第七話:暴君の情報を探れ
第七話
敵を知るにはまず己を知らねばならない。
まどろっこしいので己のことを知るについてはスキップして、敵の情報を調べたいと思います、隊長殿。
「えーと、土谷真登ね。ほう、二年生…俺と一緒だ。嘘、同じ教室に居たのか。気付かなかったわ」
きょろきょろと教室内を見渡して土谷真登の机を発見し、近づいてみる。
「あのさ、そこは土谷さんの席だよー」
友達である七色が恐ろしいものを見た表情で近づいてくる。
蛮勇と勇気の区別をしっかりと理解している、全裸で女性専用車両に突っ込むと愚かさを知っているような…そんな、人の顔をしていた。
「魔王だよ?知ってるの?」
「知ってる。この前放り投げられた」
「うわ、冬治君も投げられたんだ」
何で嬉しそうなんだろう。
「おう…それで、こいつの情報が欲しいんだ」
「変な奴に興味があるんだな」
横から包帯を巻いた友人が顔を出してきた。
「どうした、その頭」
「暴君にやられた」
「…本当に暴君なんだな」
「ちょっと下着の色チェックしただけで怒るんだよ。死ぬかと思った…おれもただ情報が欲しかっただけなんだ」
「ちなみに何色だったんだ?」
「…情けないおれを笑ってくれ。重傷を負ったと言うのに、下着の色さえわからなかった」
そうかい、そりゃあ仕方がないね。
「それで、土谷真登は一体どんな人間なんだい」
話が脱線しそうになったので元に戻すと二人とも唸っていた。
「怖い」
「恐ろしい」
「もうちょっと前向きな意見は無いのか。ほら、不良が捨てられていた子犬を助けていたとか」
「ああ、それなら見たことあるかも」
七色がそう言って手を叩いた。
「へぇ、やっぱり動物とかには優しいんだな」
「いや、足蹴にしてたから」
動物にも厳しい奴なのか…徹底しているんだ。
誰に対してもへこへこしている人物もある意味尊敬に値するが、こっちの方が凄いかもしれない。
「犬が嫌いだそうだぜ」
子犬とか、子猫とか関係なく動物をいじめる行為は人としてどうかと思うので良い子のみんなは真似しないでね。
「七色の奴は中学の頃から一緒だったろ?」
「うん、中学の頃は魔王って自称してたよ」
「自称魔王…それは自傷行為だな。痛い奴なんだな…」
そう言った俺の右ほおを何かが撫でた。
撫でたそれは窓から出て行き、俺の頬を液体が伝う。
「…血だ」
赤の体液は血以外の何物でもない。
「鎌居達?馬鹿な…」
「あんたら、あたいの机でなにしてるんだ」
今、あたいって言った!
「あ、何もしてない。そうだよな、七色?」
「してないよー!ほら、冬治君もいこっ」
「そうだな、悪かったよ、魔王さん…ぐほっ」
顔面パンチを頂きました。
「か、か弱いかどうか知らんが、なかなかやるじゃねぇか…ぐふぅ、この程度で俺を倒せると…がはっ」
喋るたんびに殴られ、蹴られ…どれも本当に痛い、容赦のないものだった。
この時俺は、アホな事にこれがこの子なりのスキンシップではないかと思っていたりする。
「今日のところはこの程度で勘弁してやらぁ」
「あたいが許さないよ」
無表情でそう言うと、俺を掴んでそのまま床にたたきつけた。
俺の意識、そこで完全にノックアウト。
第七話です。今更、気づいたことがあります。四人ぐらい同士を集めて一話は全員が納得するはじめ方にしてそれ以降は全て各人が考えて別々に更新していけば面白い何かが生まれるのではないかと…考え過ぎですかね。逆に考えが足りていない可能性もありますがね。さて、水、風、土、闇の話ですが火を入れるべきだったかなぁと…四代属性と言えばやっぱり火を入れるべきだったでしょうか。わかりやすくて、暗めの話がそろいそうな今作を何とかしてもらえそうだったかもしれません。




