第八十五話「犯人」
現在俺はグランガの路地裏を歩いている。
悪い子がいないか探しているのだ。
「悪い子はいねがー」
ナマハゲみたいに路地裏を練り歩く。
「ん?」
後ろから殺気を感じる。
俺は後ろを振り返った。
そこには4、5人ほどの黒いローブを被った人物たちがいた。
彼らは右手に剣を持っていて、俺に向かって突進してくる。
大丈夫だ。
俺にはスライムちゃんを含めたモンスターがいる。
「出でよ!」
その言葉と同時に俺はモンスターを呼び出した。
やっちゃえ! 俺のモンスターたちよ!!
「ん?」
ローブを被った人達もモンスターを呼び出した。
召喚魔術師か?
でも可笑しい。
プレイヤーならまだしもNPCたちがこんな強力なモンスターたちを呼び出せるとは思えない。
このままでは俺のモンスターは負けるだろう。
モンスターたちには囮になってもらうか。
俺は逃げ出した。
しばらく路地裏を逃げ惑っていた。
撒いたか?
いや、違う。
敵のモンスターたちが俺を襲ってきた。
これはまずい!
このままでは俺は殺される。
その瞬間。
クレスが現れた。
「出でよ! ルシファー!!」
クレスのルシファーが敵のモンスターたちを殲滅する。
「クレス!?」
「どういうことだ?」
「ちっ逃げるぞ」
ローブを来た人たちもクレスが来ることは予想外だったようで、
逃げ出した。
ちなみに俺にとってクレスがここに現れることは想定内だ。
数時間前、俺がクレスに呼び出された時にクレスは、
俺の命が狙われるだろうという事を言ってきた。
理由は単純だ。
俺の存在を邪魔に感じている者たちがいるのだ。
このまま順調に事が運べば、皆が元の世界に戻れる日が近づいてくる。
つまりは、それを心良く思わない者たちの仕業だということだ。
クレスは転移が使えるようで出来る限り、僕の近くにいてほしいと言われ、
俺に発信機を渡してきた。
この発信機は持っているものが危険な目にあったらそれを知らせてくれる役割をもつ。
ちなみになぜクレスが転移を使えるかと言うと、
素早さが1000を超えてるからだ。
素早さが1000を超えると、転移が使えるアナウンスが流れるらしい。
この世界で素早さが四桁を超えてるのはクレス以外にはいない。
とまあこんな感じで事は片付いた。
実は俺が路地裏を歩いているのはそれも理由だ。
あえて、俺を狙う敵を誘き出していたのだ。
しかし、クレスは頭がいいな。
俺の命が狙われる事を予測できたのだから。
さて、朝を迎えた
俺はSSS本部に向かった。
「皆、集まったようだね」
クレスが言葉を発する。
「残念なお知らせがある」
辺りには重い空気が流れた。
「昨日、アダムの命が狙われた」
その言葉に皆、驚いた顔をしていた。
「犯人はこの中にいる」
辺りは静まりかえる。
「彼の存在を邪魔に思っている人たちがこの中にいるのだ」
「……」
「彼の命を狙ったものは挙手して欲しい。大丈夫、僕はそれをした人たちを責めるつもりはない」
誰も挙手する様子がなかった。
「そうか、残念だな。なら僕がこの場にいる犯人を言い当てようか?」
クレスはその言葉と同時にポケットからある物を取り出した。
「このペンなんだが」
「!!」
「これ、ミハエル。君のものだよね?」
ミハエルの名が上がった。




