第七十話「再会」
俺はシャイリアに行く前にブラたちの居場所を確認した。
ブラたちは相変わらずペットリンという街にいる。
俺はそこに寄ることにした。
久しぶりにブラたちに会いたいなと思ってな。
いや、ブラというよりアダムスに会いたいかな。
彼にちょっと用がある。
ということで俺はペットリンという街に辿り着くと、
彼らを探しに街中を練り歩いた。
探すこと四十五分、やっと彼らを見つけることが出来た。
相変わらず四人パーティで頑張ってるみたいだ。
「おーい」
その言葉と同時に彼らは振り返った。
「あ、あれって」
「アダムだ!」
皆、俺を見ると喜びの表情を見せた。
「アダムか」
一人だけ嬉しくなさそうなやつがいる。
ブラだ。
彼とは前に会った時に決別した。
彼はゲームの世界を選び、
俺は現実世界を選んだ。
その違いが俺たちの間に大きな溝を作っていた。
「久しぶりだな! アダム」
「お久しぶりです! アダムさん」
ブラ以外の皆が俺に話しかける。
「皆さんのほうこそお久しぶりです」
俺たちは他愛もない会話を交わした。
彼らはここでギルドの依頼をこなし続けてること。
ほぼブラのおかげで何とかなってることなどを俺に話してくれた。
ミリーユは俺にもう一度女装してくれないかと頼み込んできた。
もちろん、丁重にお断りした。
「そういえばアダムスさん」
「何だい?」
「出でよ!」
「ちょっとまっ」
エディンが俺を止めようとする。
大丈夫だって、
俺が召喚したのは……。
「わあ! ちっさいワンコだあ!」
ベビーウルフなのだから
ベビーウルフはレア度1コスト2のモンスターだ。
最弱モンスターであるスライムとあまり差がない。
しかし、このモンスターは現実世界のカードバトルオンラインでは存在しない。
この世界限定のモンスターだな。
「よおしよしよしよしよしよし」
アダムスはどっかの動物好きの誰かさんみたいにベビーウルフを愛でた。
エディンはそれを見て呆れてる様子だった。
俺がアダムスに会いたいと言ったのはこれが理由だ。
ワンコ好きのアダムスならこのモンスターを召喚すると喜ぶと思ったのだ。
厳密にはワンコじゃなくてウルフだけどな。
まああまり変わらんだろう。
「アダムさんってこんな可愛いモンスターも召喚できるんですね!」
ミリーユが俺を褒め称えた。
あのーやめてくれません?
誰かさんの視線が痛いんですけど……。
そんなこんなで俺たちは時間を過ごした。
「さて、俺は行きますね」
「え? もう行っちゃうのかい?」
「俺たちのパーティに戻ってきたんじゃないのか?」
エディンとアダムスが口々に言う。
「俺はシャイリアに用がありますので」
「そうか、何をするか分からんがまあ頑張れよ」
エディンが俺を鼓舞する。
「はい! 頑張ります!!」
こうして俺たちは別れた。
いやあ、久しぶりに彼らに会えて楽しかった。
ブラとは全然会話が無かったけどね!
ということで俺はシャイリアへと向かう。
俺の役目はこのゲームに迷い込んだ人を助けるという重大な役目だ。
俺はクレスにその役目を与えられたことに優越感を感じた。




