第三十八話「魔王ヘルフェス」
俺たちは地獄界へと続く階段を降りていった
しかし、電球やロウソクといった明かりがあるわけではないのに
妙に明るい
俺は疑問に思い壁をよく見る
「…………!」
俺は壁を見て驚いた
壁自身が発光しているのだ
「随分珍しげに見ているね」
クレスが俺の様子に気がついたのか声をかけてきた
「はい、すごい壁だなあと」
「僕もそう思う、この壁がどうやって出来ているのか興味がある」
俺たちはそんな他愛もない話をしながら階段を下りる
「ん?」
目の前に扉が見えてきた
「そろそろだね」
「この先にヘルフェスがいるんですよね?」
「ああ、でもその前に戦わないといけない敵がいる」
戦わないといけない敵?
ああ、四天王みたいなものか
「それじゃあ開けるよ」
クレスは扉を開けた
俺とクレスはその先へと進む
「ガルルルルルルルル」
目の前にはハウンドケルベロスリーダーがいた
ちなみにハウンドケルベロスはレア度5コスト20
レア度4コスト15のケルベロスの上位種で
カードバトルオンラインでは廃人が持っているようなモンスターだ
ただハウンドケルベロスの上位種はいない
だけどこの世界ではそのリーダー格がいるみたいだな
まあクレスのルシファーというレア度6のモンスターがいるぐらいだしね
「出でよ! ルシファー」
クレスは叫び声をあげルシファーを呼び出す
「!!」
一瞬の出来事だった
ハウンドケルベロスリーダーの前に黒い影が通ったかと思ったら
ハウンドケルベロスリーダーは体中から出血し血まみれになって倒れたのだ
「さて、次へ行こうか」
ちょいと兄さん軽すぎやしません?
もっと白熱した戦闘が見られると思ったのにい
俺の脳内でハウンドケルベロスリーダーを討伐した報酬としてガシャが与えられる
20回も回せるのか
ありがたやありがたや
別にこの世界にはもう用は無いが
ガシャというものは引くためにあると言っても過言ではない
そこで俺はガシャを引くことにした
結果を言おう
レアらしいレアは出なかった
ただ一つだけ珍しいと思えるカードが
”レア度1コスト0コスト上限UP”
このカードが15枚も出た
俺はこのカードを一枚ほど人体コストに設置してみる
人体コスト100/101
モンスターコスト29/101
なるほどクレスはこのカードを利用してコストの上限を上げたわけか
「次行くよ」
クレスのその言葉と同時に俺たちは次の部屋の扉を開ける
次の魔物はパズズ
魔王の名だ
しかし、クレスのルシファーはその魔王を赤子の手を捻るかのように倒した
「クレスさん、ヘルフェスにたどり着くためにはあと何体こう言った魔物を倒せばいいんでしょうか?」
「あと2体だね」
あと2体
やはり四天王というわけか
次の敵はラーヴァナ
こちらも魔王
しかし、ルシファーの前にあえなく撃沈
さて四天王最後の敵はイブリース
こいつも一瞬で倒されたがハウンドケルベロスリーダーよりは手ごわいような感じがする
一瞬だけどね
「ついに最後だね」
クレスはワクワクする様子も無く
不安げになる様子もなく
そう言った言葉を発する
俺としては不安である
というのも前の四天王は見た目に威圧感があったからだ
まあクレスの持っているルシファーのほうが威圧感があるが
果たして魔王ヘルフェス
こいつはどれだけ威圧感を持っているのか
ある意味楽しみである
俺たちは最後の扉を開ける
その中には魔王ヘルフェスがいた
グリフォンの様な姿をしている
しかし、普通のグリフォンよりは数倍デカイ
予想通りバリバリな威圧感だ
「良くぞここまで来たな」
うん、魔王らしいセリフである
「褒めてやr」
魔王ヘルフェスのその言葉の前にルシファーがやつに襲いかかった
言わせてあげて!
最後まで言わせてあげて!
しかし、さすがラスボスというべきか
粘り強い
と言っても戦況がどちらに傾いているのか分からない
ヘルフェス、ルシファーどちらの動きも速すぎて目が追いつかないからだ
これがヤ○チャ視点というやつか
しかし、しばらくすると勝負が決まった
勝ったのはクレスのルシファーだった
「うーんHPは残り半分か、まあ上出来だ」
クレスが独り言を呟く
ヘルフェスが倒れたと同時に
奥の方が輝きを放った
俺たちはそこに近づく
近づくごとにそれが何か分かった
魔法陣だ
「この魔法陣に乗ると元の世界へ帰れる」
「……」
「この世界に何か心残りがあるかい?」
「心残りが無いと言えば嘘になります」
「……」
「ですが、俺にとってはやはり母の方が大事です」
「そうか、では魔法陣に乗ればいい」
俺は言われた通り魔法陣に乗ろうとした
「ちょっと待って」
クレスが俺を呼び止める
「何でしょうか?」
「元の世界へ戻ったらその世界の人間にこのゲームをプレイしないように伝えて欲しい」
「……分かりました」
「頼んだね、それじゃあさようなら」
「さようなら」
クレスはこれ以上この世界に元の世界の人間が巻き込まれないよう
俺に使命を与えた
まあこれはどうせ夢だ
元の世界へ戻ればいつもどおりの生活が待っている
朝目が覚めていつもどおり支度して学校へ向かって
友達とワイワイガヤガヤと騒いだり
嫌いな先生にダイナミック浣腸をお見舞いするのだ
うん、そうに決まっている
俺は魔法陣に乗った




