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10.“万屋”の仕事

今回は長めです。

 んで、会長から聞き出した場所へ向かった。つーか昨日行った食堂。聞かなくても別に良かったかもな。でも間違えたら恥ずいからなー。

 そんなこと考えてる間に中央本館食堂こと本食に到着した。あ、間違えた。本食こと中央本館食堂だな。

「えー、サタンくんが盛大に独り言を言っていますがどうしましょうかカナタ?」

「…………どうもしない」

「淡泊な反応ありがとー。じゃあ放置で」

 いやそこはちゃんと指摘しろよ!放置プレイか!?っていうか丸聞こえなのわかってて言ってるだろうお前ら!…………はあ、もしかして俺何も考えないほうがいいのか…?

「あれ?サタンくんどうしたの?」

 とても白々しくアズミが問いかけてくる。ーーー我慢しろ俺。こんなことで起こってたら意味ないぞ。いつものことだいつもの。

「いや、なんでもない」

「そう?」

「…あ」

 いきなりカナタが声を上げた。いや、どっちかって言うと声が漏れた、か?俺とアズミの会話よりも小さかったし。まあそんなことどうでもいいとして……

「どうしたカナタ。なんか変なものでも見えたのか?」

「…………見えてない。でも、変じゃないけど……」

「けど?」

「…あれ」

 すっ、と動いたカナタの指先を視線で追うと、食堂の隅に座っている大和名を見つけた。

「あ、ショウコさん」

「大和名がどうかしたのか?カナーー」

 と自分で尋ねてから大和名の様子がおかしいことに気づいた。いや、おかしいと言うよりも困っている、の方が正しいか。そしてその原因は十中八九……周りにいる数人の男子生徒のせいだろう。

「うわ、ナンパ?学校内なのによくやるわ。……この場合はさすが一年生トップクラスの美少女、って言うべき?」

 言わないだろ普通!とまぁ、アズミが言ったように大和名はナンパされてるようだった。一応同じ学校の生徒だし、ナンパって言うのもどうかと思うが。

 にしても大和名囲んでる奴ら、見た目的にめちゃくちゃ軽そうなのばっかりだな。茶髪、金髪、ピアスにジャラジャラしたアクセサリーと、全員似たり寄ったりな格好だし。個性のないことで。

「サタン、行くわよ」

「行くって、……やっぱり?」

「もちろん!さあ、治安の維持も“万屋”の仕事よ。ちゃっちゃとついて来る!」

「へいへい」

「カナタもちゃんと来なさいよ」

「………………」

 こくり、とカナタが頷いたのを見てからアズミは大和名の方へと進んでいった。仕方がないので俺とカナタはその後ろについて行く。

 …………絶対、厄介事になるぞこれ。




「そこのお兄さん方〜。その子困ってるじゃないですかー。離れてあげてくださいよ〜」

 誰!?って毎回思うが、さっきのはアズミだ。のんびりした感じの猫かぶり、いつもながら見事だな。

「なんだよ、邪魔だ……」

「お、この子もかわいいじゃん」

「ねぇ、よかったら君も一緒に遊ばない?」

 かかった。男子生徒たちが大和名からアズミに意識をむ始めている。

 ちなみに俺は少し離れたところからそれを見てる。臆病だとか面倒だから逃げてるとかじゃないぞ、これがいつものパターンだからだ。

「お断りしますー。わたし、用事がありますので」

「そんなこと言わずにさぁ、なあ?」

「そうそう、いいでしょ少しくらい」

「ちょっと、やめてくださいー!」

 茶髪男(さっき命名)がアズミの腕をつかむ。そろそろだな。

 カナタに目配せすると、小さい頷きが返って来た。それを確認し、俺はアズミとナンパ男軍団に近づく。

「ーーーーおい」

「あん?なんだお前?」

「邪魔すんなよ」

「引っ込んでろ、よ……?」

「どうした?俺の顔に何か付いてるか?」

 そう言いながらさらに近づくと、俺を凝視してたピアス男(これも今命名)が俺を指差しながら一歩後ずさった。ったく、人を指差すなって教わらなかったのか?

