行く。お前の話なんぞ信用できぬわ」

 と、ある意味当然的な答えを出してきた。

「それは困るわ」

 魔物の反応に考えたことがほぼ同時に口から滑り出る。

「・・・ほぅ? それはつまり、嘘をついていたと」

 魔物のしたり声を私は鼻で笑い飛ばす。

 嘘などついて私に何の益があるのか。

「違うわよバカ魔物。私は、あんたが生贄として求めた処女なのに、あんたはそれを不服として村に降りるわけでしょ? それってつまり、31歳の処女は、魔物の生贄にすらなれないってことじゃないの。無価値の烙印どころの騒ぎじゃないわ。処女様よ、処女様。魔物すらも喰べない処女様と影で笑われる人生なんてまっぴらごめんよ!」

「・・・では貴様を喰らえば良いと」

「あんたなんかに喰われるなんてごめんよ」

 キリッと即答に近い返事に、魔物は視界に見えていたなら、頭でも抱えていそうな苦悩の声を上げた。

「あれもこれも嫌では、我が困る。どれも選べぬならば、我は宣言通り、七日後、世界を滅ぼす化身となろう。それで良いか」

「それも困るわ」

 自分で言ってもわかるほどの我儘に、魔物は呆れ返ったような溜息を吐き出して、

「貴様という生き物は・・・・・・ではどうせよと言うのだ」

 今度は私に回答を委ねてきた。

 憤慨して私を殺すなりの選択だってあるはずだ。

 私は姿の見えない魔物に勝てるほどの勇者でも、玄人な冒険者でもない。

 そこらへんで畑を耕して生活している村人に過ぎないのに。

 なのに、この魔物は私との会話を続けようと言葉を返してくる。

 そこに自分が生き残る道があるような気がして、

「その前に、手首が痛いのよ。考えたいのに考えきれないから、解いてくれない?」

 と、一つ賭けに出てみた。

 どこまで、この魔物は、私の話を聞こうとしてくれているのか、と。

 魔物は私の言葉に、

「ふむ。確かに少々赤くなっておるな。しばし待て。この体では、そんな糸なぞ斬ろうとすれば貴様ごと真っ二つにしてしまうわ」

 まるで打てば響くかのごとく、あっさりと承諾してくるどころか、それの斜め上の反応まで返してきた。

 直後、洞窟の奥へと引き込むような突風、などというにはあまりにも生易しすぎる暴風が吹き荒れる。

 あまりの突風に体大きく前に傾ぎ、危うく二度目の顔面滑りをしそうになって、足の指先まで力を込めて踏ん張り、体を大きく後ろに傾ごうと腹に力を込める。

 どうにかほんのわずかに前に傾ぐ程度で止まれた突風は、どれだけ吹き荒れたのかわからぬ間に、ピタッと突然止まった。

 突如として無風になってくれたものだから、私は自分でもよく分からない変な声をあげて強かに尻餅をついた。

「無様な声だな」

 魔物の声は、わりとすぐ近くから聞こえてきた。

 頭上から降り注ぐ、というよりかは、自分よりも背の高い人間に声をかけられた程度の高さからだ。

「うるさいわね!」

 カッと自分の顔が赤くなるのを感じながら顔を上げれば、少しばかり離れた暗がりに、一人の魔術師が立っていた。

 黒いローブは地面にまで着せるほど長く、目深に被ったフードからはみ出た黒髪は胸下までダラダラと伸びている。

 悪の魔術師、と言われれば、誰もが頷くに違いない出で立ちのその男は、私のそばへと歩いていくる。

 こいつが誰か、などという大ボケをかますほどバカではない。

 魔物は私の背後に回ると、

「錠を解く。少し手をあげよ」

 片膝を折ってそう声をかけてきた。

 私は前かがみになる形で手をあげると、魔物は私の左手首をひんやりとした大きな手で掴むと、ついで、ブチブチっと腕力にものを言わせて引きちぎるような音が続いた。

 するっと手首を縛り上げた縄のアタリが消え、そして私の手首を掴んでいた手も離れた。

 自由になった両手を自分の胸元に戻し、左手首を右手で軽く掴んで摩り、続いて右手も同じように軽く摩る。

 実に、痛かった。

 途中から感覚が麻痺していくのも辛かった。

 両手の指を握り、広げ、と繰り返して血行を促進する。

「それで、貴様の案は?」

 背後に片膝を折ったままの態勢で、魔物は声をかけてくる。

「あんたは、この村から出れないの?」

 両の手首を捻って動きを確かめながら、私は振り返らずに聞く。

「いいや?」

 なぜそんな事を聞く、とばかりに魔物の返しには疑問符が入り込んできた。

「なら、この村の女にこだわる必要はないわよね」

「そうではあるな」

「なら、あんたが生贄を要求した村以外の所で、あんたのお眼鏡に叶う処女を探せば良いじゃない。隣村・・・はあいつらと交流あるから避けた方がいいけど・・・都まで行けば噂なんてないだろうし」

