第四十三話「決別」
あれから10日
俺の日常に何ら変化はない
毎日学校へ行き
家に帰ったら家事の合間にカードバトルオンラインというゲームをやる
「やっぱりダメなのかな?」
俺は半ば諦めかけていた
やはりこのゲームを続けてもあの世界へは行けないのだろうか?
もう諦めて普通に生活したほうがいいのではないか?
まあまだ早い
別にいやいやこのゲームをやっているわけじゃないしな
「ん? もう11時か」
そろそろ寝ないとな
俺はパソコンを消し
ベッドに横になり
目を閉じた
「ん? ここは?」
俺はいつの間にか平原に立っていた
見覚えのある場所だ
まさか……まさかな
「おお!」
目を瞑るとゲームのメニュー画面
そう
俺はこのゲームの世界に戻って来れたのだ!
俺はフレンドリストでブラとクレスの居場所を確認した
ブラはペットリンの宿屋
クレスはグランガのSSS本部
「そうと決まれば!」
俺は走った
今の俺の素早さなら走ることが出来る
初めの街シャイリア
雪街ザルガダガナ
女装の街ベルミッツェル
これらの街を経由した
そしてやっとブラがいる町ペットリンへと辿りついた
もう一度フレンドリスト確認する
”ブラックドラゴン ペットリン 街中”
ほう、街中か
もしかしてミリーユと手を繋いで歩いてたりして
俺はペットリンの街中を歩きブラを探す
「!!」
予感は的中した
ミリーユと手を繋いだブラが歩いていたのだ
何か俺、妙に勘がいいな
まあそんなことはどうでもいい
「ブラ!」
「な!? アダム!?」
「アダムさん!」
俺の存在に気づいた二人
ブラは驚いたような顔をしていた
ミリーユも嬉しそうだ
「お、お前」
「すまんミリーユ、ちょっとブラと二人で話がしたいんだけどいいかな?」
「え、ええ、いいですけど」
ミリーユの了承はとった
「行くぞ! ブラ」
「ちょっ! アダム」
俺はブラの手を半ば強引に引き路地裏に連れ込んだ
「俺にそういう趣味は無いぞ」
「ふざけてる場合じゃない!」
ブラも俺の雰囲気を感じ取ったのか真面目な顔になっていた
さっきまでミリーユと手を繋いで鼻の下伸ばしてた癖にな
「で? 話って何だ?」
「ブラ大変なんだよ! 現実世界のお前は!!」
俺はブラに説明した
あれからクレスの助けを借りて地獄界のヘルフェスを倒し現実世界へ戻ったこと
気がつけば病院のベッドの上にいたこと
ブラの母ちゃんに電話をかけると現実世界のブラは病院で入院中だということ
ブラは驚いたような顔をしたがすぐ元の顔に戻った
「なあブラ、俺と一緒に元の世界へ帰ろう」
「……」
「お前の母ちゃん、お前のこと……とても心配してたぞ」
「……」
「な! ブラ」
「……断る」
「え?」
俺は言葉を失った
「どうしてだよ! お前言ってたじゃねえか! 母ちゃんのために頑張ってテスト満点とったりしてたんだろう!?」
「それがどうした」
「どうしたってお前……」
「俺にとってはこの世界での生活のほうが大事だ」
「こんなゲームみたいな薄っぺらい世界の方が大事だっていうのか?」
「お前のその言い方、何か気に食わないな」
「事実だろ」
「少なくとも俺にとってはこの世界は薄っぺらくなんてないさ」
「……」
「話はそれだけか? 俺はミリーユとのデートで忙しいんだ。じゃあな」
「……この、薄情者!!」
ブラは俺のそんな言葉に足を止めることなく去っていった
見損なったよブラ
お前も俺と同じように母ちゃんを大事にしていると思ってた
なのにお前はこんなゲームみたいな薄っぺらい世界を選んだ
まったく……ふざけてやがる
まあいい
俺はもうあいつとは決別したんだ
あいつがこの世界がいいと言うなら無理に止める理由もない
次はクレスか
他のプレイヤーにも現実世界での悲劇を伝えないとな
俺はグランガという街へ足を運んだ




