第四十四話「説得」
俺はグランガという街に向かった
無論、全力疾走でだ
この体は疲れるということを知らない
だからずっと走ることが出来る
エレンゲルト
バインハイン
この二つの町を経由した
そしてやっとグランガという街についた
フレンドリストを表示しクレスという人物をクリックする
”クレス 地獄界”
辺りはもう夜だった
クレスは何をしているのだろうか?
友達と地獄界で狩りでもしているのだろうか?
ポ○モンでいう四天王ループみたいな
それともこの世界に迷い込んだ人々を元の世界へ戻すためにまた地獄界へ向かっているのだろうか?
ともかく今は彼とは会えない
そう言えば彼はどうして元の世界へ帰らないのだろうか?
この世界に迷い込む人を助けるため?
それともこの世界の問題を解決するためだろうか?
とりあえず彼にも現実世界での出来事を伝えなければなるまい
しかし、今日はもう遅いし
彼に会うのは明日の朝からでもいいだろう
街中を歩いてみる
この街を見ていると頭上にHPMPパラメータ表示している人たちを何名か見かけた
俺はそれらの人々に話しかける
「あのーすいません?」
「何?」
「元の世界へ帰ったほうがいいですよ、大変な状況なんです」
俺は皆を説得した
でもダメだった
理由はブラと似たようなものだった
”俺にはこの世界で役割があるから戻れない”だの
”この世界にいるのは楽しい”だの
どうして皆元の世界に帰らないのだろう
家族も友達もいるはずなのに……
俺はギルドに立ち寄った
「おっ新入りのプレイヤーか」
一人の男が俺に話しかけてきた
「あなたも元の世界へ帰ったほうがいいですよ 大変な状況なんです」
何か宗教の勧誘みたいだな
これを信じないと大変な状況になります
と言えば完全にそれだ
まあ脅しじゃねえし実際そうだしな
「なんでえ? 元の世界の俺はどうにかなっているのか?」
俺は説明した
クレスという人物と出会ったこと
彼が俺を元の世界へ戻す手伝いをしてくれたこと
元の世界に戻った俺は病院の上で寝てたこと
ネトゲ友達の家に電話したらその友達も入院してたこと
俺はこのことをこの世界のプレイヤーたちに伝えたいと思ったこと
そしてしばらくカードバトルオンラインを続けてるとこの世界へ戻ってきたことなど
「ということなんです」
「なるほどなあ」
男はしばらく考える素振りを見せるとこう言い放った
「悪いが俺は元の世界に帰るつもりはねえ」
ですよねー
「だが面白い話を聞かせてもらった。お礼にてめえの狩りを手伝ってあげてもいいぜえ」
「はあ」
「俺はキースってんだよろしく頼むな、まあ名前は見えてるだろうけど。な? アダム」
「よろしく頼んます」
とりあえず俺は今日はこの男と狩りを楽しむことにした
フレンド登録をしパーティを組む
クレスには明日になればまた会えるだろう
まだ話しかけてないプレイヤーたちも大勢いるはずだ
俺は一人でも多くのプレイヤーたちを救ってやりたい
そんな勇者みたいな気分をぶら下げて俺は街の外に出てギルドサービスの車に乗るのだった




