第五十三話「ラップバトル」
「俺とラップバトルをしろ」
その言葉を聞いた瞬間俺の中で驚いたというか呆れたというかよくわからない感情が湧き上がってきた
ラップバトルか
そんなの受けるわけ
「いいでしょう。受けて立ちます」
受けちゃいました
自分でも何言ってるか分からないがまあいいだろう
「もし俺が勝ったらこれ以上俺たちの縄張りを荒らさないこと」
「俺が勝ったら?」
「もしてめえが勝ったら何でも一つ言うこと聞いてやるよ」
ん? 今なんでもって言ったよね?
まあどの道相手の土俵だし俺が勝つことはないだろう
でも俺は約束は守るとは言ってない
つまりラップバトルで負けたとしても
俺はこいつらの言うことを聞くつもりはない
正に外道なわけだが
そんなこと知ったこっちゃない
ということで俺はこのいかつい集団に連れられて目的地へと向かった
道中
「頼むからその不気味なモンスターどうにかしてくれねえか」
と言われた
俺のスライムちゃんを不気味と抜かすかこやつめ
スライムちゃん
俺にとってスライムちゃんは天使だよ
不気味なんかじゃないよ
そうこうしているうちに目的地へと辿り着いたみたいだ
そこにも結構な数の人がいて
その人たちはこのいかつい集団を見るやいなや
「あっ! スパークさんちーすっ!」
と声をかけてきた
その人たちが声をかけている人物は
俺にラップバトルを挑んだ人物だ
彼、スパークっていう名前なのか
俺が今まで聞いた名前の中でかっこいい名前ベスト3に入るだろうな
そんなこんなでラップバトルが始まった
「頑張れえ! スパークさああああん。あんな雑魚やっちゃってー」
という歓声が聞こえてきた
誰も俺を応援してくれる人がいない
まあ当然ちゃっ当然だが
…………数分後
スパークのラップが終わった
うん、いいディスりっぷりだった
どこが良かったかって?
んなもん知るか
ってかラップってあれだろ?
YO! YO! とか言ってればいいんだろう?
んなもん中学生の俺でも出来るわ
「ほら、てめえのばんだぜ」
そういってスパークは俺にマイクを投げ渡した
ここから俺のラップが始まる
まずはディスりたい相手を指定する
「YO! YO! ブラ(ディスりたい相手)は人を口説くのがうまいYO!」
そしてそいつを思いっきり貶す
「だけどあいつは屑ニーTO!」
最後に
「お前らも……そんな大人にはなるなYO! YEAH」
決まった
これが俺流ブラ下がりラップ術だ!
ブラがこれを聞いたらショックのあまり気絶してしまうだろう
しばらく辺りは静寂に包まれた
「何だあの下手くそなラップ」
「しかも誰ディスってんだか」
辺りは大爆笑の渦に包まれた
良かったなブラ
笑いが取れて
「YO! YO! 俺の負けだYO」
「まだ続けてやがるし」
俺はスパークにマイクを投げ返した
スパークはマイクを受け取った後
「このポンコツがいいと思ったやつは拍手」
俺をポンコツ呼ばわりとは
あんまり酷いこと言うと
俺のスライムが暴走しちゃうぞ!
さて、俺の負けは確定だと思ったが
意外にも拍手が多かった
「この俺スパークがいいと思ったやつは拍手」
スパークにも拍手が多かったが
俺への拍手とそこまで大きな差がなかった
「どうやら引き分けみてえだな」
スパークはそう言い放った後
「もう一回勝負するか?」
と俺に聞いてきた
「いやもうあなた様にはかなわないYO!」
「もうラップバトル終わってんだが」
「どうやらラップが癖になっちゃったみたいだYO!」
「ギャハハ、おもしれえなお前」
スパークはしばらく考える素振りをしながら俺にこう言い放った
「気に入った。お前を俺たちのボスに会わせてやんよ」
こうしてラップバトルは終わったわけだが
俺はどうやらスパーク様に気に入られたらしい
ってかこいつがボスだと思ってたが違うのか
もしかして罠か?
わざとアジトに連れ込んで俺を取り囲み集団リンチをするつもりか?
でも口調から察するに普通に歓迎してくれてるような気がする
どちらにしろ俺にとっては好都合だ
もし仮に罠だとしても俺のステータスは高いし
こいつらをぶちのめすことは可能だ
いや、待てよ
もし仮にこいつらのボスがプレイヤーだった場合
俺はそいつに勝てるのか?
ああ! もう! 考えるだけで頭が痛くなる
とりあえず相手はわざわざボスに会わせてやると言ってくれてるんだ
その好意は受け取るべきだろう
それに下手な態度に出なければ何とかなるだろう
こうして俺はスパークにボスがいるアジトに案内されたのだった




