第五十四話「改心」
「ここが俺たちのアジトだ」
俺はスパークに彼らの本拠地であろうアジトに連れてこられた
そのアジトは路地裏にあって
見た感じ酒場みたいな雰囲気があった
「さあ、入れよ」
俺は促されるままアジトの中に入った
見た感じ賊に似合っていてどす黒い印象を受ける
「ボス、例の男を連れてきました」
「ほう、こいつが例のスライム男か」
このアジトのボスであろう人物が俺に近づいてきた
何? 胸ぐら掴んだりして脅すの?
とりあえず警戒はしておく
いざとなったらスライムちゃんに活躍してもらおう
ボスは俺の顔をマジマジと眺める
その目つきは鋭かった
やはり胸ぐらを掴むのだろうか?
そういったパターンになってしまうのだろうか?
緊張の一瞬……
「ふう~」
ボスが何か吐き出すような雰囲気で息を吸い込んだ
次発言する言葉はきっと悪いことに違いない
俺は覚悟を決め
緊張を解かずにそのまま対峙する
さあ、バチコーイ!
「あれ?」
急にボスが俺の目の前で土下座してきた
「ちょっ! 何やってるんですかボス!」
スパークがボスを諌める
「いいからてめえらも土下座しろ!!」
ボスのその大声に周りのいかつい集団たちは次々と土下座した
何? この展開
俺は別にこの紋所が目に入らぬか!!
ってどこかの誰かさんみたいに叫んだわけじゃないが
「お願いだ! これ以上俺たちの縄張りを荒らさないでくれ!!」
確かに俺は夜中に路地裏を歩いてはスライムを使い悪そうな人を脅してきたからな
言いたいことは分かる
特にこの街は治安が悪い気がしたのでより一層警戒を強めてきた
「すいませんが。それは無理です」
「やはり……そうか……」
「ただ、悪さをしないのであれば俺はあなたがたを脅かすつもりはありません」
「だけど俺たちそれでしか生きていく術がないんだよお!!」
ボスはその言葉を発した途端
嗚咽を上げた
周りの皆もそれに合わせる
なにこれ?
構図だけ見たら俺が悪党みたいじゃん
「ならこれならどうですか?」
「何だ?」
「俺がお金を稼いであなたがたの支援をする」
「ほお」
「それであなたがたは更生し社会で生きていけるように頑張る」
「……」
「それが嫌なら交渉決裂、俺のスライムがあなたがたを完膚無きまでに叩きのめすでしょう」
「分かった。その条件……飲もう」
「ちょっと待ってくださいボス!」
スパークが口を挟んできた
「俺たち今まで何のためにこの組織にいたと思ってるんですか?」
「何が言いたい」
「今の生活を変えろだ何て無理です」
ふむ
確かにそうだな
人間今まで慣れた生活を捨てて
新しく生きろだなんて言われても到底無理だ
けれど……
「これ受け取ってください」
「な!?」
俺はボスに袋を渡した
「どうしたんですか? ボス」
「100万G入ってやがる……」
ボスのその言葉に周りのいかつい集団は驚きを隠せないようだ
金ならキースと依頼を受けまくって嫌というほどたくさん稼いできたからな
「ありがてえ、恩にきるぜ」
「いえいえ、しばらくこれで食いつないでいてください」
「ああ、そうさせてもらう。皆もいいな!」
「……」
周りのいかつい集団たちも最初は迷っていたが
最後には
「分かった」
と納得してくれたようだ
「では俺はこれで失礼します」
「ああ、ありがとな」
こうして一段落ついた
もうこの街の路地裏はしばらくの間は安全地帯となるだろう
「さて、これからどうしようかな?」
正直言って路地裏探検で賊をやっつける以外にやることと言えば一つしかない
「スライムでも育成するか」
現在俺のスライムは70レベ
普通の人間よりは強い
しかし、やはり俺の持っている他の魔物たちよりは全然弱い
しばらくはこのスライムの育成に手間をかけることになりそうだ
いつか皆にスライムが最強だということを思い知らせてやる
俺はそんな野望を胸に秘めスライム育成に励むのだった




