第五十話「足りないもの」
目を覚ます
見覚えのある天井だ
グランガの宿だ
俺は早速フレンドリストを表示しクレスの名前をクリックする
”クレス イニシガの森”
どうやら彼はまたどこかに行っているらしい
まあ彼はSSSという組織の会長だしいろいろ忙しいのだろう
さて、俺は特にやることもないので軽く依頼でも受けようかと思いギルドへ向かった
別にこのまま寝て元の世界へ戻っても構わないのだが折角この世界とあの世界を行き来出来るようになったんだ
楽しまないとな
しかし、いいな
ゲームの世界に飽きたら元の世界に戻れて
元の世界に飽きたらゲームの世界に行ける
実にいい
しかもこの機能俺だけしか使えないということが特にいい
ギルドの扉を開ける
「おっアダムじゃーん」
中には見覚えのある顔
キースだ
ちなみに彼の本名はキース・アレクサンダー
アメリカ人だ
クレスもそうだが
外国人は何故かゲームの名前でも自分の名前を使うことが多い気がする
きっと自分の名前に自信があるのだろう
羨ましいぜ
俺なんて用太郎とかいう地味な名前だ
ちなみに母ちゃんに名前の由来を聞いてみたが”直感”だそうだ
酷いったらありゃしない
さて、俺はキースと共にギルドの高難易度の依頼を受け稼ぎに行っていた
おかげ様でお金も溜まりモンスターも強くなっていった
だけど何かが足りない
何だろうこの虚無感は
俺に足りないもの……何だろうか?
俺は四六時中その事について考えていた
キースには
「お前、俺の話聞いてる?」
と言われるほどだ
しかし、俺の上の空は止まらない
俺に足りないもの……
俺に足りないもの…………
俺はまたキースと共にギルドサービスの車に乗り討伐依頼の目的地へと向かっていた
俺に足りないもの……
俺に足りないもの…………
ダメだ
思いつかない
もういいや、諦めよう
ふと車の窓から平原を眺める
あっ、思い出した
スライムだ




