表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/14

7.朝の出来事

 翌日。ついさっき起きた。カナタは………もういないか。

「いつもながら早いな……」

 朝に弱い俺にとってはうらやましいことこの上ない。毎日六時起きってどうやったら出来んだよ。

 のそのそとベッドから下りて時計を見る。なんだ、八時四十分か。

 …………………ん?

 現在の時刻、八時四十分。

 門が閉まる時刻、八時三十分。

「―――思いっきり遅刻じゃねーかぁぁーーーーー!!!」

 



 悲痛な叫びを上げてから五分後、俺は寮の真横にあるフェンス(ちなみに高さ四メートル半)を乗り越えて学校の敷地に入り、校舎に忍び込んでいた。

 大分慌てていたため、服はパジャマがわりに着ていたTシャツの上にワイシャツをはおり、ズボンを近くにあったジャージに替えただけだ。髪は寝癖でライオンみたいになっているが、まあ放置。どうせまともにセットしたこともないし。

 今の時間は朝のHR中なので廊下には誰もいないので見つかりにくくて良い。だが近くの教室から話し声が聞こえているというのに足音が妙に響く。なんとも不思議な感覚だ。

「そういや最近遅刻してなかったからな……」

 何故遅刻していなかったかというと、兄のクロスが登校前に叩き起こしに来ていたからだ。文字通り叩き起こしに(・・・・・・)。今日は昨日受けた依頼について調べるから、と言っていたとおり早くに寮を出たらしい。あと、いくら寮長だからといって他人の部屋の鍵を開けるなんて職権濫用だと思うが、言ったらどうなるか予想はついているので黙っている。

 うん、キレた兄貴以上に怖いものなんてない!


「楽しそうだな紅宮サタン?」


 ………こともないです、ハイ。

「あー……、おはようございます織姫(おりひめ)先生」

「うむ、おはよう」

 どうやらいつの間にか自分の教室前まで来ていたらしい。教室の入口に、ドアを全開にして仁王立ちしているババア……もとい、女性がいた。

 彼女はクラス担任の国語教師、織姫きらら。可愛らしい(?)名前と外見(!)とは裏腹に男らしくて、時代が時代ならスケバンでもやってただろうほどのかっこよさ。思わず姐さんと呼びたくなる人がいるとかいないとか。

「それは褒めてるのか、それとも貶しているのか?ん?」

「もちろん褒めているに決まっているじゃないですか。けなすなんてとてもとても」

 もはや思考が口から出ていることもスルー。そうでもしないとやってられないし。

「ほう、ならいいが。もし嘘をついていたら………」 いつの間にか織姫先生の右手にはチョークの束(白×五本)が握られ―――――ばきべきびぎぼきばぎっ

「こうだからな」

 手のひらから粉砕されたチョークの粉が落ち、廊下と教室の床を白く染める。

 織姫先生、無言。教室の皆も、無言。

 俺………………とりあえず笑っといた。

「いやだなぁ嘘じゃないですって先生あははははははははは」

「だよなぁ、そんなこと考えるわけないよなははははははははは……………だが遅刻は許さん」

 先生、目笑ってません……

「死ねッ!」

 ばきぃっ!!

 うわぁ良い音。痛そう。いや実際まじ痛い。

「先生、ナイスアッパーで…」

 ばたり。

 ………撃沈。




 結局、三半規管が回復し復活したのは一時間目の古典が終わり、織姫先生が教室を出てからのことだった。

 と言えども平衡感覚は未だ完璧に戻らず、俺はぐるぐる回転する天井を自分の机の椅子にもたれかかり眺めていた。気持ち悪いったらありゃしねぇ……………………………ちょっと吐きそう。

 と、視界に見覚え&話し覚えがある女子が入って来た。

「おはよー。大丈夫………そうには見えないね」

「……当たり前だ。この状態を見てそんなこと言うのは目か頭が腐ってる奴くらいだ」

「いや、ポジティブな人とかなら言うかも」

「どれだけポジティブすぎるんだよ!」

 つーか今の状態でツッコミやらせんなアズミ。見た目よりかなりキツいんだぞ?

 言っておくと、アズミとは同じクラスだ。1年L組、つまり普通課全12クラスの一番最後。ちなみにカナタはA組で特進クラス。

 一年生の一クラスは基本的に四十人で、普通課が12で理数課、商業課、芸術課、特別課はそれぞれ1の計16クラス。だから四十×16=六百八十人が一学年の人数になる。

 改めて考えると多いよなぁ………

「……サタン、ちょっと聞いてるの?」

「ん?あぁ、すまん。聞いてなかっ………なんだその驚いた顔」

「さっ、サタンが謝るなんて……明日はきっと槍が降るわね」

「雨や雪通り越していきなり槍かよ!ってか俺が謝るのがそんなに珍しいか!?」

「珍しい」

「……………」

 断言されると逆に困る。ほんとアズミといいカナタといい、俺の扱いひどすぎないか?

「それはまあ冗談として」

「はぁ………。で何なんだ」

 ため息をついて続きを促す。冗談でも言われる方はたまらないからな。


「昨日受けた依頼なんだけど、今日から調査開始することになったから」

「へぇ、それはまた急だな」

「噂がかなり広まってるみたいだから、沈静させる為にも早めに調べるように、との生徒会長からのお達しよ」

「ふーん、いつ聞いたんだ?」

「今日の朝に教室に来て、本人が直々に伝えてきたわ」

「本人が!?あのめんどくさがりが!?」

「うん。あの超めんどくさがり星人が直接」

 なにげに自分の目上に対してひどいこと言ってるなアズミ。

「………それこそ槍が降るんじゃないか?」

「それは大丈夫」

「なんで?」

「月読先輩のハイキック喰らって生徒会室追い出されたらしいから」

「……………」

「連絡をわたしに伝えた後、そのままサボろうとしたところを月読先輩に見つかって強制連行されてたし」

 ………気に入らない奴ではあるが、そこまでやられてるとなるとちょっと可哀想になってくるな。ご愁傷様、生徒会長。成仏してくれよ。

「ってことで、放課後になったらすぐに生徒会室に集合ね」

「おう」

 アズミが自分の席に戻るのをぼんやりと眺めた後、そのまま机に突っ伏す。

 ……とりあえず昼休みまで寝るか。




 なんか忘れてる気がするんだが………まあいいや。おやすみ。

お久しぶりです。11月中一度も更新していませんでした。

できる限りペースを上げるようにがんばります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