第六十三話「ウマスギール」
やはりこの世界でも朝7時に起きるのが決まっているみたいだ。
さて、俺はスライム育成のためにギルドに赴く。
その矢先。
”クレス>>アダム:ちょっといいかな?”
クレスからメッセージが届いた。
”アダム>>クレス:何ですか?”
”クレス>>アダム:今日暇なら僕と一緒に地図作りでもしないかなと思って”
そういえば前もクレスは地図作りがどうのって言ってたな。
”アダム>>クレス:別に構いませんけど”
”クレス>>アダム:じゃあ9時頃SSS本部に来てくれ”
”アダム>>クレス:分かりました”
うーん。予定が狂っちゃったなあ。
まあいい。適当にそこらへんでもブラブラしておこう。
ブラだけに。
やべえ、ブラをディスるのが癖になってんなあ。
まあいいか、あいつはクズニートだし。
うーん。俺にはこの世界にいたがる人の気持ちが分からない。
俺だって現実世界で不幸なことが起こったりすることがある。
だからと言ってこんなゲームの世界がいいとは思わない。
いや、少しは分かるかもな。
俺は現実世界に友達がいるからいいが、ブラはいない。
恐らくグレもそうなんだろう。
だから自分たちが輝けるこのゲームの世界を選んだ。
しかし、本当にこのままでいいのか?
ブラもそうだが彼らにだって家族がいる。
家族を心配させて彼らは何も思わないんだろうか?
ただクレスだけは元の世界に帰りたがってるみたいだけどな。
クレスはこのことをどう思ってるんだろう。
一応聞いてみたほうが良さそうだ。
「ん?」
通りを歩いていたらレストランを見つけた。
しかし、この世界いろんな店があるなあ。
ペットショップがあったりレストランがあったり。
何というか冒険者ギルドがあるこの世界にこんな店があること自体違和感がある。
やはりゲームの世界だからか?
そのレストランの看板には”ウマスギール”と書かれていた。
妥当なネーミングだな。
俺はその店に入った。
「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりでしょうか?」
「この”ウマスギールカレー”お願いします」
「かしこまりました」
数十分ほど待ったあと。
ウマスギールカレーが出来上がった。
俺はそれを食する。
うん、味わかんねえ。
俺がこの世界が好きじゃないのは飯の味が分からないのもある。
俺は少しだけグルメな人間なのだ。
だからそこらへんも含めて現実世界のほうが俺はいい。
というか他のプレイヤーも飯を食ってたりするが味分かるんだろうか?
このことはクレスにも聞いたほうが良さそうだ。
「おっと、もう9時かあ」
地図作りかあ。
どんなことするんだろ?
楽しみだなあ。
俺は淡い期待を抱きつつSSS本部に赴いた。




