第八十話「衝突2」
俺たちは現在地獄界でバウンドケルベロスリーダーと戦っている。
さて、俺はスライムちゃんを召喚した。
スライムちゃんは一生懸命体当たりしている。
現在の俺のスライムちゃんのレベルは182。
我ながら頑張ったと思うわ。
このスライムちゃんなら……いける!
俺はそう思った。
しかし、俺のその思いはいとも簡単に砕け散る。
やはりバウンドケルベロスリーダーは腐ってもレア度6。
俺のレア度1のスライムちゃんでは話にならないのだ。
それでも俺は諦めない。
頑張れスライムちゃん! 負けるなスライムちゃん!!
俺はスライムに何度もヒーリングをかけ続けた。
しかし、それを繰り返すたびに何度もスライムちゃんは倒れる。
バウンドケルベロスリーダー1体目の討伐が完了した。
俺のスライムちゃんの活躍が大きいだろう。
次リポップした時もスライムちゃんには活躍してもらうだろう
スライムちゃん、頑張れ!
「なあ、アダ太郎」
ん? 何? アダ太郎?
誰だそれ?
もしかして俺のこと?
なるほど。
俺のゲームプレイヤーネームはアダム。
本名は用太郎。
それを合わせてアダ太郎というあだ名になったのか。
しかし、何の捻りもないネーミングセンスだな。
45点。
「前も言ったけどお前ふざけてんのか?」
え? ふざけてる? どこが?
俺はスライムちゃんを一生懸命頑張らせてるんだが、
俺はその旨をグレに伝えた。
グレは
「それがふざけてるって言ってんだよ」
と俺に対して言い返してきた。
さらに畳み掛けるように
「そんなふざけるぐらいならパーティから抜けてくれないか」
と言ってきた。
意味が分からない。
さっきも言ったように俺はスライムちゃんに頑張ってもらいたくて、
スライムちゃんを戦わせているのだ。
それにこの狩りにはスライム育成も含まれている。
「俺たちはな。命かけてんだよ」
グレが真剣な顔でそう言いだした。
「何笑ってるんだよ、てめえ」
「え? 何でかって?」
まずい!
止まれ俺!
これ以上先は言ってはならない!
「教えてやるよ」
やめろ俺、
これ以上言うんじゃない。
「ここはゲームの世界」
俺の口は止まらない
「そんな薄っぺらい世界に命をかける?」
「……」
「笑わせんじゃねえよ」
「……」
「どうせお前は現実世界から逃げてるだけだろ?」
「何だと!!」
グレが怒りだした。
それでも俺の口は止まらない。
「よう、ゲームの世界のクズ野郎」
「……」
「こんな薄っぺらい世界に命かけて楽しいですか?」
「……」
「いくらこの世界で頑張ったって現実世界のお前は惨めなんだよ」
「……」
「いい加減気づいたら? グレネードランチャーさん」
俺のマシンガントークは続く。
「ってか何だよグレネードランチャーって」
「……もういい、何も喋んな」
「痛すぎんだろう」
「喋るな」
「いい年こいた大人が恥ずかしくないんですか?」
「喋るな」
「もう一度言う。現実世界のお前は」
「喋るなああああああ!!!」
グレはその後、出でよ! と叫び次々とモンスターを呼び出した。
そしてそのモンスターに俺を殺せと命じてきた。
「二人共やめて」
ミハエルが止めに入る。
しかし、グレが止まる様子は無かった。
俺もモンスター達を召喚する。
俺とグレのモンスター達が互いにぶつかりあった。
戦況はというと、俺の方に傾いていった。
クレスから貰ったキングレオタイガーのおかげだ。
俺のモンスターも次々死んでいったが、
グレのモンスターも残りわずかになっていった。
最終的には俺のモンスターが勝った。
「てめえ、クレスさんのキングレオタイガーをこんなことに使いやがって……」
「グレやめて! アダムも!!」
こうして俺とグレの喧嘩は終わった。
しかし、どうして俺はあんなことを口走ってしまったのだろう。
こういう結果になるのは分かっていたことなのに……。
バウンドケルベロスリーダー狩りは中止になった。
俺とグレのモンスターが壊滅的になったのと、
こんな状態では狩りも捗らないというメンバーの総意見でそうなった。
俺たちはSSS本部に戻った。
グレは俺と目も合わせもせず、
何も言ってくることが無かった。
ただ彼は少量だが、涙を流していた。




