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第十四話「衝突」


 俺は宿屋へと走っていた

 そしてそこにちょうどブラが出てきたところだった


「朗報だよ! ブラ」

「アダム、俺からも話がある」


 話?

 俺と同じこの世界から戻ることだろうか


 あの時のアナウンスで


 ”元の世界へはある条件を満たすことで戻ることができます、その条件とは地獄界にいるヘルフェスという魔王を倒すことです”

 

 と流れていたのだ

 ブラにもそういうアナウンスが流れていたのだろうか?


「見ろよ! これ」


 ブラはそう言って四枚のカードを俺に見せてきた


「な!?」


 俺は目を疑った

 ブラが見せてきたカードはドラゴン二枚、そしてその補助カードの黒炎弾が二枚

 ドラゴンはレア度3コスト12のレアカードだ

 黒炎弾も同じくレア度3コスト2のレアカードでドラゴン系モンスター専用の補助カードだ


 基本的にこの世界ではガチャを回す回数は

 レア度1モンスターで一回

 レア度2モンスターで二回

 レア度3モンスターで五回

 

 カードバトルオンラインと同じ仕様だった


「ブラ、もしかしてあのドラゴンの五回だけのガシャでこれだけのカードを当てたのか?」

「ああ」

 

 チョトマテチョトマテオニイサーン

 思わず某芸人の真似をしそうになった

 しかし何というレア運

 レア運選手権があればこいつはトップになるであろう

 しかし

 チート選手権トップといい

 ミサワ選手権トップといい

 こいつはどれだけ記録を更新すれば気が済むのだ


「それでアダム、話ってなんだ?」

「え?」

「お前からも何かあるんだろう?」


 そうだった

 元の世界へ帰る話を彼にしようとしていたところだ


「ブラ、元の世界へ帰る方法が分かりそうなんだよ!」

「ふーん」


 あれ? 思ったより反応が薄い


「やったな! これで俺たち元の世界へ帰ることが出来る!!」

「俺は嫌だね」


 え? 今なんて言った……?


「どういうことだ?」

「現実社会みたいな糞な世界よりもこの世界のほうがずっといい」

「ブラ……」


 俺は言葉を失った

 と思いきやある単語が俺の頭の中に思い浮かんできた


「”ニート”だからか?」

「ん? 今なんて言った?」


 ブラがその単語を聞き返すかのように俺に訪ねた 


「ニートだからかって言ったんだよ」

「何だと!!」


 ブラは怒りの表情で俺を見つめる


「いいよなあニートは、親の金にかじりついて呑気に暮らしてりゃいいんだから」

「お前だって同じようなものだろう」

「俺は高校生になったらバイトして家計を支えるつもりだ」

「……」

「それに比べてお前は何だ? いい年して働こうともしない」

「……」

「そんなお前にはこんな薄っぺらい世界がお似合いだろうよ!」

「きぃいいさまああああ!!」

「グハッ!!」


 ブラが俺に強烈なパンチをおみまいしてくれた

 俺のHPゲージが減っている


「やってくれたな、この!!」


 俺もブラにパンチをおみまいする

 しかし、ブラは俺のパンチを避けた


「お前みたいな雑魚のパンチなんか遅すぎて避けるのが簡単すぎるぜ」

「現実社会の底辺にそんなこと言われたくはないな」

「てめえ……殺す!!」


 俺のその言葉に切れたのであろう

 ブラはそう言った瞬間”出でよ”と叫んだ

 これはまずい

 しかし俺も後には引けなかった


「出でよ!!」


 俺たちはそれぞれモンスターを呼び出す

 街中は大騒ぎになった


「やれ! マジックナイトリーダー」

「いけ! 俺のモンスターたち」


 俺とブラのモンスターの攻防が始まった

 敵はマジックナイトリーダーひとり

 対する俺のモンスターはスライムを含む四体

 だが勝負は見えていた

 ブラのマジックナイトリーダーはレベルMAXな上に衝撃波という補助カードもある

 その光景はまるでありんこが像に立ち向かうようなものだった

 俺のモンスターは全て滅んでしまった


「あとはあいつだけだ! やれ!! マジックナイトリーダー」

「おいブラ!! やめろ!!!」


 アダムスが俺たちの喧嘩を見つけて止めに入る


「どけ! アダムス!!」

「やめるんだブラ! 仲間同士で戦うんじゃない」

「どかないというのなら……」


 ブラはアダムスの言葉に耳を傾けなかった


「グハッ」


 マジックナイトリーダーがアダムスに斬りかかる

 彼の体からは血が流れていた


「ブラ、お前なんということを……」

「いけ! マジックナイトr」

「何してるの!!!」


 ミリーユの言葉にブラは我に帰ったような顔をした


「ヒーリング」


 ミリーユがアダムス元に駆け寄り治癒魔法をかける


「……最低」

「ミリーユ違う! これは!!」

「もう二度と私たちの前に現れないでちょうだい!!」

「……」


 ブラはか細い声で”戻れ”と言うとその場を立ち去った


「アダムさん大丈夫?」

「ああ、それよりもアダムスを」

「ええ」


 彼は治癒魔法で傷口は塞がったものの

 意識を失っている様子だった

 俺たちはアダムスを運び、宿屋のベッドに寝かせた


「……」


 俺とエディンとミリーユの三人がテーブルを囲う

 しばらく沈黙が続いた

 初めにミリーユが口を開いた


「アダムさん、何があったんですか?」


 俺は説明した

 ブラと些細なことで喧嘩したことを


「今回の責任は俺にあります」

「……」

「俺が彼を挑発したのが悪いんです」

「……」

「ミリーユさんは彼を嫌っているかもしれませんが」

「……」

「彼は俺の仲間です」

「……」

「彼を放っておくわけにいきません」

「……」

「俺は彼を探そうと思います」

「……」

「このパーティからは……抜け」

「いいや、抜ける必要はない」

「え?」


 エディンが俺の言葉を遮った


「今回君たちは大変な騒ぎを起こしてくれた」

「……」

「だが、君たちが俺たちの仲間だという事には変わりはない」

「エディンさん……」

「ブラを探してこい」

「はい! ありがとうございます!!」


 俺は宿屋を飛び出した


「さて、ブラはどこにいるのだろう?」


 おおかた予想はついた

 今の彼の心情を考えれば街中ではなく路地裏にいたいはずだ

 ということで俺は路地裏を探していた


「ん? あの人影は……?」


 近づいて行く度にそれがブラだということが分かった


「良かった! ブラああああ!!」


 俺は叫びながらブラの方へ走っていった

 しかしあんなところで寝るとは

 風邪ひくぞ


「え……?」


 近づいて行く度にブラの様子が分かり始めていた

 辺り一面が赤く染まっている


「そんな……」


 そこには血まみれのブラの姿があった

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