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第三十三話「エディンの過去」


「アダム、そろそろ移動したほうがいいんじゃないか?」

「いや、今はまだ」


 俺たちはギルド内の席でテーブルを囲い談義をしていた


「折角、クレス様が来てくださったわけだし」


 俺の目的はクレスだ

 彼がここにいる以上グランガという街に行く必要性はない

 ということで俺はクレスを持ち上げつつこの街に居座ることにする

 そろそろ街の人々もクレスから離れた頃だろうか?


「お! お前もクレス様のファンか」


 エディンが喜んで俺に話しかける


「あ、はい、俺、クレス様のファンになりました」

「クレス様のどういうところがいい?」

「強いところですかね」

「そうだろうそうだろう」


 エディンはクレスを随分持ち上げているな

 何か恩があると言わんばかりに


「実は……俺、クレス様に恩があるんだ」


 ありゃ、勘が当たっちゃった

 別に当てるつもりはなかったけど


「俺、幼い頃トリスタンっていう町で育ってさ」


 エディンが一人語りを始める


「両親は八百屋で働いていてさ」

「…………」

「幸せな家庭だったよ」

「…………」

「だけどある日、俺の街に魔物が攻め込んできてさ」


 うわあ、いきなり重い話になっちゃったよお

 俺、そんなつもりでクレスを持ち上げたわけじゃないのに

 まあいい、聞くか


「俺は必死になって逃げた、そりゃもう必死に」

「…………」

「街の外へ出て近くのキシリタンって街に向かって逃げたんだ」

「…………」

「それで俺は無事に生き延びることが出来た」

「…………」

「後から知ったことだが両親は魔物に食い殺されて死んだらしい」


 重い……重すぎる

 俺こういう話苦手なんだよなあ

 まあいい、聞くか


「俺が冒険者になろうと決めたのはそれがきっかけかな、まあその話は置いといて」

「…………」

「偶然か必然か俺はキシリタンって街の八百屋のオジサンに拾われたんだ」

「…………」

「そのオジサンにも恩があるがクレス様にもさらに恩がある」


 ほう、そのオジサンよりも恩があるとは

 一体クレスという人物はどんな偉業を成し遂げたのだろう

 気になるな


「俺の町トリスタンはすっかり魔物の巣窟と化してしまったんだ」

「…………」

「その魔物の巣窟を駆逐してくれたのがクレス様さ」


 ほおほおなるほどなるほど

 それは随分な事だ


「彼はその後も俺の街の復興に尽力してくれたよ」

「…………」

「だから俺はその恩をいつかクレス様に返したいと思っている」


 イイハナシダナー


「エディン、お前にそんな過去があったなんてな」


 アダムスが重い声色でエディンに言う

 ミリーユは涙まで流しちゃってるし

 ブラはそんなミリ―ユにハンカチを渡していた

 ってかこいつさっきからミリーユの様子ばかり伺って人の話聞いてないんじゃないか?

 俺? いやちゃんと聞いてるよ

 だからいい話だなあと


「まあその前にオジサンに恩を返さないといけないけどさ」


 ということでエディンの感動的な話は終わった


「アダム、今日は次の街へは」


 アダムスのその言葉を遮るかのようにギルドのドアが開いた

 俺たちの視線がドアに移る

 そこに入ってきた人物は


 クレスだった

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