第八十九話「墓参り」
「ん?」
見慣れた天井。
我が家。
現実世界か。
どうやらラーラが起こしてきた様子はないようだ。
ラーラが俺を起こしに来たら、俺がこんな風に現実世界に帰れるわけがない。
意味不明な必殺技で起こされてるからな。
しかし、ラーラも空気が読めるんだな。
まあいろいろあったもんな。
グレの死。
そして、石版を読んだときの俺の状況。
あんな、状況で豪快に俺の腹に肘打ちしてくる神経なんて、
さすがのラーラでも持ち合わせていないか。
さて、学校から帰った後。
母ちゃんと一緒に、父ちゃんの墓参りに行った。
「あなた。今日はなんと用太郎が来てくれてるわよ」
母ちゃんは嬉しそうに父ちゃんの墓に話しかける。
俺は父ちゃんが死んだとき、
父ちゃんの気持ちを考えたことが無かった。
ただ父ちゃんを憎み、
あいつのようには絶対になるもんかと思ったもんだ。
でも今は違う。
父ちゃんの気持ちが少しはわかるような気がする。
父ちゃんだって苦しかったんだ。
自殺するのだってそれなりの理由があったんだろう。
でも、俺は父ちゃんにそんな選択をして欲しくなかった。
俺でも母ちゃんでも、誰かに自分の悩みを打ち明けて欲しかった。
って、もう今更だな。
父ちゃん。
やっぱり俺、父ちゃんとは違うみたいだ。
クレスに自分の悩み。
打ち明けたくなくてもちゃんと打ち明けた。
父ちゃんにも打ち明けようと思う。
父ちゃん。
俺、どうしたらいいんだろう?
このままだと俺も死なないといけなくなる。
あの世で父ちゃんに会えるのは嬉しいけど、
母ちゃんを悲しませるようなことはしたくない。
どうしよう……父ちゃん。
俺はそんなことを考えながら墓前に手を合わせた。
「あなた。これ、あなたの好きなカレーよ。良かったら食べて」
母ちゃんが父ちゃんの大好物のカレーを墓前に添えた。
懐かしい。
父ちゃんとカレーを食べた日の思い出が蘇ってくる。
そういや俺、母ちゃんのカレーの中に入ってるピーマンが嫌いで、
父ちゃんによく食べてもらったけな。
ああ、懐かしい。
「用太郎」
懐かしい。
「用太郎?」
懐かしい。
「用太郎? 泣いてるの?」
「ああ、ごめんちょっと」
どうやら俺は涙を流してたみたいだ。
恥ずかしいな。
でも、今はいいよな。
俺は泣いた。
母ちゃんが俺を抱きしめてくれた。
俺は母ちゃんの胸の中でただ浸すらに嗚咽を上げ、泣き続けた。
その涙が止まるまで、とてつもない時間がかかった。
こうして父ちゃんの墓参りは終わった。




