第十六話:嘘か真か冗談か
第十六話
闇雲紗枝先生の妹か、姉どっちだかわからん双子の片方に会いました…と。ところで双子ってさ『俺が兄貴だ』『いいや、俺が兄貴だ』なんて喧嘩になったりするのだろうか。
話がずれそうなのでまとめたいと思う。その人は八枝だと名乗っていた。見た目はもう本当に紗枝先生にそっくり、スタイルもバッチリだったさ。
おそらくミステリアスが売りの八枝先生にまたであった。出会った場所は意外にも学園だ。ややこしい事に紗枝だと名乗っていたし、紗枝先生と呼ばれていた。
「…おかしい」
他の生徒は八枝さんのことを紗枝さんだと信じて疑っていなかった。紗枝先生、紗枝先生とさえずる生徒は神を信じる信者に見えて仕方がなかった。
放課後、この学園にやってきた理由を問いただすために屋上へとつれてきた。他の生徒達はいつものことだと冷やかしすらしてこない。
屋上には夕焼けの告白をしている人もおらず、かといって立ち入り禁止になっているわけでもない。思う存分、異議ありし放題である。
「あの、どういう事ですか」
「あーらら、やっぱり八枝だって気付いちゃってた?」
舌をぺろりと出す八枝さんに中指を立ててみた。
「わからいでか。紗枝先生は一応、恋人ですから」
「ふむ、残念。あのさ、面白い話しようか?」
「いや別にいいです」
「つれないなーこうなったら聞くしかないでしょ?」
俺から言わせてもらえば、アリバイとか証拠なんて情報は必要なく犯人に対して『あんたが犯人だ!』とつきつけてさっさと事件を終わらせたいのである。
「いや別にいいです。じゃ、帰ります」
屋上から出ようとすると周りこまれてしまった!
「実はね、私と紗枝で冬治君をはめようって話になったの」
「え」
ちょっとやらしい妄想が脳内を駆け廻る。い、いや、そんなことがあるはずがない。
「ほら、冬治君って純情っぽいじゃん?そこに付け込んで金を強請ろうって魂胆」
その言葉を聞いて、俺は信じられなかった。これから校舎裏に告白をしようといったら知らない男子生徒が狙っていた女子生徒といちゃいちゃしてたみたいな感じか。
正直に言って、紗枝先生との付き合いはからかわれつつ仲良くやって来れていたと思っていた。
事実を知れば裏切られたと言う気持ちが強くなるとは思ってもみなかったのだ。
それでも、否定はしてみたい。
「で、でも…俺は学生ですから騙してもお金なんて殆ど持ってませんよ?」
「あなたの新しいお父さんが沢山持っているじゃない」
「それはまぁ…でも、どうやってふんだくるつもりだったんですか」
答えてくれるのか?疑問が残るものの、俺は八枝さんに聞いてみる。
「子供が出来たとかそんな感じで…結婚できない方向に持っていくつもりだった」
「結構、エグイ事やるんですね」
「お金のためだから」
「…」
返答に困る。
学園生に対してそんな事を言うのもどうかと思うし、この人は…手の内を見せて一体何がしたいんだ。
いきなりこんな事を言われて戸惑いを感じ、紗枝先生に対して怒りを覚え、紗枝先生と八枝先生に疑惑の眼差しでしか見る事が出来なくなってしまう。
相手が男だったら今頃顔面パンチを喰らわせている事間違いない。くっそーっ
「この人はなんでこんな事を言うんだろう…そう思ったでしょ?」
「いえ、その面に一発パンチを繰り出してやろうかと思っただけです。共犯者ですから」
「違う違う、私は首謀者よ。紗枝に持ちかけたの…そして今、こうしてターゲットに計画を全てお知らせした。さて、困るのは誰でしょう」
単純に考えるのなら…。
「紗枝先生ですか」
「せーかいっ」
「俺が言ってしまえば困らなくなりますよ」
「直接的に騙したのは紗枝だから」
我関せずなんて言える立場ではないだろう。
首謀者はいつだって足切りして逃げるもんだ。
「この事を君が紗枝に告げるのか見ものかな」
「…」
そういって八枝さんは屋上を後にした。




