第七十四話「豪快なラーラ」
「わあ、ここがギルドなんだあ!」
ラーラはギルドの看板を見てはしゃぎだした。
子供かよ。
いや、俺も初めて見るときはワクワクしてたもんだけどな。
「それでは街の外で車を待機させているので、ぜひお使いください」
「車!?」
「はい」
「ねえ、アダム。この世界に車ってあるんだあ」
ラーラは相変わらずはしゃいでる様子で喋りかけてくる。
「ありますよ。現実世界とは若干違いますが」
「へえ、どんなのかな? 見てみたい」
あっそうだ。
クレスに連絡するのを忘れてたな。
”アダム>>クレス:もしもし、クレスさん”
”クレス>>アダム:どうした? アダム”
”アダム>>クレス:新しいプレイヤー。あなたの元に連れて行くのに時間がかかります”
”クレス>>アダム:それは承知の上だよ”
”アダム>>クレス:いや、この世界を冒険したいとか言い出しちゃって……”
”クレス>>アダム:そうか? 出来ればでいいけど彼女をこのパーティに誘ってもらえないか?”
”アダム>>クレス:ダイレクトメッセージでもいいんじゃないですか?”
”クレス>>アダム:ダイレクトメッセージで思念を送るのは僕にとっては結構疲れることなんだ”
ふうん、俺は特に何ともないんだけどな。
”クレス:今他の人のパーティを外しておいた。これならいいだろう?”
今現在パーティは俺とクレスのみ。
なるほど。
三人で話し合おうと言うことか。
俺はラーラにパーティ申請を送った。
「ん? パーティ?」
「クレスさんが君と話がしたいって」
「クレスって誰?」
「SSSの会長だよ」
「SSSって何?」
「この世界を支援する組織だよ」
「この世界をどんな風に支援するの?」
質問攻めですかラーラさん。
「モンスターから街を守ったり、あなたのようにこの世界に迷い込んだ人を元の世界に戻すのもSSSの役目です」
「へえ! すごおい!!」
ラーラはまたはしゃぎだした。
「その組織、入りたい!!」
あのー。ラーラさん。
はしゃぐのはいいんですが、
そろそろパーティ申請を受理してくれませんかね?
俺はその旨をラーラに伝える。
ラーラはあっそっかっと言わんばかりにパーティ申請を受諾する。
”クレス:初めましてラーラさん”
”ラーラ:わあ、すごおい! 頭の中に文字が浮かびあがってるみたいだあ”
チャット欄でもはしゃぐラーラさん。
この子の現実世界での仕事ははしゃぎ屋だったのかな?
ってはしゃぎ屋なんてものはなーい!
思わず自分でボケて自分で突っ込んでしまった。
やるなこの子。
”クレス:初めまして、ラーラ。SSS会長のクレスだ。よろしく頼む”
”ラーラ:すごおい”
”クレス:ラーラ?”
”ラーラ:すごい! すごい! すごおい!”
ラーラのはしゃぎっぷりにはクレスも困り果ててるってことがチャット欄の向こう側から伝わってくる。
しばらくラーラははしゃいだ後、大人しくクレスの話を聞いてくれた。
先ほども言ってたとおりSSSという組織にも興味があるらしく、
組織に加入することになった。
しかし、この子、随分と豪快な性格をしているな。
とりあえずはしゃぎ過ぎだと思う。
さっさとこの子をクレスに引き渡して、スライム育成に戻りたいところだ。
それまでは我慢だな。
俺とラーラの冒険は続く。




