第三十五話「問答」
俺とクレスはギルドから外に出て話し合いを始めた
クレスという人物
彼は威圧感がある
私の戦闘力は53万ですと言わんばかりに
その威圧感は彼の黄金の装備によるのかもしれないが
彼自身にもそれを感じる
こういうのをカリスマ性って言うのかな?
俺は国語を知らんのでどうでもいいが
「単刀直入に聞くが君はどうやってこの世界で来たんだい」
なるほど的を得た質問だ
彼はまるで情報を集めるかのように俺に尋ねた
「寝てたらいつの間にかこの世界に来てました」
彼はふうむといいながら顎を手に当て考える素振りをした
「イレギュラーだな」
彼はポツリとそう呟いた
「イレギュラー……ですか?」
「ああ、僕はこの世界に来た人の情報を集めているんだけど」
「はい」
「寝てたらここに来たっていうのは君が初めてだ」
「へえ」
何? 俺だけ特別って感じ?
いいじゃん、それまじいいじゃん
って調子に乗ってる場合じゃないな
「他の人はカードバトルオンラインというゲームをやっていたらいつの間にかこの世界に迷い込んだと言っていた」
「それはブラもですか?」
「ああ、ブラも僕もそうだ」
なるほど
「ちなみに君もカードバトルオンラインはプレイしたことがあるんだよね?」
「ええ、そうですけど」
クレスという人物は相変わらず顎に手を当てながら考える素振りを続ける
「ならカードバトルオンラインをプレイしたことがある人は皆対象ということか」
「対象?」
「ああ、君の事例を考えると一度プレイしたことがある人物でもこの世界に巻き込まれる可能性……」
「…………」
「ちなみに君はどれだけカードバトルオンラインをプレイした?」
「家事の合間にプレイするといった感じでした」
「それなら君もこのゲームにはまっていたということで間違いないんだね?」
クレスは畳み掛けるように俺に質問してきた
質問厨だな
いかんいかんふざけてる場合じゃない
元の世界に戻る大事な話をしているのだから
「はい」
「実はこの世界に迷い込んだプレイヤーは皆このゲームにはまっている人たちだけなんだ」
「ほお」
「ただ君一人だけこの世界に来るパターンが違っていた」
「一つ質問いいですかクレス様」
「クレスでいいよ」
「じゃあせめてクレスさんと呼ばせてください」
「分かった、それで何が知りたいんだい?」
「この世界に二度迷い込む人物はいたんでしょうか?」
「なるほど、最もな質問だ」
クレスはしばらく間を空けこう言い放った
「今のところ一人もいない」
「へえ」
「元の世界へ帰った人物がカードバトルオンラインをプレイし続けてるかどうかは知らないけど」
「……」
「そういった人物は一人もいない、今後はどうか分からないが」
しかし、クレスという人物考えてる姿が様になる
考える人という像を思い出す
そのうち考えるクレスという像がこの世界に作られそうだ
ってまたふざけようとしているな俺
まあそういう性格だから仕方ないが
表に出さないだけマシだと思おう
「他に質問は?」
クレスが俺に尋ねる
「質問ではないですが」
「うん」
「元の世界に戻りたいですね」
「そうか、君は元の世界へ戻りたいか」
「ええ」
「分かった、僕はSSS会長として君を元の世界に送り届けることを約束しよう」
「あのーまた一つ質問が出来ました」
「何だい?」
「SSSって何ですか?」
「ああ」
クレスはしばらく考えた後こう言い放った
「SSSは最近立ち上げた組織だけど」
「……」
「この世界に迷い込んだ人たちを元の世界へ返したり、この世界の問題を解決する組織だ」
「問題というと?」
「さっきあった魔物の襲撃もその一つかな」
なるほど
しかし、魔物の襲撃にすぐ駆けつけるだなんて
クレス様様だな
皆が彼を尊敬することがよく分かる
エディンも彼には恩があるって言ってたし
「ちなみにSSSは世界総合支援隊の頭文字をとった名前だ」
SEKAI S
SOUGOU S
SIENTAI S
それでSSSっていうのか
世界総合支援隊
この名前がダサいと思うのは俺だけか?
まあSSSというかっこいい名前に変わって良かったねえといった感じだ
「他に質問はあるかい」
「いえ、もうないです」
「それじゃあ君を元の世界へ送り届けよう」
「ちょっと待ってください」
「ん?」
「仲間たちに別れを告げたいなと思って」
「そうか分かった」
クレスは了承してくれた
そして
「街の外で待ってるよ」
といいその場を後にした
さて、仲間たちに別れの挨拶か……
少し寂しいが元の世界へ帰る方が大事だ
そう思いつつ俺は仲間たちがいるギルドへと赴くのだった




