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第四十三話:土谷真登

第四十三話

 今度こそ土谷に関する一連の事件が終結したと思った矢先、俺はとんでもないものを目にしてしまった。

『学園の愛と正義と秩序を守ります』

 この言葉の後には生徒会長立候補土谷真登と続けられている。

「一体これはどういうこったい」

「おい冬治」

 誰に言うでもなくそう呟くと背後から声をかけられた。嫌な予感がして振り返るとやっぱりと言いたくなった。

「土谷か」

「そうだ。あたいだ」

 下くちびるを舐めて刺激しないように穏やかな声で聞くことにした。勿論、このポスターについてだ。

「このポスターの意味を教えてほしいんだが」

「そんなこともわからないのか」

 アホを見るような目で俺を見て、すぐににやっと笑った。

「生徒会長に成るんだ。もう、決まったようなもんだ」

「マジか」

 これまで暴君とあだ名されていた人間がどういう心境の変化だ。

 そんな俺の心を呼んだのか人差し指を俺に向ける。

「お前があたいにしつこくしていたのは聞けば愛と正義と秩序の為だったそうだな」

「ん、ああ、そうだなぁ」

 確かにそう言うスローガン(?)でやってきたと思うよ。

「俺のスローガンを掲げたのか」

「何故わからないんだっ」

「え、何でいきなり怒ったんだ?」

 ちんぷんかんぷんの俺に土谷は本当にアホを見る目でどこか恥ずかしげに続ける。

「その、あたいのことを愛して、あたいと一緒に正義の事がしたくて、あたいと学園の秩序を守りたかったんだな。気付かなくって悪かった」

「ええ」

 一体、どういう事なんだ。

 色々とはてなマークが右から左に流れて行った。ふと、視線の隅に怪しい二人組を見つけてそっちに視線を送る。すると、ニヤニヤ笑っている友人、七色を見つけるのだった。

「あの二人組か」

 唆されたのか。

 目の前の少女は唆されやすそうな顔を確かにしている。

「おい、冬治。聞いているのか?」

「すまん。もう一回話してくれ」

 拳が一発飛んできたのでそれを避ける。

「お前が副生徒会長だ」

「はぁ?」

「あたいとお前で生徒会長の頂点に君臨する」

 乱雑な口調なのに表情はおもちゃを見つけた子供同然にきらきら輝いている。

 お前は唆されているんだと言う言葉をつい飲みこんでしまう。

「ちょっと調べてみればこの学園の選挙は立候補すれば大抵通るらしいからな。立候補したもん勝ちだ。これから職員室に行くぞ」

 手を引かれて廊下を走りだす。いいんだろうか、未来の生徒会長さんが廊下を走ったりしても。

「ま、いっか」

「なんだ、何か言ったか」

「何でもないよ」

 とっくに土谷には振り回されているのだ。もしかしたら土谷のことをまだ狙っている奴もいるかもしれないし、一緒に居たほうが何かと都合もいいだろう。


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