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第三十六話「別れ」


「そうか、残念だな」


 アダムスは悲しそうにそう言い放った


「すいません、いろいろとお世話になったのに」

「なに、世話になったのはこっちのほうだ気にしないでくれ」

「なあ、お別れ会やらないか」


 エディンがそう提案してくれた


「すいません、急いでますので」

「そうか、ならいいんだ」


 エディンも悲しそうだった

 ミリーユは


「行っちゃうんですかアダムさん」

 

 と言い小粒の涙を流した

 まあせいぜい女装姿の俺の写真を見て、懐かしむことだな


 ブラは……終始無言だった

 なんだよ、本音をぶつけ合った友達なのに一言も無しかよ

 いや、あえてそうしているのかもしれない

 あいつも心の中では悲しんでいるのだ

 そう思いたい


 俺も彼らと別れるのが悲しい

 やはり今まで共にしてきた仲間と別れるのはどこの世界でも悲しいものだ


 ブラは元の世界へは帰らないと言った

 恐らく彼はミリーユといることが幸せなのだろう

 あとこの世界は魅力的でもある

 モンスターを召喚することも出来るし

 モンスターを召喚出来れば召喚魔術師としてもてはやされるしな


 俺ももう少しこの世界にいたい

 だけど現実世界の母ちゃんのほうが心配だ

 

 ということで俺は悲しげな仲間たちの視線を背にギルドを出ていった

 そして街の外へと向かう

 街の外ではクレスがまた何か考え事をしてるかのような姿勢で待っていた


「お待たせしましたクレスさん」

「仲間と別れるのは辛くないかい?」

「ええ、辛いです」

「それでも君は元の世界へ戻るのかい?」

「ええ、母が心配ですから」

「まあそう思うのが自然なんだよね」

「それにしてもクレスさん、本当に元の世界へ戻れるのですか?」


 俺は疑問をクレスへとぶつける


「元の世界へと戻りたいと思う人物にはあるアナウンスが流れてるはずだよ」


 俺はそのアナウンスを思い出していた

 確か”元の世界へはある条件を満たすことで戻ることができます、その条件とは地獄界にいるヘルフェスという魔王を倒すことです”

 といったアナウンスだ


「ヘルフェスという魔王を倒すんですよね」

「ああ、そうだね」

「しかし、地獄界というとどこにあるんでしょうか?」

「グランガという街に着くとアナウンスが流れると思うけど」

「……」

「その街の路地裏にある扉があって」

「……」

「そこの扉を開けると地獄界へと続く階段がある」

「なるほど」

「さて、グランガへと向かおうか」

「あ、はい」


 俺たちはグランガという街へと向かう

 って


「うわっ」

「ちょっと我慢してね」


 クレスは俺を抱きかかえた

 どういうつもりだ


「!!」


 その途端クレスは凄まじいスピードで移動した

 まるでジェットコースターに乗った気分だ

 うわああああ

 目~が~ま~わ~る~

 

 この構図を頭上から眺めれば大変シュールに映るだろう

 何せ一人の少年を抱きかかえた男が新幹線のようなスピードで移動し

 道中にいるモンスターを轢き殺しながら進んでいるのだから


「はい、着いたよ」


 ということでグランガという街に辿りついた

 ホント、あっという間だな

 夜にもなってないし


 グランガという街の外では一人の女がいた

 その女はクレスを見た途端


「お帰りなさい、クレス」


 と言葉を発した

 

「わざわざ待っていてくれたのかエレーナ」


 クレスがそう言い返す

 

 エレーナ

 ブラが言っていたな

 超絶美人だと

 確かに彼女はその言葉がよく似合う

 しかし、彼女には近寄りがたいオーラが出ていた

 もうちょっと可愛げにしてたらモテるんじゃないかな?

 まあそんなことは置いといて


「そちらのお方は?」


 エレーナという人物が首を傾げてクレスに尋ねた


「ああ、アダムというんだ、元の世界へ帰りたがっている」

「そうですか」


 エレーナは俺に近づくと


「初めまして、私はエレーナと申します」


 と美しいお辞儀をしてくれた


「あ、初めましてアダムです」


 俺もお辞儀し返した


「エレーナ、僕は彼を元の世界へ戻すために地獄界へ行くよ」

「仲間と行ってもいいのでは?」

「いや、僕のルシファーなら大丈夫だ」

「そうですか、では気をつけて行ってらっしゃいませ」

「ああ、行ってくる」


 とうとう元の世界へ戻るのか

 ついに俺の望みが叶うのだ

 

 ふとこれは夢なんじゃないかなと思うときもある

 この世界へ来たこと

 仲間たちと出会い冒険したこと

 全ては夢……


 まあそんなことはどうでもいいか

 俺は元の世界へ戻れることに安寧の念を覚えながらグランガという街に入るのだった

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