1.考査の勉強がありますので
その時間は間違いなく私の人生に必要ない。__霞原秘花
私は両親の顔を知らない。
どこで何をしているのかも知らない。
施設で暮らしながら私は、きっと両親はお金も社会的地位もそんなに無いのに勢いで恋愛して、うっかり私を作ってしまって育てられなくなったろくでなし共なのだろうと推測した。事故なら事故、病気なら病気と他の子には説明してくれる先生たちが、私の両親のことはひた隠しにするからだ。
同じ轍を踏むわけにはいかない、と思った。
施設にも迷惑をかけず早く独り立ちして、一流大学に入ってエリートコースを進むのだ。
そう決めた私の目に入ったある学園。なんでも、特待生はタダ同然で入学、勉強が出来て、さらに優秀成績を維持すれば大学進学の資金も援助される。特待生なら寮生活にも全然費用がかからない。大学進学率も申し分ない。
もともと成績は悪い方ではない。「未来の自分のため」と暗示を掛ければあら不思議、私は勉強マシーンだった。マシーンは狂わずに知識を吸収し、実行する。計算スピードも上がっていく。愛想はなかったがはっきりした物言いと礼儀正しさには定評があった。
そうして難なく学力試験と面接を突破して入学した、私立 臨実学園高等部。
この先もペースを崩すことなく勉強を続けて、エリートコースに着実に近づいていく予定の私が、こんな阿呆みたいな申し入れにこう答えたのは当然のことなのだ。
「魔法少女になって俺と世界を救ってくれ!」
「お断りします。私には考査の勉強がありますので」