第六話「お試し」
さて、俺たちは武器屋の中に入った
中には女性の店員がいた
個人的な価値観だが武器屋に女性の店員がいるのは珍しいと思う
もっとこう、屈強な男性をイメージしていたのだ
「いらっしゃいませー」
武器屋の女性店員が挨拶をする
「なあ、ブラ」
「何だ?」
「ここの武器を買ったらどうなるか楽しみだな」
「何を言ってるんだ? アダム」
「え?」
「俺は武器を買いに来ただけだ」
「それはわかるよ」
今いち会話が噛み合っていない
「じゃあなんだよ、その楽しみって」
「え? いやお前がここの武器を買ったらカードになるか試そうとしてるかなあと」
「はあ?」
「そうじゃないの?」
「んなわけねえじゃん」
ブラは呆れていた
しばらくするとこう言い放った
「俺もお前みたいに武器が欲しいんだよ」
何だこいつ?
お前が持ってるから俺も欲しい
頭が幼稚園児としか言い様がない
だからニートなんだよ
と言いたかったけどやめた
また殺し合いになるのは避けたいからな
「店員さんあの木刀をください」
「150Gになります」
ブラが店員にお金を払う
店員はそれを受け取りレジの引き出しに入れた
事件が起きた
店員が木刀を取りそれをブラに手渡した
その瞬間
「へ?」
木刀が消えたのだ
「……」
辺りが沈黙に包まれる
これを見て俺は納得した
この世界では一般のNPC(俺はそう読んでる)は普通の武器を扱うことができるが
俺たち現実世界から来たゲームプレイヤーはカード(俺の例で言えば木刀カードとか)を人体コストのデッキにセットすることでやっと扱うことが出来る
つまり俺たちに普通の武器は扱えない
この事実が分かっただけでも俺にとって大きな進歩だ
何の進歩かは知らんが
「アダム、てめえ何嬉しそうな顔してんだよ」
「いや、何も」
「お前このこと知ってたのか?」
「いや、知らないよ」
「知ってたんだろ!!」
ブラは今にも俺の胸ぐらを掴みそうになった
「知らなかったのは本当だよ、ただこの世界の武器を手に取る時はどうなるのか知りたかっただけ」
「お前、俺を使って試したのか?」
「それは済まないと思ってるよ」
「俺の150Gがあああああああ!!!」
ブラはオーマイガ!! と頭を抱えた
その様はまるで外国人みたいだった
アメリカンだな
「でもマジックナイトリーダーがいるじゃん」
「それもそうだな!」
何だ? こいつ?? 切り替えはええええ
切り替え選手権があったらトップに立つレベルだ
気を取り直したブラを引き連れ
俺は武器屋を出た
さて、この事件の一番の被害者はあの女性店員であることは間違いない