第十話:相性MAXの二人
第十話
家族になった相手とどのくらいで仲良くなれるのだろう?
俺の場合は三週間でそれなりに仲良くなれた。
「兄さんおはよう」
「おはよう」
二の腕辺りまで伸ばした茶髪を揺らして眠たそうに眼をこする…まるで子供みたいだなぁ…これだけだったら可愛いもんだけどさ。
年頃の娘さんと同居することになってちょっとばかり不安もあった…何せヤンキーだし、ラッキースケベ的な何かがあったなら『んだとゴラァ』と物騒な擬音と共に家の外に放り出される事間違いなし。
「うっわ、こいつぜってぇヅラだヅラ。兄さん見てくれよ」
「ん?ああ、このニュースキャスターか…だろうなぁ」
おそらく、今の二人の関係はイソギンチャクとクマノミ辺りだろう。
ん?共生関係ってお互いに利益があるんだったか?
「今の俺って…お世話係か?」
「兄さんどうかした?」
「あ、いや…何でもない」
いやいや、さすがにそれは無いでしょう。
義務教育が終わった女の子だ…世話をしているわけないじゃないか。
自分が普段やっている家事を思い出せばいい。
「葉奈ちゃんハンカチ持った?」
「持った」
「ティッシュはいいね?」
「うん」
「櫛で髪の毛解いてない」
「後でするー」
「俺がしようか?」
「うんっ」
「よし、じゃあ行こうか。いってきまーす」
「ってきまーす」
朝はこんな感じだ。
あとやる事と言えば朝食を準備し、お弁当を二人分準備して、皿を洗う。洗濯機を回して干す、と。
お昼は学園に居るから特に問題は無いな。休日だって買い物して料理するだけだし。
夕方帰ってきたら買い物に行って、洗濯物を取り込んで、お風呂を掃除して夕飯を作って…。
以上の理由、つまりは家事が原因で俺は帰宅部だ。
「何気に家庭的な男子だともてるよって友人が言ってたけどもてねぇな」
家事が得意と言うわけでもないから困ったものだ。
料理も失敗するときあるし、洗濯物初日でブラを掴んで動揺してしまった。
話を戻そうと思う。
「うーん、やっぱりこれじゃお世話係だよな。葉奈ちゃんをどうにかしないと」
最近では葉奈ちゃんの笑顔をみるために料理をしているもんだ。
お昼のお弁当をつっつきながら言葉を出したために目ざとい友達二人ににやけられてしまった。
「ききましたかぁ、奥様!」
「んまっ、葉奈ちゃんですって!」
「義妹が出来て憂鬱だと仰られていたあの冬治君が変われば変わるもんざんす」
「そう言っていられるのも数カ月でしょうねぇ」
立ち上がってアリクイの威嚇するポーズを取ったら他のクラスメートに写メ撮られて恥ずかしかった。
「赤くなるならしないほうがいいんじゃないの?」
「男って言うのはわかって居ながら敢えてしなくちゃいけない事があるんだ。それで、妹の扱いが難しくてよ」
友達二人はそれから色々と考えてくれたようだった。
放課後、やっぱり話あったほうがいいと言われたので第二回家事委員会をしようと思う。




