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カードゲームで世界を救う!?  作者: ライプにっつ2
ゲームの世界と現実世界
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第八十八話「選択」


 ”第一に君の命が必要なこと”


 俺はその言葉に衝撃を受けた。

 俺の命が必要。


「アダム」


 どういうことだ?


「アダム!」


 俺の命が必要だなんて


「アダム!!」


 本当にどういうことなんだよ……。


「アダム!!!」

「はっ!!」


 クレスの言葉で俺は我に帰った。


「一体どうしたんだ?」

「それが……その……」

「その様子だと何か嫌なことが書かれているみたいだね」

「そうですね」

「これを言うのは酷かもしれないが、続きを読んでくれないか?」

「……」


 どうする俺?

 続きを読むか?

 しかし……。


「分かった。今はいい」


 クレスはどうやら俺の様子を察してくれたようだ。

 さすがクレス。空気が読めるナイスガイ。

 ってそんな冗談を言ってる場合じゃないな。


「さて、そろそろ戻ろう。アダム。気が向いた時でいい、石版の内容を全て教えて欲しい」

「分かりました」


 俺たちはイリジャ遺跡からグランガのSSSスリーエス本部まで戻っていった。

 空はもう夕方になっていた。


 道中、俺は石版のことで頭がいっぱいだった。

 どうしたらいいんだ。

 つまりあの方法を試したら皆が元の世界に戻ることができて、

 この世界に巻き込まれることもなくなるだろう。

 だけど俺の命が必要。


 ……無理だ。

 俺には自分の命を捧げる覚悟なんてない。

 俺が死んだら母ちゃんだって悲しむ。

 母ちゃんの悲しむ姿なんてもう見たくない。

 まあ死んだらその姿を見ることは無いが、

 母ちゃんが悲しむことは目に見えている。


 本当にどうしたらいいんだ……。


「アダム」


 クレスが俺の名前を呼んだ。


「ちょっと外に出てくれないか? 二人で何か話そう」


 クレスが俺にジュースを差し出してきた。


「重大なことですか?」

「いや、そうじゃない」


 クレスはそう言うと微笑した。


 俺とクレスは外に出た。


「僕は現実世界で科学者をやっていてね」


 クレスは語りだした。

 自分の生い立ちからこの世界にまで巻き込まれるまでのことや。

 この世界のエレーナにいろいろ助けられたことなど、

 いろいろと俺の知識欲を刺激するような興味深いことも語ってくれた。


「アダム。君があの石版で何を見たかは僕は分からない」

「……」

「ただ、出来ればだけどあの石版に書かれてたことを僕に教えて欲しい」

「……」

「それは僕がこの世界のことを解明したいってこともあるけど、それだけじゃない」

「……」

「僕も君と一緒に悩んでみたいんだ」


 クレスのその言葉に俺は自然と涙を流していた。

 そうだよな。一人で悩む必要なんてないよな。

 しかし、俺と一緒に悩みたいんだなんて、

 クレスにも優しい一面があるんだな。


 よし! 打ち明けよう。全てを。

 

 俺はクレスに全てを打ち明けた。

 俺の命が必要だということを。


 クレスはそれを頷くことも無く、黙って聞いていた。

 そして、しばらくして言葉を発した。


「そうか」


 クレスは話を続ける


「これは悩ましいことだな」


 クレスは微笑しながらそう言い放った。


「まあ無理に事を進める必要もないだろう」

「……」

「アダム。君が選ぶといい」

「俺が……ですか?」

「ああ、僕たちの為に自分の命を差し出すのか、差し出さないのか」

「……」

「それを選ぶのは君の自由だ。僕は君にそれを強いるような真似はしないよ」

「……」

「それじゃあ戻るか」

 

 選ぶのは俺の自由……か。

 ホント、どうしたらいいんだろうな。

 まあいい、急ぐ必要はない。

 ゆっくりと考えていこうじゃないか。

 


 


 俺たちは踵を返しSSS本部に戻った。

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