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3.依頼内容

「恋愛七不思議って、あの?」

「なんだそれ?」

「……………」

 上から順にアズミ、サタン、カナタ。またしても三者三様だが、そもそもカナタは喋っていない。

「え、知ってるんですか?」

 だがその様子に一番驚いたのは依頼人であるショウコのようだった。知っている人物がいるとは思っていなかったのだろう。

 少し得意げにアズミが笑った。

「とーぜん。わたしたちはこの学校のことならなんでもござれ、の“万屋”だよ?これくらいのこと朝飯前っ!……ちょっと言い過ぎたかな。まだ噂程度だし」

 最後のほうがわずかに自信なさげだったが、とても魅力的なその笑みに思わずショウコの口元はほころんだ。

 二人の美少女が笑いあっている光景に、遠巻きに様子を伺っていた生徒たちもみとれたように会話を中断していた。主に男子だったが。

「俺たちのことは無視か?」

「無視じゃないよー。ただ仮にも“万屋”の一員がそんなことでよくやってけるなぁ、って思ってるだけだよ」

 サタンが呟いた抗議に対し、アズミは容赦ない言葉を浴びせかける。笑顔のままなのでかなり怖い。

「あ、いや……俺たちは情報部じゃねぇんだし、知らなくても別に」

俺たち(・・・)じゃないでしょ」

 サタンは咄嗟に弁解しようとするが、その言葉によって遮られた。

「カナタは知ってるよね?」

「……………」

 アズミの問いかけ。わずかな時間が過ぎてからカナタはゆっくりと首肯した。

「確かカナタは執行部だったよねー。でもどこかの誰かと違ってちゃんと知ってたなぁ。なんでだろうね?」

 明らかに嫌味を込めてアズミが言う。

「知ってたとしてもカナタは例外だ!つーかカナタは喋れ!」

「……………」

「はぁ……」

 そうは言ったものの、無言で顔を背ける友人に無理矢理何か言わせるでもなくサタンは溜め息をつきアズミとショウコに向き直った。

「で、結局その『恋愛七不思議』とかいうのは何なんだ?」

「あれ?珍しく素直だねぇ。……まあわたしも細かいことまで知ってる訳じゃないし、ショウコさん説明お願いできる?」

「えっ!」

 唖然と三人のやりとりを見ていたショウコはアズミに声をかけられて我に返ったらしく、大きく目を見開いた。

「依頼するってことは何か知ってるんだよね?教えてもらえないかな?」

「は、はい」

 若干とまどっていたショウコだが、やがてゆっくりと口を開いた。

「えっと、恋愛七不思議というのは名前の通り恋愛に関する七不思議、と言うより七つのおまじないのことなんです」「おまじない?」

「はい。いつからかは分からないんですけど、かなり昔からこの学校には恋愛成就のおまじないの噂があったらしくて、その七つのおまじない全てを行うことができたら100%告白が成功するんだそうです」


「へぇ……」

 本当に初耳だったらしくサタンがわずかに驚きの声を上げる。

「サタン、興味あるの?もしかして好きな人がいるとか」

「いねーよ。……つまり、そのおまじないとやらを七つ探せばいいんだな?」

 アズミの邪推を面倒そうに否定すると、サタンはショウコに尋ねた。

「はい。といってもその七つのうち六つは友達から教えてもらったので最後の一つだけなんですけど。知り合いの女子生徒全員に聞いてみても知らないらしくて……」

「そう、じゃあショウコさんの依頼は『恋愛七不思議の七つ目を見つける』でいいんだね?」

 最後にアズミが確認を取ると、彼女は静かに頷いた。

 何となく違和感を覚えたサタンがふとカナタをうかがうと、じっと(目が隠れているので本当は分からないが)ショウコを見つめているようだった。そんな二人の様子に気づいているのかいないのか、アズミは別の質問を続ける。

「んー、調査始めるにしてもヒントもないんじゃ難しいなぁ。ショウコさん、参考までに恋愛七不思議のうちの六つ目まで教えてくれないかな?」

「いいですよ」

「じゃあお願い」

「はい」

 ショウコは話し始めようとしてからふと気付いた。

「……メモとか取らなくても大丈夫ですか?」

「だいじょーぶ、大丈夫。わたしとカナタがいるしね」

「平気だろ、カナタがいれば」

 アズミとサタンがやけに自信たっぷりに言った。

「………ん?」

 数秒後、自分ともう一人の台詞(セリフ)が一部違うことに気付いたアズミは、さらに数秒思考してからサタンに振り向き微笑んだ。

「サタン〜。わたしは?」

「で、一つ目は何なんだ?」

 先程の仕返しか、そのことについてサタンはスルー。

「ねぇったらー」

「えっと……」

「メモは必要ないから始めていいぞ」

 二人の顔を見比べて戸惑うショウコをサタンは促す。どうやら徹底的に無視するつもりらしい。

 その証拠に、顔は完璧にショウコに向けられているし視線さえ向けようとしない。

 すると突如アズミが立ち上がった。

 嫌な予感がしたのか隣に座っていた少年が腰を浮かすより早く少女は椅子の後ろに回りこみ――――ヘッドロックをかけた。

 驚いて固まったショウコをよそに、サタンの首を絞めながらアズミは笑顔のまま言う。

「わたしを無視するとはいい度胸だねーサタン」

「ぐ、げ、やめろ、アズミ、俺、が悪、かった…!」

 もがく少年に対しさらに力をこめる少女。なかなかシュールな光景が展開されている。

「そんなー、サタンのー、度胸にー、免じてー、ちゃんとー、もう一回ー、謝ればー、許してー、あげましょー」

「………………」

「あれ、サタン?」

「………アズミ。もう落ちてる」

 え、と少年の顔を覗きこむと、カナタの言った通りサタンはすでに気絶していた。白眼をむいていてかなり怖い。

「あっちゃー。また(・・)やっちゃった」

 今とても恐ろしい発言が混ざっていたような気がする。というかさっきの力の込め方)からして気がするでは決してないが、ショウコはそれを忘れることにした。


 さわらぬ神にたたりなし。

 ショウコだけでなく、遠巻きに見ていた生徒たちの考えはこの一瞬おそらく一致していただろう。

「ショウコさん、一つ目は何?」

 ぐったりした少年を椅子にもたれかけさせ終えると、何事もなかったかのようにアズミは尋ねた。その台詞がサタンが言ったものと似ていたのは故意か、はたまた偶然か。

 とりあえず、ショウコは何も聞かないことにしておいた。



更新遅いです。読んでくださっている皆様すみません。


次回からは完全に視点が一人称で進んでいきます。予定ですけれど。


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