第八十三話「勇者」
俺がグレに謝れる日は――
――永遠に訪れなかった。
今日の夜、グレの追悼式がSSS本部で行われた。
皆がグレに対してのそれぞれの思いを順番に吐露していた。
表立っては厳しいが根は優しいやつ。
仲間思いのいいやつ。
大体そんな感じなことを皆言っていた。
そして、俺の番が回ってきた。
俺は自分の思いを皆に打ち明けた。
「俺はグレを誤解していました」
「……」
「彼はただのクズニートだと思っていました」
「……」
「でもクレスさんの話を聞いたおかげで彼は立派な人だと言うことが分かりました」
「……」
「唯一、残念なことは……彼に謝ることが出来なかったことです」
その言葉と同時に俺は泣き出してしまった。
周りの皆もそれに合わせて嗚咽を発する。
そう、もうグレはいない。
俺はもう謝ることすらできない。
その現実がとても辛かった。
父さんが亡くなった時の頃を思い出す。
まさかこれほどの悲しみをまた味わう日が来るとは思いもしなかった。
「皆、ありがとう」
クレスが語りだした。
「皆の言葉を聞いて、グレも救われただろう」
「……」
「僕たちは早くこの世界のことを解明していかなければならない」
「……」
「グレのような犠牲者を出さないためにも」
「……」
「皆、協力してくれるね」
「はい!」
そう、俺たちは進まないといけない。
グレのためにも……。
グレの死。
まさかあんな奴の為に涙を流すとは思いも寄らなかった。
最初の出会いは最悪で、
その後も何かと揉めては喧嘩した。
そして、クレスから事情を聞いて仲直りしようとしたらこれだ……。
「解読班!」
クレスが何か叫びだした。
解読班? 何それ?
聞いてみるか?
「解読班って何ですか?」
「実はとある遺跡の宝箱に紙が入っていたんだよ。誰もこれを読めていないんだ」
クレスは解読班に調子はどうだと聞いた。
見た感じ手がかりは無しと言ったところだ。
クレスは解読班から紙を受け取る。
「この紙なんだけどね」
「見ても良いですか?」
「ああ、意味不明な字しか書かれてないけど、良かったら見てくれ」
俺はクレスが持ってる紙を受け取った。
この紙にはこう書かれていた。
「ようこそ勇者様。これが読めるということは貴方は勇者だ」