 この魔物が生贄をよこせ、と要求したのは、私が住む村の住民全員に対してだった。

 ちなみに、要求したのは、夢の中で。

 全員が全員同じ刻限に深く眠り、そして全く同じ夢を見て、全く同じ時間に飛び起きた。

 これを偶然として片付けるには、あまりにも恐ろしく、長老に至っては、泡を吹き散らして謎語を発した後に、生贄選定を率先して推し進めた。

 長老がそういうならば、と村の連中は尻馬に乗っかり、そして私が選ばれた、というわけだ。

 今思い返しても、あの空気は異常だった。

 そして同時にあいつらをぶん殴れなかったことが甚だ悔しいことこの上ない。

 擦った左頬を指先でそっと触れると、じんっとした痛みに顔が歪んで更に痛んだ。

「それで、貴様は村に戻るのか」

「まさか。戻らないわよ。どっか他の土地に行くわ。私を知らない、あんたの噂も届かなそうな遠くにね」

「では、貴様だけ、どこか他の村に行けば良いだろう」

「そんなことされたら、行き遅れ風情が逃げた、っていう噂が背後にずーーーっと着いてくるわ。最悪の場合、賞金首になって、冒険者連中に付け狙われて連れ戻されるわ」

「・・・行く当てはあるのか」

「あるわけないでしょ。村から出たことないもの」

 肩をすくめて笑ってみせる。

 商人の子か冒険者にでもならない限り、他の土地になど行く必要性がない。

 衣は、やってくる行商人から布を買って、自分で繕えば良い。

 食は、自分の畑を耕し、弓を担ぎ、剣を携えて森に入れば良い。

 住は、親から継いだものを補強しながら住めば良い。

 結婚は、村の男とするのでもいいし、やってきた冒険者と馬が合えばそれもいい。

 生活に困ることは何も無い。

「ああ・・・ただ、一度村には戻らないと。剣と弓と、貯めたお金とか持って出なきゃ、野盗に襲われてそれで終わりだわ」

「ふむ・・・」

 魔物は背後で座り込む衣擦れの音を立てて、何やら考え込みだした。

 私が逃げ出す心配をまるでしていない。

 まぁ、事実、逃げる気は無いのだから、心を見透かされているのかもしれない。

 私は、よっこいせと立ち上がると、軽く屈伸し、上体を捻って背骨と腰骨をポキポキと鳴らす。

 私が軽いストレッチに明け暮れている間、魔物は考えあぐね、そして、

「では、貴様、我の供をせよ」

「は?!」

 あまりにも想定外の言葉に、腰をひねった態勢のままで私は魔物を見下ろす。

 何を言い出すんだ、このクソ魔物野郎。

 そんな風な視線を送ったためか、魔物は説明口調でこう続けた。

「我は世俗には疎い。貴様が道先案内をすれば良い。我が清らかな乙女を

見つけた暁には、貴様の望む地に連れて行ってやろう。悪い話ではなかろう?」

「私は清らかじゃ無いと」

「とうのたったババァであろうが」

 この野郎。

 まだババァというかこのクソ魔物野郎。

 口の左端が苛立ちにひくつくも、不毛な罵倒を繰り返すのも面白くは無い。

 渡りに船、といえばそうだ。

 少なくとも、私はこの魔物には傷一つ付けられる気がしない。

 そう本能が告げる程度に、この魔物が強い。

 だが、護衛役、代わりにしては凶悪だし、行く先々で処女を公然と探し回れば、たちまち噂になるだろう。

「案内をするのに、条件があるわ」

「なんだ」

「処女を探すならこっそりとよ。大手を振って処女はどこだーなんてバカみたいなことやらないでね」

「なぜだ?」

 やる気だったのかこの魔物野郎。

 言っておいて大正解だった。

「喜んで生贄になります! なんて言うバカがいると思うの? 噂は瞬く間に広まって、最悪、あんたが求めた乙女が居たとしても、あんたがそこにたどり着く前に、乙女じゃなくなるわ」

「なるほど。それは由々しき事態であるな」

 実に深刻そうな声音で頷いてきた。

 すでに先行きの不安を覚えるが、この船に乗り込むと決心してしまった私の心に、私は溜息を吐き出した。

 そして座り込んだ魔物の方へ、体を向き直す。

「じゃあ、短い付き合いになるか、長い付き合いになるかは分からないけど、よろしく。私は、アキレア・ミレフォリウム。あんたの名前は?」

 よろしくの握手などする気はないので、腕を組んで踏ん反り返る。

「我? 我の名は、ラグゼル。貴様のことは・・・まぁ、アキとでも呼ぶとするか。我のことはラグゼルでも良いし、ラグゼル様と敬称をつけても良いし、まぁ好きに呼ぶが良い」

 魔物も別に私と握手する気はないらしく、ローブの下から覗いた魔術師らしからぬ無骨な手はフードの下に隠れた顎を摩った。

 ラグゼルと呼ぶとして、なぜ、人の名を略して呼ぼうとするのか。

 愛称として呼ぶ、という口ぶりでもない。

「なんでわざわざ略して呼ぼうとすんのよ?」

 咎めるのではなく、ただの疑問として投げかける。

「名は素を表すものであろう。我が人の名を呼ぶのと、貴様が我の名を呼ぶ、のでは違うものだ」

 アキ、と呼ばずに貴様と呼ぶこの魔物に対して、なんとも抽象的な返しに私は首をかしげるばかりだった。

 まぁ、魔物に明確な答えばかりを求めるほど親しくもないし、別に知ったからといって何かが変わるわけでもなし。

「まぁいいや。そう呼ぶ方がよければそう呼べばいいよ」

 そう了承すると、魔物はこっくりと大きく頷きで返してくるのだった。 

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