 他のナンパ野郎たちが驚いたようにピアス男に声をかける。

「おい!どうしたんだよ!」

「あ、あああ、あ、『悪魔の』、『暴君』……!!」

 それは間違いなく俺に向けて発された言葉で。

 辺りが一瞬、静寂に包まれた。

「『悪魔の暴君』……?………紅宮サタン!?」

「…………ってことは、生徒会か!?」

「ご名答」

 へぇ、俺も有名になったもんだ。一発で名前が出てくるとは思わなかったな。

「気付くの遅すぎですよお兄さん方」

 アズミがあっさりと茶髪男の手を払いのけ、俺の隣に移動する。

「今月は迷惑行為取り締まり強化月間です。ちゃんと最初に注意したんですから、やめてくれないと困ります」

「そっ、そんなの生徒会(おまえら)には関係ないだろ!俺たちの自由だ!」

「だいたい俺らが誰かもわかんないんだし、取り締まりようがねーだろ!」

「まあ、普通はそうですよね」

 アズミはあっさり頷く。それを見て拍子抜けしたのか、ナンパ男たちは気持ち悪い笑みを浮かべた。かなり気色悪りぃ。

「だったらさっさと帰れよ。ほら!」

 ナンパ男の一人がアズミを突き飛ばそうと腕を伸ばしーーー

「…………二年F組、和久杉乃(わくすぎの)

 ーー動きを止めた。

「な……!?」

 驚きに固まるナンパ男ーー和久を無視して、カナタはまた口を開いた。

「…………二年F組鳥野岩谷(とりのいわや)、二年H組金山(かなやま)飛羽吾(ひゅうご)……」

「「………!!」」

「……二年J組波邇屋康(はにややす)……」

「っ、て、てめぇ!なんで俺らの名前知ってやがる!?」

 胸ぐらをつかんでこようとした茶髪男・鳥野の手を捻り上げ、そのままの体勢で答えてやる。

「“万屋”だからに決まってるだろ」

 ぱっ、と手を離すとーは鋭い目つきで俺たちを睨んできた。何もしないのは賢明だな。まぁ……もう手遅れだが。

「ちなみに状況証拠はばっちりですから、何をしても無駄ですよー」

 アズミの声を合図にカナタが右手を開き、手のひらに収まっていた小型のデジカメを取り出す。あの中には最初大和名が取り囲まれてるところからアズミが腕を掴まれてる光景、加えてさっき俺に掴み掛かろうとしていた部分の写真が収められているというわけだ。これがある限り、ナンパ男たちは言い逃れできないからな。

「くそっ……!」

 とっさに金髪男・金山がカメラを奪おうとしたが、カナタは素早い動きで俺にカメラを投げた。ぱしり、と小気味良い音とともに俺はそれを受け止め、ポケットにしまい込む。

「で、どうするんだ。俺らは優先してやらなきゃいけない仕事があるから、今なら見逃してやってもいいが?」

 例え相手が年上でも、相手に非があるなら下手に出る必要はない。……つっても俺は誰に対しても大抵この口調だから今さらなんだがな。

「……ちっ、行くぞ」

「あ、ああ」

「…おう」

「………じゃあね、かわい子ちゃん」

 古っ!!

 多分ここにいる全員(傍観者含む)が同じことを思っただろうが、誰も口にはしなかった。もちろん俺も。誰だって余計な波風はたてなくない。つーか和久とかいうやつあからさまに舌打ちしやがったな。ま、それくらいじゃキレたりしねーけど。

 っと、なんか他の三人が波邇屋を引っ張り小声で話してるな。

「お前何言ってんだよ!」

「いや、だってあの子かわいいでしょ」

「確かにそうだが、よく考えてみろ!『悪魔の暴君』と一緒にいる女だぞ!?」

「え、ってことはもしかして………………『魔女』?」

 ぶちん、と何かが切れる音がした気がした。何かが切れる音がした気がした。もちろん空耳なんだが、何かが切れたのは間違いない。なぜなら……アズミが音もなくナンパ男たちに近づいて行ったからだ。

「ちょっと」

「あぁ?なん……」

「誰が『魔女』だって?この×××××が」

「………え?」

 波邇屋に声をかけたアズミは、完璧に切れてるようだった。ーーご愁傷様、としか言いようがないな。知らなかったんだろうが、アズミに『魔女』は禁句だぞ。なんでかはよく知らないが。

「×××××が△△△△△のくせにこの□□□□□野郎」

「○○○○○は▲▲▲▲▲ってこと知らないと思ってんの×××××」

「さっさと取り消しなさい◇◇◇◇◇!」

 ……うわ、もう聞いてるだけでこっちまでツラいものがある。むしろ聞きたくねぇ……………

 やっぱり、余計面倒事になるんだな………




 数分後、大和名と並んで座る俺とカナタのところに戻ってきたアズミは、とても晴れやかな顔をしていた。

「ショウコさん、待たせてごめんなさい」

「え。いえ!助けていただいてありがとうございます」

「どういたしまして」

 ……あの直後に普通に会話を始めるなんて…………恐ぇ。

「あ、情報提供ありがとうカナタ。さっきの奴らもこれで当分懲りたでしょ」

「……………」

 無言で頷くカナタ。……お前も絡んでたのかよ!

 こんな調子で大丈夫か?この依頼……


けっこう早めに更新できました。でも、あまり更新できないのは変わりません。


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