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9.放課後・行動開始?

 

「ぅう………あ」

 目蓋を薄く開けると、白く眩しい光が入り反射的に目を閉じた。首と腹と顎がやけに痛い。むしろ身体全体も痛い。ズキズキズキズキする。一体何があった?

「――いってー……」

「あ、サタン君起きた?」

 すぐそこで声がしたのでもう一度、今度はゆっくり目を開くと、長い黒髪の女性が視界に入った。どうやら、俺はどこかに横になっているところを覗き込まれているらしい。らしいが…………………近い。顔が。

 いやホントマジで近い。なんかまつ毛も数えられそうなくらい近いんですけど。何か動くに動けないしつーか動いたらヤバい距離なんだよ俺にどうしろっていうんだ!?

「……月読先輩近すぎです!!」

 天の助けが来た。

 視界の片隅でアズミが慌てて寄ってくる。なんでそんなに焦ってるんだ?でもよくやった!

「え、ああごめんね」

 そう言って月読先輩が身を引いた。ようやく顔が離れ、俺は半分止まっていた呼吸を再開させる。ヘタレとか言うな一瞬心臓止まるかと思ったんだよ。

「…………先輩。何やってたんですか」

 一息ついてから上半身を起こし、月読先輩に問いかける。後輩の顔を至近距離で覗き込むなんて、ないとは言い切れないとしてもそうあることでもないだろう、普通。

「いや、改めて紅宮とサタン君はそっくりだと思って。ぱっと見あんまり似てないけど、良く見ると目とか髪質とかおんなじ」

 ………そうか?むしろ正反対だと思うんだが。兄貴は口悪いけど頭いいし冷静だし。口悪いけど運動もできるし。口悪いけど。

「そうじゃなくて。………でも性格も似てるよ。頼りになるところや、優しいとことかね」

 う、先輩がすっごく嬉しそうに笑いかけてくるから真っ直ぐ顔が見れない。絶対顔赤くなってるなコレは。うわ、めちゃくちゃ照れるし恥ずかしい!

 ………そういやさっき先輩地味に俺が考えてることに答えてたよな。また声に出してたのか……。そろそろマジで心配になってきた。今なら

「実はあなた以外全員テレパシーを使えるんです」とか言われたら信じる気がする。

 ごまかすように辺りを見回すと、左側の椅子に座りこんできたアズミと目が合った。どうも俺は生徒会室にある応接用のソファに寝ていたらしい。というか………なんでジト目なんだアズミ。俺が何かしたか?

「………デレデレしちゃって気持ち悪い。変態」

「デレデレなんてしてねーよ!…………そりゃ、ちょっとは嬉しい、けど」

 嬉しくない訳がない。月読先輩は一般的に、いや誰が見ても美人だと言う顔立ちをしている。ていうかさっきの状況で何も感じない、平気だって言えたらそれはそれで健全な男子高校生として何かおかしいと思うのは俺だけか?

 だがアズミはそうは思わなかったらしく……

「うわ、やっぱり変態だ。ねぇ、カナタ?」

 あれ、カナタ居るのか?見回した限りいなかったと思ったんだが。ぼんやりしてたからかな。

「?…カナタ?」

 アズミが不思議そうに俺の右後ろのほうを見た。俺も振り向いてそっちを覗く。誰もいな……

「うおわっ!?」

「…………や」

 ソファの背もたれから顔を出したカナタと頭をぶつけそうになる。今にゅっ、って出てきたよな。にゅって。や、とか手上げてんじゃねぇよ。気配しなかったぞ!?

「………サタン、大丈夫?」

「へ、何が?」

「……………頭とか身体とか?」

 いや、疑問系で返されても困るんだが。頭が大丈夫じゃなかったらヤバいだろ……………って、言われて思い出した。驚きすぎて忘れていたが身体じゅうが痛い。地味ーな痛みからなんからが一気に押し寄せて来る。我慢できないほどではないが……なんで痛いんだ?

「っつ……。大丈夫っちゃあ大丈夫だ、一応。んで、俺はどうしてこんな所で寝てたんだ?身体も痛いし」

 確か宿題未提出の罰に教室掃除やらされて、急いで終わらせてから生徒会室(ここ)に駆け込んで………んで気付いたらこの状況だ。訳がわからん。

「……それは」

「さ、サタンは気絶させじゃなくて気絶してたの!ここのドアのとこの段差に引っかかってこ、こけて!そのあと運悪く椅子と机に突っ込んで頭を打ったから!だ、断じて首とか顎とかに攻撃を食らわせいや食らったからじゃないよ!?」

 カナタを遮るようにアズミが俺に迫りながら言った。机に突っ込んだんなら気絶してもおかしくないな。にしても、そんなに慌てて言わなくても良いだろ、しかも後半意味不明。首と顎に攻撃ってどんなことが起きたらそうなるんだよ。

「そ、そうだよね。あはははははは」

 また言ってたか……あ。……………なんで急いでたか思い出した。

「アズミ、遅刻して悪い!」

「い、いいわよそんなこと!気にしないで!」

 そうだよな、あれだけ言われてたんだし許してくれるわけ………え?

「い、いいのか?俺の自業自得で遅れたんだぞ?」


「いいったらいいの!少しはやったこと、カナタから聞いたし。………それにやり過ぎたし」

「それに?」

「何でもない!」

 そうか?ならいいんだが…………正直許してくれるとは思わなかった。怒鳴られる、もしくは殴られると思ってたのに、不思議なこともあるもんだ。

「紅宮さん、夜凪さん。お取り込み中のところ申し訳ないんですが、よろしいですか?」

 ばっ、と振り返ると、いつも通りの会長席で微笑みながらこちらを見ている生徒会長と目が合った。うわ最悪。

「お話しあいはそれくらいにして、大和名さんを迎えに行ってくださいませんか?詳しいお話しをうかがいたいので」

 口調は丁寧だし仕草も優雅だが靴跡が顔にくっきりついているから威厳とか欠片も感じないな。なにがあったんだか。

「はいはいわかりました」

 まあ、言われた通り大和名を迎えに行くか。

 ソファから立ち上がり、何故か顔がひきつっているアズミといつもながら無表情なカナタと共に生徒会室を出て戸を閉める。二人の顔見比べると面白いな。




 あれ?…………って、

「どこにいるんだよ!?」

「あ、場所言うの忘れてました」


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